第184話 触手プレイ
「キィ キィ♪」
触手が甲高い声を上げながら、無防備なシノの体をめちゃめちゃに這い回る。
粘液をまとったその動きは、まるで喜びを表現しているかのようだった。
「や……やめっ……うあぁぁッ!」
肌と触手が擦れ合うたび、粘性のある音が響く。
悍ましい感触が全身を這い、シノの神経を逆撫でする。
圧倒的な不快感。
触手の方は逆にシノの感触を気に入ったらしく、甲高いキィキィ声を上げながら、愛くるしそうにシノの華奢な体をゆっくり絞り上げていく。
抵抗したい。
なのに、体は動かない。
無防備な体を、低俗な魔物に好き放題される屈辱。
シノは、頭がどうにかなりそうだった。
「おいおい、すっかり気に入られてんじゃねぇか♪」
ゴリが触手とシノの絡み合いを眺めながら、下卑た笑みを浮かべる。
その視線が、胸や太ももに集まり、シノの怒りと羞恥をさらに煽る。
(くそっ……なんとかしないと……!)
シノの視線が、近くの木に向かう。
(あそこまで行ければ……幹を支えに立ち上がれる……!)
バフを受けた触手。
デバフを受けた自分。
このまま地面に押さえつけられていては、何もできない。
せめて立ち上がることができれば、少しは抵抗できる——!
シノは全身の力を振り絞り、なんとか仰向けになる。
そのまま、地面を這いながら、木へと向かって少しずつ進む。
「おっ、まだ抵抗すんのか?芋虫みてぇだな、ははは♪」
ゴリの嘲笑が背後から降りかかる。
だが、シノは耳を塞ぐように心を閉ざし、ただ前だけを見つめた。
(絶対に……負けない……)
その間も、触手が全身を這い回る。
両手両足に触手が巻き付き、思うように動かせない。
それでも、シノは少しずつ、少しずつ前へと進んだ。
(もう少し……立ち上がりさえすれば、こんな魔物、踏み潰してやる……!)
その進行方向にある木に、ゴリが気づく。
シノの意図を察し、口元に意地の悪い笑みを浮かべた。
「おいマリー。結界呪文だ」
「《閉鎖結界》」
空間に正方形の障壁が現れ、シノはその中に閉じ込められた。
「えっ……!?ちょ、ちょっと……!」
シノは障壁に手を当て、絶望の色を浮かべる。
「せっかく友達が仲良くしてんだろ?二人で水入らずで楽しめるようにしてやったぞ♪ちょっと窮屈だがな♪」
「だ、出して……!お願い、ここから……!」
シノは壁を手で叩く。
だが、結界は微動だにしない。
「出たければ出ていいぞ?その結界はあまり強くない。レベル60くらいの力があれば簡単に壊せるぞ♪S級冒険者目指してるなら楽勝だろ??」
シノのレベルは52。
しかも、デバフの影響で力は大きく削がれている。
全力で壁を殴っても、何の反応もない。
「だはははは!この程度の結界も壊せないで、よくもノコノコ出場したもんだ!表彰もんの恥知らずだぜ、てめぇはよ!(笑)」
シノは自分の非力を心底呪った。
悔しさが胸を焼き、目の奥が熱くなる。
「キィ キィ♪」
魔物は、狭い密閉空間に喜びを感じているようだった。
動きがさらに活発になり、シノの体を執拗に這い回る。
「やめて……!」
シノは障壁にもたれ掛かり、ただ耐えることしかできなかった。
ゴリは鼻の下を伸ばしながら、シノの苦悶の表情を眺めていた。
「へへへ……どうだ、もうきついか?『ゴリ様には一生敵いません!』って謝るなら、助けてやってもいいぜ?」
「だ……誰がそんなっ……!」
シノは顔を歪めながらも、瞳には抵抗の意志が宿っていた。
「強情な奴だなぁ?しょうがない。マリー、あれを」
「《防御減少》」
シノの体が光に包まれる。
(くっ……また、デバフを……!?)
ゴリがニタニタ笑う。
「防御力が下がるデバフだ♪かかったことはあるか?防御力が下がるってことはな……体が刺激に敏感になっちまうんだよ♡」
直後、シノの体にデバフの効果が表れる。
デバフの影響により、シノの感覚は極端に研ぎ澄まされていた。
ほんのわずかな接触すら、鋭い痛みや不快感として全身を駆け巡る。
今のシノにとって、触れられること自体が耐えがたい苦痛だった。
——なのに、魔物は容赦なく動き続ける。
粘液に包まれた触手が、衣服の隙間を縫うように這い回り、シノの神経を逆撫でする。
「やっ……やめてっ!ああっ……!」
シノの体は反射的に震え、声が漏れる。
過敏になった感覚が、シノの意志を試すかのように、次々と刺激を送り込んでくる。
魔物は、シノの反応に執着しているようだった。
甲高い声を上げながら、動きを止めることなく、シノをじわじわと追い詰めていく。
「へへへ……こんなこともできるぞ?」
「《雷属性付与》」
——パチパチッ。
魔物の体表に微かな電気が走る。
触手が帯びた雷の力は、シノの敏感になった体に容赦なく作用した。
「っ……うあっ!」
シノの体が反射的に跳ね上がる。
触手が肌に触れるたび、微弱な電流が走り、神経を刺激する。
その感覚は、粘液の冷たさとは異なる、鋭く刺すような不快さだった。
「そそる反応だな……さぁて、いつまで強がっていられるかな?」
ゴリの嘲笑が、密閉された空間に響く。
シノは歯を食いしばり、声を漏らすまいと必死に耐える。
(負けない……絶対に……)
魔物は、シノの反応に執着しているようだった。
甲高い声を上げながら、動きを止めることなく、シノをじわじわと追い詰めていく。
狭い空間に響くのは、電気の弾ける音と、シノの荒い息遣い。
それでもシノは、心だけは折れないように踏みとどまっていた。




