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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第183話 最悪の邂逅

 触手に絡め取られ、身動きすら許されないシノに、オークロードの巨腕が迫る。


(もうダメだ……!)


 その瞬間——


 ゴウッ!


 轟音とともに、オークロードの全身が炎に包まれた。


「ブギィィィィィ!!」


 咆哮と悲鳴が混じった声が、シノの耳をつんざく。目の前で、オークロードはのたうち回りながら燃え上がり、やがて炭屑となって崩れ落ちた。


(魔法……!?)


 呆然とするシノの耳に、茂みの向こうから足音と声が届く。


「危ないところだったな」


 助けてくれたのは、冒険者——そのはずだった。

 シノは安堵の息を漏らし、震える声で礼を述べようとする。


「あっ、あの……助けていただき、ありがとうござ——」


 言葉が喉に詰まった。

 茂みから姿を現したその男を見た瞬間、シノの全身が凍りつく。

 銀色の鎧に身を包み、冷たい笑みを浮かべる男——『白銀の獅子』ゼルが現れた。


「おや?お楽しみの最中だったかな?」


 その口元に浮かぶ意地の悪い笑みが、シノの胸に再び恐怖を呼び起こす。


「ぶははっ!何やってんだお前、触手プレイか!?いい趣味してんじゃねぇか♪」


 横にいるゴリが下卑た笑みを浮かべる。

 その背後には、リゼとマリーが沈黙のまま俯いて立っていた。目を合わせようとしない。


「あなたたち……どうして、こんなところに……」


 シノの声は震えていた。

 ゼルが肩をすくめて答える。


「ちょうどオークロードに追われるお前を見かけてな。助けてやろうと思ってさ」


 嘘だ。

 その目に浮かぶ嘲笑が、言葉の裏を物語っている。


「なんだその目は?それが助けてもらった奴の態度か?」

「俺たちがいなければ、オークに犯されていたんだぞ?……それとも、もしかしてお前、オークと交わりたかったのか!?」

「ははは、それはとんだ邪魔をしてしまったなwww」

「ならよ、触手の方はそのままにしてやるよ。嫌なら自分でどうにかできるだろ?」


 触手はなおもシノの体に絡みついていた。

 球体状の本体が足首に巻き付き、そこから粘液を滴らせながら全身を這っている。


「くっ……離れろっ!」


 シノは胸元に張り付いた触手を掴み、必死に引き剥がそうとする。

 だが、ぬめりが邪魔をして、思うように力が入らない。


「おいおい、そんな低俗な魔物に手こずってんのかよ?」


 視界の端でゴリの顔が歪んだ笑みを浮かべる。

 その表情が、シノの怒りと屈辱をさらに煽った。


「おいマリー?この触手はどのくらいの強さだ?」

「討伐推奨レベル40ってところかしら。Bランクでは最底辺の魔物ね」


 ゴリがぷっと噴き出した。


「ぶはは!こりゃいよいよプレイを楽しんでる線が濃厚だな!……だってよ?まさか最底辺の魔物に手こずるようなザコが、この予選に参加してるわけねぇもんな??だはははは!」

「う……うるさいっ!こんなの、すぐにっ……」


 シノは触手を一つずつ確実に引き剥がしていく。

 ぬめりが酷く掴みにくいが、力はシノの方が上だ。

 時間をかければなんとかなる。


『白銀の獅子』はシノに攻撃することはなく、ただニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。

 攻撃されたら終わりなのに。油断しているのか、それとも余裕なのか。

 ともかく、シノにとってはありがたい状況だ。


(このままなんとか触手を引き剥がして……全力で逃げる!)


 絡みつく触手を払いのけながら、シノは上半身の拘束を解除していく。

 粘液が肌に触れるたび、屈辱が胸を焼いた。

 それでも、ついに胸元から肩までの触手をすべて引き剥がすことに成功する。


(よし、あとは足だけ……立ち上がって踏み潰せば、こんな魔物——!)


「マリー、応援してやれ」

「《力減少(パワーダウン)》」


 突如、シノの体から力が抜け落ちる。

 膝が崩れ、地面に手をついた。


(こ……これは、デバフ!?)


「おー悪い悪い、間違えてデバフをかけちまったみたいだ♡」


 ゴリがわざとらしく頭をかく。


「なっ……何して……!」


 順調に引き剥がしていたシノの手が止まる。

 力が入らない。触手を引き剥がすどころか、再び絡みつかれないようにするのが精一杯だった。

 それでも、シノは粘液にまみれた触手を握りしめ、必死に抗う。


「さぁ、今度こそ応援だ♪」

「《力上昇(パワーアップ)》」


 ——グンッ!


(……!?)


 触手が、まるで獣のように暴れ出す。

 締め付ける力が一気に増し、シノの太ももから指先まで痺れるような圧力が走る。


「わりぃわりぃ、間違えて触手にバフかけちまったわ♡」

「ふっ、ふざけっ……!」


 ビュルル!


 触手はシノの手を振り解き、両腕に巻き付く。

 あまりの力強さに、シノは抵抗できず、両腕をそのまま地面に押さえつけられる。


「おいおい、あとちょっとだったのに。底辺だからって甘えてんじゃねぇぞ?底辺根性が骨の髄まで沁みついてんじゃねぇのか??もう少し頑張れよ??」


 ゴリがいやらしい笑みを浮かべながらシノを煽る。


 ビュル ビュル ビュル——


 無防備になったシノの上半身に、触手が這い回り、粘液を残しながら締め上げていく。

 生暖かく、ぬめりのある感触が肌を這い、呼吸すら苦しくなる。


「……くぅっ……!」

「おいおい、抑え込まれちまったじゃねぇか?お前、よくそんなんでS級冒険者とか言えたな?」


 シノは屈辱に顔を歪める。

 怒りと悔しさが胸を焼く。

 だが、力が入らない。

 魔法によるデバフが、筋力を奪い、抵抗すら許さない。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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