表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/204

第179話 最強パーティからの勧誘

 ムビは目を丸くした。


「……え?」

「いや、なんていうかさ。私、冒険者活動なんてしたことないんだけど。今回初めてミラと組んでみて、こういうのも悪くないなぁって思って……」


 ナズナの耳が垂れる。


「私ね、獣人だから、里の外には友達とかほとんどいないんだよ。好き勝手言えるのも、本当にここにいるバカ共ぐらいで」

「おい、聞こえてんぞ」


 シンラが即座に突っ込む。


「ま、別に一人で生きていくのに不満があるわけじゃないんだけど。こうやってパーティを組んで冒険していくのも、悪くないなぁって思ったわけ。皆はさ、ぶっちゃけどう思う?」


 シンラが腕を組みながら答える。


「そうさなぁ。正直私は、徒党を組む奴なんてザコだと思ってる口だ。鬼ってのは、そういう生き物だからな」

「いや、お前鬼人の中でも浮いてんだろ?」

「うるせぇな。私は同族だろうがなんだろうが、弱ぇのは嫌いなんだよ」


 シンラが頭をかく。


「でもまぁ、お前らは強ぇし……。正直、一人で飲むよりも、酒が美味え。飲むついでに冒険するってんなら、まぁ付き合ってやってもいいよ」

「おうおう、なんだお前ツンデレか?」

「るせぇ!ぶち殺すぞ!」


 シンラとナズナが小競り合いを始める。

 ミラが笑いながら言った。


「いいのう♪ワシもずっとソロ活動してきたが、別に相手がいなかっただけだしのう♪お前らとなら、ワシは全然パーティを組みたいぞ♪シェリーはどうじゃ?」


 シェリーは無表情のまま、少し考えてから答える。


「私はそうだねぇ……。魔法の研究ができるなら、どっちでもいいかなぁ」

「パーティには、後衛が必要だよ?シェリーにはいてもらわなきゃ困るっての!」


 ナズナがシェリーと肩を組む。


「うーん……。まぁ、そんなに言うなら別にいいけど……」


 無表情のシェリーだったが、長い耳がほんのり赤く染まっていた。


「よし、決まりだね♪前衛は私とシンラ、後衛はミラとシェリー!考えただけでワクワクするね♪」


 ナズナは楽しそうに笑って、ムビに視線を向ける。


「さぁて♪あとはムビ君だけだ……」

「おう、ムビ!こうなりゃもう入っちまえ!ほら、酒だ、飲め飲め!ちなみに飲んだら、仲間入り確定な?」


 シンラが笑ってムビに酒を注ごうとする。

 ムビは慌てて手を振った。


「あっ、あの!すごく嬉しいんですけど、俺やっぱり『四星の絆』を抜けるわけにはいかなくて……!」


 シンラがキョトンとした顔をする。


「何言ってんだ?そんなもん、両方入ればいいだろうが?ダメなのか?」


 ムビがあんぐりと口を開けた。

 シェリーが頭をかく。


「あー、シンラ?一応、冒険者は二重加盟は禁じられてるわけではないんだけど、結構ご法度みたいだよ?パーティ間の抗争に繋がりやすいみたいで……」

「なぁに言ってんだ!そんなこと気にする奴なんて、うちにゃいねぇだろ!?」

「うちにはいなくても、『四星の絆』が気にするかもしれないでしょ!?」


 シェリーがピシャリと言う。


「ならよ、ムビ。お前、仲間を説得してこい」


 シンラがずいっと、ムビに顔を近付けた。


「というかムビよ。結構マジで、うちのパーティに入った方がいいと思うぞ?お前、借金を返すためにこの大会に出てるんだろ?冷静に考えてみろ。本選は、パーティ同士のタイマンだぞ?『四星の絆』が、私たちに勝てると思うか?」


 シンラの問いに対して、ムビは1秒も迷わず結論が出た。

 絶対に無理だ。

 この化物メンバーには、逆立ちしたって勝てっこない。


「どう考えたって無理だろ?というか普通に、この大会は私たちが優勝する。ぶっちぎりでだ。お前が『四星の絆』に所属したまま借金を返せる確率は、0%だぞ?」


 嫌味でもなんでもなく、シンラはただ淡々と事実を告げる。

 そして、声を潜める。


「……だからよ。うちらが優勝して王女の専属パーティになったら、お前、うちに入れ。二重加盟でいいからよ。そして、お前の借金の利息も0%にしてもらえ」


 シンラの提案にムビは目を見開いた。


「えぇっ……!?」

「別に構わないだろ?王女は『四星の絆』じゃなくて、お前が欲しいんだ。ヤサが変わったって問題ねぇだろ?」


 言われてみれば、確かに……。

 リリスならそれでも構わない気がする。


「それに、私が言うのもなんだがよ。借金3000億は、さすがになりふり構ってる場合じゃないと思うぜ?お前も、お前の仲間たちも、『四星の絆』には思い入れがあるんだろうがよ。本当に仲間のためを思うなら、二重加盟くらい目を瞑って、借金返済に協力してやるべきだぜ?」


 ……うーむ。確かに『四星の絆』の皆なら、許してくれそうな気がする……。


「それによ、ムビ。一旦、所属とか立場とか、そういうメンドクサイのは取っ払ってよ。周りを見てみろ」


 ムビは、ミラ、シンラ、ナズナ、シェリーを見回した。


「この最強メンバーに適した『動画編集者』が、お前以外にいると思うか?いねぇだろ」


 シンラの言葉に、ムビは胸が熱くなる。


「そうそう♪ムビ君ってさ、戦闘もできるし、頭も回るし、料理も褒めてくれるし。うちのパーティに向いてると思うんだよね」

「おうおう、ナズナが褒めるなんて珍しいじゃねぇか。こりゃ本気だな?」


 シンラがニヤニヤしながら茶化す。


「ちょっと! いつも褒めてるでしょ!? まぁ、ムビ君は素直だし、礼儀もあるし、うちのバカどもと違ってまともだからね」

「おいおい、バカどもって誰のことだよ!」


 シンラが肉を頬張りながら抗議する。

 ナズナはムビと肩を組む。


「まぁ、別に『四星の絆』を抜けろ、なんて言わないからさ♪時々一緒に来てくれるだけでもいいから、考えてみてよ♪」


 正直、全然悪い話ではない。

 むしろ魅力的でさえある。

 ムビは少し考えて答えた。


「……分かりました。仲間と相談してみます」


 シンラはニヤリと笑う。


「よっしゃ! 決まりだな! じゃあ、正式なパーティ名どうするよ? 『ミラと愉快な仲間たち』はダサイだろ?」

「えー!? ワシの名前が入ってるのに!?」

「じゃあ『ムビと愉快な化物たち』でいいんじゃね?」

「それ、ワシらが化物ってことになるじゃろが!」

「事実だろ? ぎゃっはっはっは!」


 森に、笑い声が響いた。

 朝の光が、5人の姿を柔らかく包み込む。


 ——そのとき。


「いたっ……!」


 ムビの肩がチクリと痛む。


「どうしたんじゃ、ムビ?」

「ああ、いや……。魔物に最後攻撃されたところが、少し痛くて……」


 その瞬間、ナズナが目を見開いた。


「……あれ?ムビ君、肩に変な紋章浮かんでない!?」

「え……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ