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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第178話 選抜大会、3日目

 朝9時。静寂を破るように、選抜大会3日目の幕が上がった。


 前日、冒険者たちが夜間に一斉に死亡・脱落した事件は、全国のトップニュースとなっていた。


 2日目の夜は一体何が起こるのか?冒険者たちは生き延びるのか?


 様々な憶測が飛び交い、放送開始と同時に多くの国民がTVに釘付けとなった。


「さぁ、始まりました!選抜大会3日目!一昨日の夜、多くの冒険者が脱落したことで、今朝は特に注目が集まっております。さて、今朝9時時点の冒険者数は……237人!夜間の間に脱落した冒険者の数は、20人でした!セキさん!世間では3日目は開催されないのでは、という見方が大半でしたが、思ったよりも脱落者は少なかったですね?」

「そうですね。脱落した冒険者からの聞き取りによると、昨夜のようなモンスター災害は起きなかったようです。一昨日の夜だけが、異常だったのかもしれませんね」

「とはいえ、我々としてもぜひ3日目を見たかったので一安心です!セキさんは、この3日目、どのような一日になると思いますか?」

「冒険者の数もかなり減りましたからね。そろそろ終わりが見えてきました。今日は冒険者同士の激しい戦いが見られそうですよ」

「2日で3千人の冒険者が脱落するという激動の展開ですが、優勝候補のパーティは依然として残っています!」

「真の強者は、どんな状況にも適応しますからね。予選ぐらい軽く突破しないと、話になりませんよ」

「果たして、今日はどうなるのか?今日の中継も目が離せません!」




 ◆ ◆ ◆




 王と運営委員たちは報告に驚いた。


「夜間の脱落者数、20人だと!?」

「はい。脱落者の話では、昨夜モンスター災害などは起きなかったそうです。4人ほど、変死体がありましたが……」


 報告を聞いて、王は運営委員長のベックに向けて笑みを浮かべた。


「……ふふふ、やはりリリスの杞憂だったようじゃな。ええ?」

「そのようですな。一昨日の夜のモンスター災害は何かの間違いだったのでしょう」

「余もそのように思う。我らに特に落ち度はなかった……その認識で構わんな?」

「はい。責任問題などに発展する事案は何もない、ということです」


 ベックは、さも当然という調子で王に返答する。

 そのとき、スタッフの一人がベックに話しかけた。


「あのう……ベック様。昨夜、『ミラと愉快な仲間たち』に張り付いていたカメラが壊れてしまいましたが……」

「ああ、確かに。ミラが映らないのはクレームになるからな。別の浮遊カメラを一台、ミラに張り付かせておけ」

「はっ、かしこまりました」


 スタッフは下がった。


「さぁて、不安も解消されたことだし、ワシのお気に入りの『白銀の獅子』を気楽に応援するかの!ワハハハ!」


 王は高笑いをし、城に戻っていった。




 ◆ ◆ ◆




 リリスは自室にて、放送を見ていた。


(どうやらムビ様たちは、上手くやったようですね)


 手には鞭が握られ、傍らには血まみれのモリ—がいる。


「も……もう……、勘弁してください……」


 モリ—は涙を流し、掠れた声で懇願した。

 リリスはゆっくりと振り向き、モリ—に歩み寄る。


「他に、隠していることはありませんか?」

「はい……私の知ることは、全部話しました……」


 嘘をついている。

 リリスは昨夜、《ヴェルノクの薔薇》に血を吸わせ、モリ—の持つ情報を全て把握していた。

 もう既に、拷問を続ける意味はないのだが……。


「嘘。まだ、隠していることがありますね?」

「う……嘘じゃない!!本当なんだッ!!これ以上は何も知らないッ!!」


 リリスの口元が、にぃ、と笑った。


「そうですか。では、話したくなったらどうぞ」


 ——仕事は終わった。これ以降は、ただの趣味。


「——ぎゃああああああああああああッ!!!」


 モリ—の絶叫が、部屋の外にまで響いた。




 ◆ ◆ ◆




 エルバニアの森に温かい朝日が差し込む中、森の中心部では、『ミラと愉快な仲間たち』の笑い声が響いていた。


「——そしたらまた、転移の罠!せっかく道を覚えたのに、また振り出しになったんじゃ!」

「ぎゃはは!おめー、どんだけ罠に引っかかるんだよwww」


 ムビたちは酒盛りをしながら、昨夜の出来事について語り合っていた。

 苦戦や失敗談も、こうして終わってみれば楽しい笑い話だ。


「ほーら、また肉焼けたよー♪」


 肉奉行のナズナが、魔物の希少部位を上手に焼き上げる。


「おーーっ!お代わりじゃーーーっ!!」

「ちょっと!ミラとシンラ、食い過ぎ!ムビ君があんまり食べてないでしょう!?」


 ナズナはムビに肉を取り分けた。


「ありがとうございます。——美味しい……。さすが、ナズナさんの育てた肉ですね」

「でしょー??トドメを刺したMVPなんだから、もっと遠慮せず食べなー♪」


 その言葉に、ミラが憤慨する。


「なにをー!!?MVPはワシじゃろう!?」

「お前は初っぱなの減点がデカすぎんだよ!!ぎゃーっはっはっはっは!!」


 シンラが大はしゃぎで笑った。


「ところでよ、ムビ?おめぇ、これからどうすんだ?」

「ふぇっ?これかりゃ……でしゅか?」


 ムビは肉にかぶり付きながら返答した。

 少し考えながら、肉を飲み込む。


「仲間を探します。皆、レベルがあまり高くないので、なんとか上手く逃げたり隠れたりしてると思うんです。早く探さないと、手練れに遭遇したら終わりですから——」


 ナズナがちょうど焼けた骨付き肉を持って、ムビの横に座る。


「そうなんだね。良かったら、私たちも一緒に探そうか?」


 ムビはナズナの提案に驚いた。


「えっ……いいんですか!?」


 その提案に、シンラも同調する。


「おう、いいんじゃねぇか?全員ここに呼んで、皆で飲もうぜ♪ぎゃっはっはwww」

「あんた、大人数で飲みたいだけでしょ!?」


 ナズナが突っ込みを入れる。


「まぁ、それもあるが。もうムビは私たちの仲間だしな。仲間の仲間は仲間ってことよ♪」


 ムビは、屈託のない笑みを浮かべるシンラに目尻を下げる。


「ははは……そう言っていただけると、とても嬉しいです」


 始めは、成り行きの関係。

 しかし今は、共に死線を潜り抜け、こうして勝利の美酒を分かちあう仲になった。

 ムビも正直、このバカ騒ぎする化物たちに、仲間意識が芽生えていた。


 ナズナは肘でムビを小突く。


「なんならさー、大会が終わったら、この5人でほんとにパーティを組まない?」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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