表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/203

第172話 駆けつける者

 八層にて。


 亜人の三人は、"欠番の幹部"に対して全く有効打を与えることができず、ジリジリと追い詰められていた。


「ハァ……ハァ……くそっ!全然勝てる気がしねぇ!」


 呪いの羽は今のところシェリーの極大呪文で無力化できているが、シェリーの魔力も残りわずか。

 シンラとナズナの攻撃も今のところダメージがない。


 "欠番の幹部"は終始、笑顔を浮かべている。


「くそっ……あの野郎、随分余裕そうだな……」

「まぁ、まだ羽を羽ばたかせてるだけだもんね……」

「こうなったら、もう一回鬼に変化して……」

「ダメだよシンラ!あれ、体への負担が半端ないでしょ!?それに、一日二回も変化したら、戻れなくなっちゃうよ!?」


 ナズナがシンラを止める。


「でもよ、このままじゃジリ貧だぜ……」


 その瞬間、"欠番の幹部"が羽を羽ばたかせた。

 宙に舞う羽の量が、数倍に膨れ上がる。


「冗談やめてよ!」


 シェリーが必死に呪文を詠唱する。


「《星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)》!」


 しかし羽の量が多すぎて、全ての羽が氷漬けにならない。

 シェリーは魔法を維持するが、羽ばたきは止まず、どんどん羽が増えていく。


「……かはっ……!?」


 シェリーが苦しそうに咳き込む。


「おい、シェリー!——まずい……、魔力欠乏か!?」


 シェリーの魔法の威力がどんどん弱まり、大量の羽に押され始める。


「やばいっ!死ぬっ……!」


 そのとき、背後から駆ける音が響いた。


「《エンパワーメント》!」


 ムビが現れ、シェリーに自身のMPと魔法攻撃力を振り分ける。

 シェリーの魔法の勢いが数倍に増し、羽ごと"欠番の幹部"を氷漬けにした。


「おおっ……ムビっ!ナイスタイミング!」

「ムビ君!ありがとう、助かったよ!」


 シンラ、ナズナ、シェリーが笑顔で振り返る。


「皆さん、合流できて良かったです!……こいつは、なんなんですか?」

「祭壇から召喚された化物だ。あの羽に触れたらこうなる……絶対に触れるな」


 シンラは自分の左手に生えた白い毛を見せる。


(呪いか……あの化物も、デスストーカーと同じで接触したらダメなタイプか……)


「あいつが凍っているうちに回復だ。HPもMPも、マジで余裕がねぇ。ムビ、お前はどうだ?」

「すみません。俺も余裕はありませんが、ポーションは使い切ってて……」

「なら、私たちのを分けてやる。全員、可能な限り回復するんだ!」


 四人は手持ちのポーションを全て取り出し、次々に飲み干す。

 全てのポーションが空になったが、おかげでほぼ全回復することができた。


 ちょうど最後の一瓶を飲み干したタイミングで、"欠番の幹部"を覆っていた氷が砕け散る。

 "欠番の幹部"は、ほとんどダメージを受けた様子がない。


(俺とシェリーさんのステータスを合わせても、ほぼノーダメージか……。なら、もっと力を集中させるしかない)


「皆さん……お願いがあります」

「なんだよ、改まって」

「デバフ対策……解除していただけませんか?そうすれば、もっと強力にサポートできます」

「確かに、こだわってる場合じゃなさそうだね……。分かった。皆、デバフ対策を解除しよう」


 ナズナの一声で、三人は指輪を外す。


「ありがとうございます……。では、次のシェリーさんの魔法を合図に、一気に仕掛けましょう」


 "欠番の幹部"は再び羽ばたき、大量の羽をムビたちに飛ばす。


「《星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)》!」


 ムビのスキルにより、四人全員分の魔法攻撃力を合算した魔法が放たれる。

 結果、先ほどよりもはるかに強力な呪文となり、羽も"欠番の幹部"も一瞬で氷漬けになる。


「今です!お願いします!」


 ナズナが素早く飛び出す。


(《エンパワーメント》!)


 ムビは、四人分の力とスピードをナズナに集中させる。

 ナズナのスキル《瞬神》により、スピードが数倍に上昇する。


「なにこれ!?凄い力!!?」


 ナズナは自分から湧き上がる力に驚いた。


 ガガガガガガガガ!


 四人分の力を集結させたナズナの連打は、稲妻が走るように"欠番の幹部"の全身を砕いた。


「——ギィッ!?」


 "欠番の幹部"が初めて呻き声をあげた。


「ははっ……効いてるじゃねぇか!」


 シンラが前に躍り出る。


(《エンパワーメント》!)


 今度はシンラに四人分のステータスを集中させる。

 スキル《怪力乱神》により、力が数倍に上昇する。


 よろめく巨体の懐に、シンラが飛び込む。


「零距離——《螺旋竜煌砲》!!」


 ——ドゴオオオォォォォォン!!


 直接殴打から放たれたシンラの奥義は、"欠番の幹部"を吹き飛ばした。


「——ギイィィィッ!!」


 そのまま壁に激突し、フロアが揺れる。


「——ははっ、すげぇ力だ!こりゃだいぶ効いたんじゃねぇか!?」


 "欠番の幹部"はヨロヨロと立ち上がる。

 かなりのダメージを受けたようだ。


「やっぱりな!これなら倒せそうだぜ!」

「油断せず行きましょう!《全能力上昇(オールゲイン)》!」


 ムビは四人の全ステータスを30%強化した。


「《全能力上昇(オールゲイン)》まで使えるのかよ、マジで有能だなムビ!」

「これなら、勝てそうだね!」


 希望が見えたそのとき——"欠番の幹部"がニヤリと笑った。

 一瞬で四人に接近する。


「こいつ、速っ——!?」


 尻尾を振り回し、四人を全員壁まで吹き飛ばす。


「ぐはぁっ!!」


 たった一撃で、全員大ダメージを受けていた。


「くそっ!この図体でナズナより速えーのかよ……!」

「いよいよ戦闘モードってことか……!」


 "欠番の幹部"は大きく口を開け、輝き始める。


「ブレスだっ!まずい……!」

「ナズナさん!急いで全員を回収してください!」


 ムビは四人分のステータスをナズナに集中する。

 ナズナは僅か2秒で全員を回収する。


「《断界術式・黒曜の楔》!!」


 四人のステータスをムビに集中させ、ムビは結界で四人を包み込む。


 ——シュインッ……


 紫色の光線が、一瞬で360度全方位に放たれる。


 ——カッ!


 大爆発を起こし、紫色の業火が部屋中を包み込む。

 ブレスの破壊力にムビの結界は歪むが、かろうじて耐える。


「なんつー威力だ……この結界が無かったら、今ので終わってたぜ……」


 紫色の炎はなおもメラメラと燃え盛り、空気が焦げるような熱気が四人を包む。


(くそっ……!これじゃあ結界を解いた瞬間、全員火だるまに……)


 ズシン、ズシン——


 動けないムビたちに、"欠番の幹部"がゆっくりと接近する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ