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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第160話 遺跡の守護者

 地下入口でデスストーカーに足止めされたムビたちは、その後、順調に遺跡の奥へと進んでいた。


「そこ、罠があるから気を付けてくださいね」

「おう、サンキューな」


 シンラはひょいと罠を飛び越える。


「ムビ君、助かるわ~。私たち、罠探知できる人がいなくてさ」


 ナズナが耳をピョコピョコさせながら、ムビに笑いかける。


「本当よ。これだけ強くて、補助魔法にも長けてるなんて、幅広過ぎるわ」


 シェリーが素直に感心する。


「しっかし、こりゃ完全に迷宮だな。どう進めばいいか、見当もつかねぇ」

「マッピングしながら、しらみ潰しに進むしかないね」

「あっ、道なら分かりますよ」


 ムビの言葉に、全員が一斉に振り返った。


「えっ!?分かるの!?」

「はい。物理探知で、フロアの構造はある程度把握しました。かなり広いですけど、なんとか階段までのルートを見つけました」

「まじか!お前、ほんと有能だな♪」


 シンラはムビと肩を組んだ。


(うわっ、近っ……!)


「なら、この道はどっちに行けばいいんだ?」


 目の前に分岐が現れた。


「右ですね。ただ、すぐに魔物の群れと遭遇しそうです」

「なにっ?お前、もしかしてAランクの探知もできるのか?」

「いえ、そこまでは……。ただ、物理探知で動くものは分かるので……」

「十分だ♪よっしゃ、私が蹴散らしてやる」


 シンラは先頭に立った。

 右に曲がってすぐに、黒い魔物の大群が押し寄せてきた。


「またこいつらか!一気にいくぜ!」


 シンラが大暴れしながら、一行は奥へ進んでいく。


 その様子を、天井に張り付いた目玉がじぃっと見つめていた。


 ---


 遺跡の最深部。

 モニターに映し出された映像を見つめる者がいた。


 スーツを身にまとった男性。

 眼鏡のレンズに、ムビたちの映像が反射していた。

 一見、人間のようにも見える。

 だが、長い耳と背中に生えた翼が、男が人間でないことを物語っていた。


「ふわぁー。おはよう、グリモール」


 背後から、男に話しかける美少女が現れる。

 白と黒のツートンカラーの髪が、サラサラと肩まで伸びている。


「おはよう、エレノア。三日ぶりだね」

「サードアイの映像を凝視するなんて、珍しいね。何見てるの?」

「ああ。ちょうど今、侵入者を監視しているんだよ」

「侵入者!?まじで!?」


 エレノアは身を乗り出してモニターを覗き込む。


「うっはぁ、ほんとじゃん♪侵入者なんて千年ぶりじゃないの?」

「そうですね。それに、2階層のデスストーカーたちを突破しました。ここまで進んだ人類は初めてですね」

「へぇー、なかなかやるじゃん。ここまで来るかな?」

「ははは。それはさすがに無理でしょう。人間では、最深部の8階層に辿り着くことは不可能です」


 モニターを見ていたエレノアの瞳が、怪しく輝いた。


「あらぁ、若い男がいるじゃない?グリモール、この子は生かしといて」

「何を言っているんですか。そんなわけないでしょう」

「えぇー、一人くらいいいじゃない?」

「はぁ……いいですか、エレノア。我らの本懐を忘れてはなりません」


 グリモールが溜息をついてエレノアを諭す。


「ちぇっ。ケチー」


 エレノアは頬を膨らませてどこかに行ってしまった。


「全く……。この遺跡の最高戦力があの調子では困りますね。……まぁいいでしょう。千年ぶりのお客様です。魔王軍が誇るこの遺跡で、どこまであがけるのか……。じっくり楽しませてもらおうじゃありませんか」


 グリモールは悪魔のような笑みを浮かべた。


 ---


「おおっ!本当に階段があるじゃねぇか!」


 ムビたちは3階層への入口に辿り着いていた。

 黒い魔物の群れが絶えず溢れ出てくるが、シンラが先頭で暴れるおかげで、難なく3階層への突入に成功した。


 その様子を、グリモールはモニター越しに見ていた。


(ほう……。シャドウサーヴァントがまるで相手になりませんか。人間のレベル上限では、シャドウサーヴァントの討伐は難しいはずですが……。おや……?よく見たら、3人は亜人種ですね。なるほど、それならこの強さもあり得るかもしれません)


 そのとき、ムビたちの前に新たな魔物の群れが現れた。


「おっ?今まで出てこなかったタイプの魔物だな?」


(くくく……3階層は強力な魔物の巣窟です。果たして、ここを突破できるかな?)


 ドゴオォォォォォンッ!!


 シンラの一撃で魔物たちは吹き飛んだ。


(なっ……なにぃ……!?)


 ナズナも前に出る。

 素早い動きで魔物を翻弄しながら、着実に魔物の数を減らしていく。


(どうなっている……!?この魔物たちは、単純な戦闘能力ならデスストーカーを上回るのだぞ……!?)


 シンラが赤い目を光らせながら叫ぶ。


「はっはぁーーー!!まともに殴り合えるだけ、デスストーカーよりよっぽどやりやすいぜ!!」

「あたしも、こいつらなら遠慮なく前線で戦える!」


(くそっ……おのれぇっ……!)


 シンラとナズナが前線に出られるようになったため、ムビは後方支援に徹する。

 スキルを使用し、自分の戦闘ステータスをシンラに割り振る。


「う……おおおおおおお!?」


 シンラの力はさらに増し、ナズナ並みの超スピードで動く。

 凄まじい勢いで魔物たちを肉塊に変えた。


「こいつはすげぇ!!これなら無敵だぜ!!」


 シンラの無双ぶりを見て、ナズナが頬を膨らませる。


「シンラばっかりずるい!ムビ君、私にもスキル使って!」

「わ……分かりました!」


 ムビはナズナにスキルを使用する。


「どひゃーっ!こりゃあすごいや!」


 ナズナは目に見えぬほどの速さで、シンラ並みの剛拳を振るった。

 ほとんど広範囲魔法のような勢いで、魔物の骸の山ができあがる。


「二人とも、下がって!」


 シェリーが呪文の詠唱を終える。

 シンラとナズナは後方に下がった。

 と同時に、ムビはスキルを発動し、シェリーの魔法攻撃力を高める。


「"星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)"!」


 パッキイィィィィィン———!!


 残りの魔物は全て一瞬で凍りつき、氷塊となって砕け散った。


「いよっしゃあ!楽勝だぜ!」


 シンラが拳を振り上げ、ナズナとムビがハイタッチを交わす。

 シェリーも微笑みながら、杖を軽く振った。


(……なんという強さだ!?……くっ、こうなれば持久戦が上策か……)


 モニター越しに様子を見ていたグリモールは、眉間に皺を寄せる。


(各階層は迷宮のように複雑な作りになっている。奴らが迷っているうちに、疲れ果てるまでシャドウサーヴァントを投入し続けて……)


「おいムビ?下に続く道は分かるか?」

「はい。探知で階段を見つけました。案内します」


 シャドウサーヴァントを3階層に送ろうとしている間に、ムビたちは正解のルートを迷わず走り抜ける。


(どうなっているんだこいつら!?なぜそんなに迷いなく正解のルートを選べる!?……くそっ、これでは3階層を突破されてしまう……!)


 グリモールは歯噛みしながら、ムビたちの動きを観察する。


(やはりセオリーではあるが、パーティを分断し、確実に一人ずつ仕留めていくのが上策か。くくく……4階層はトラップの階層。まずはあの中の一人を、確実に消すか……)

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
因みに、管理者が企みを行うまでもなく、勝手にパーティーから分断された馬鹿が既に約一名います。さぁいったい誰でしょう?
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