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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第159話 分断と連携

 転移の罠を踏んでしまったミラは、部屋の中央で一人ポツンと立っていた。


(しまったのう……皆とはぐれてしまった……)


 普段ソロ活動をしているミラにとって、仲間との冒険は貴重な体験だった。

 1000年間隠された魔王軍の遺跡。

 この上なく面白そうなダンジョンに仲間と挑める———


 ———などとワクワクした瞬間にこれだ。


(罠探知、苦手なんじゃよなぁ……)


 普通の罠なら踏んだってどうってことない。

 矢が飛んできたら避けるし、岩が転がってきたら砕けばいい。

 落とし穴に落ちたってノーダメージだ。

 だが、転移の罠というのは初めてだ。

 これほど高度な罠が仕掛けられているということは、やはり一筋縄ではいかないダンジョンなのだろう。


 ミラは探知魔法を発動し、仲間の位置を探る。


(うーむ、ギリギリ探知の範囲内におるが、相当遠いな。ここは、かなり深い階層のようじゃ。皆と合流するには上に向かう必要がありそうじゃが、どう進めばいいのか全然分からんな……。とりあえず、この部屋を出るか)


 ミラが第一歩を踏み出したそのとき———


 カチッ


 罠を踏んだ。

 部屋を覆いつくすほどの魔物が召喚された。


「あっ」


 罠を踏んだ状態で固まるミラを見て、魔物たちはうなり声をあげる。


「Grrrrr……!」


 ミラは自分の運の悪さにうなだれた。


(ワシってどうして、肝心な時にいつもトチるんじゃろう……)


 ミラは探知魔法を発動する。

 が、目の前の魔物に一切反応を示さなかった。


(反応がない……ということは、こいつらはAランクより上の魔物ということか……)


 魔物たちは一斉に、ミラに飛び掛かった。


 ---


 上層階では、ムビたちがデスストーカーの群れと交戦していた。


「シンラさん!ナズナさん!後ろに下がってください!」


 触れれば呪いを受けるデスストーカーは、素手で闘う二人には相性が悪い。

 ムビは代わりに前衛を引き受けた。


 びゅるん


 無数の腕がムビに向かって伸びる。

 ムビはそれらの腕を軽やかに躱しながら、伸びきった腕を両断する。


「へぇ……やるじゃねぇか、ムビ」


 10体のデスストーカーを相手に一人で立ち回り、シンラが感心する。


(修行の成果が出てる……。それに、丸一日大量の魔物と戦ってきたんだ。これくらいの数、なんてことない)


「あー……。やっぱ、後ろで見てるのは性に合わねぇや。私も出るぜ、ムビ」


 シンラがデスストーカーに向かって前進した。


「ちょっ……!シンラさん!デスストーカーに触れると呪いが……」

「へっ……要は、触れなきゃいいんだろ?」


 シンラは何もない空中に拳を振るう。

 拳に込められた闘気が放出され、数メートル先のデスストーカーを吹き飛ばした。


 びゅるん


 シンラの死角にいたデスストーカーが腕を伸ばし、シンラの腕を掴んだ。


「シンラさんっ!」

「へっ……!仮に、触れられたとしてもよ……」


 シンラは腕を掴み返し、強引に引っ張った。

 デスストーカーは宙に浮き、シンラに引き寄せられる。


「———オラァッ!!」


 ドゴオオオォォッ!!!


 シンラの渾身の一撃で、デスストーカーの四肢はバラバラに弾け飛んだ。


「……こうやってさっさと倒しちまえば、解呪できんだろ?」


 シンラは拳についた血を振り払いながらニヤリと笑う。


(なんという力技……。この人、やっぱり化物だ……)


 すかさずシェリーが魔法を放つ。


「"星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)"!」


 パキィン———!


 5体のデスストーカーが凍り付く。

 しかし、まだ仕留めきれてはいない。


「任せて!」


 ここぞとばかりにナズナが出る。

 素早さを活かし、氷漬けのデスストーカーに渾身の一撃を叩き込む。


「そぉらあぁっ!」


 あっという間に3体のデスストーカーに拳を叩き込み、粉々に砕いた。

 2体のデスストーカーは自力で氷の中から抜け出し、ナズナに襲い掛かる。


「おっと」


 ナズナのスピードはずば抜けており、あっという間にデスストーカーの射程圏外へと逃れた。


(ナズナさんのスピード、やっぱりすごいな……。あの速さがあれば、この数のデスストーカーもあっという間に倒せるかもしれない……そうだ!『エンパワーメント』で、ナズナさんからスピードを分けてもらおう)


 ムビはナズナに向けてスキルを発動する。

 しかし、不発に終わった。


(……!?あれ……?)


 間髪を置かず、シェリーが次の魔法の詠唱を終えた。


(……なら、支援はどうだ?)


 ムビは自分の全魔法攻撃力を、シェリーに振り分けた。


「"星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)"!」


 パッキイイイィィィィィン———!!


 一瞬で大広間全体を凍らせ、デスストーカーは全員氷漬けになった。

 そのまま砕け散り、ガラガラと音を立てて破片が散らばった。


「嘘……何、今の威力……!?」

「バフはうまくいくみたいですね。良かったです」


 ムビがニッコリと笑う。


「今のは、ムビ君のスキルなの!?」

「はい。俺の全魔法攻撃力をシェリーさんに振り分けました」

「すごっ……いつもの倍ぐらいの威力が出たわ……」


 シンラが笑顔で、ムビの背中を力強く叩く。


「やるじゃねぇかムビ!見込んだ通りの男だぜ」

「ははは。皆さんがお強いので、俺もかなり楽でした」


 しかし、一つ気になることがある。


「ナズナさん。俺、ナズナさんの素早さを振り分けようとしたんですけど、失敗しました。何かデバフ耐性などお持ちですか?」

「ん?ああ。それなら、私たち皆、装備品でデバフ対策をしてるよ。ムビ君の能力が厄介ってのは、すごく有名だったからね。多分、他の冒険者も、ムビ君を警戒してデバフ対策はバッチリなんじゃないかな?」

「なるほど……そういうことだったんですね。もしよろしければ、デバフ対策を解除しませんか?そうすれば、もっと幅広くサポートできますが」

「うーん、ありがたいんだけど、遠慮しとこうかな。私たち、あんまり連携とかよく分からないから、好き勝手に前にでちゃうし。バフならいいけど、デバフかけられるのはちょっと抵抗あるかな」

「そうですね……分かりました。俺のステータスを振り分けられそうなときだけサポートしますね」


 こうしてデスストーカーを全滅させたムビたちは、ダンジョンの奥へ進んだ。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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