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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第156話 ミラのスキル

「ワシのスキルは《豊穣なる貢》じゃ。かけられたバフの効果を、なんと5倍にするんじゃ♪どうじゃ、すごいじゃろう?」


 ミラは胸を張り、次に来るはずの賞賛を待った。


「……なんか微妙」

「なっ、何じゃと!?」

「いや、もっとこう……ド派手なのを期待してたからさ」


 バフ魔法は、一定時間ステータスを上昇させる魔法。

 重ね掛けはできない。


 Aランク冒険者が好んで使うのは"全能力上昇(オールゲイン)"。

 3分間、全ステータスが20~30%上昇する。

 1ステータスに限定すれば、50%~100%上昇する魔法もあるが、持続時間は1分~10秒になるため、あまり使用されない。


("全能力上昇(オールゲイン)"を使って、15分間全ステータスが100~150%上昇か……確かに強い。でも、ミラの強さって、そんなもんじゃない気が……)


「ははは。おいミラ、それじゃ説明不足だろ。ちゃんと教えてやれよ」

「……やれやれ、しょうがないのう♪」


 ミラの手が淡く光り始める。


「ワシはオリジナルの魔法を開発してのう。全ステータスが2倍になる魔法じゃ」

「全ステータス2倍!?……それじゃあ、ミラ自身にかけたら……10倍ってこと!!?」

「そうじゃ。ただ、この魔法はまだ開発途中でな。ワシ自身にしかかけることができん」


 ムビは言葉を失った。

 想像以上に、規格外の強さだ。


「でも、そんな強力なバフなら、持続時間が短いんじゃ……?」

「そう、そこが弱点じゃ。じゃから、こうして——」


 ミラは両手を広げた。

 すべての指に、指輪が嵌められている。


「全部、バフの持続時間を延ばす装備じゃ♪これ以外にも、全身に装備しておるぞ♪全部合わせると、バフの持続時間は、なんと24時間じゃ!」

「24時間!!?」

「うむ!一日一回、自分にバフをかけるのが日課じゃ♪」


 ミラの強さは、単なる天才肌ではなかった。

 明るく無邪気な性格の裏に、徹底した準備と戦略があった。


「……それ、本気で戦ったらどうなっちゃうの?」

「んー、それが分からんのじゃ。本気を出したこともないし、苦戦したこともない。ワシ自身、どうなるか分からん♪」


(……デスストーカーのときも、冒険者を呼ぶ必要なかったんじゃ……?)


「ほ~。聞き捨てならねぇなミラ。なんなら、一発やるか?」

「もーストップストップ!予選が終わってからにして!」


 髪が逆立ち始めたシンラを、ナズナが止める。


「ちっ。まぁいいか。それじゃあ、次はお前さんの番だぜ、ムビ」

「分かりました。俺のスキルは―――」


 ムビは自身のスキル《エンパワーメント》について説明した。


「なんだそりゃ?ややこしいスキルだな」

「でも、認知度が上がる程強くなるなんて、面白いスキルだね。『Mtuber』は天職なんじゃない?」

「私、スピードはあるけどパワー不足なんだよね。ムビのスキルで補強して欲しいなぁ」


 亜人たちがムビのスキルの話で盛り上がる中、ミラは黙って俯いていた。


「どうしたんだよ、ミラ?お前の大好きな、ムビのスキルの話だぞ?」


 ミラは目を開き、ぽつりと呟いた。


「ムビ……お主にバフかけてもらったら、ワシ、最強じゃね?」

「あっ……」


 その場にいる全員が固まった。


「例えば、お主の全ステータスをワシに割り振るとするじゃろ?それが5倍に増強されるんじゃが……」

「ムビの5倍だと……」

「いくらなんでも……化物過ぎない?」


 凄すぎて、全員酔いが醒めた。


「……なぁムビ。今、ワシにそのバフをかけてくれんか?」

「えっ……」

「お願い!1回だけでいいから!な?な?」


 亜人たちは息を呑んだ。

 ムビの背中には冷や汗が流れていた。


(一体、どうなっちゃうんだろう……。でも、確かに……すごく、見てみたい……)


「分かった。ちょっとだけだよ?」

「うむ!頼む!」


 ムビは、ミラに向けて掌を掲げた。


 《エンパワーメント》!


 ミラの体が光に包まれる。


「う……、おおおおおおおお……!?」


 ポフッ


 光が消えた。


「……?何も変わってないぞ……?」


 全員、首を傾げる。


「……あっ。バフの重ね掛けってできないんじゃ……」

「あっ」


 ムビの一言に、全員が声を揃えた。


「し……しまったあぁぁぁっ!!さっきかけたんじゃ!明日の昼まで解けんぞこれ!」


 ミラは頭を抱えて絶叫し、亜人たちは笑い転げた。


 ---


 時刻は夕暮れ。

 夜の気配が迫る。


「なんか、冒険者の数がいきなり減ってるね。どこかに、魔物が出現してるのかな?」


 1時間前は"409"を示していた転移石の数字が、"314"にまで減っていた。


「いや。多分、夜になる前に、リタイアする冒険者が続出してるんでしょ。Aランクダンジョンの何倍も危険なわけだし」

「なるほど、それは納得だわ。ところでシェリー。森の中心部って、このあたりでいいんだっけ?」


 エルフは森の微精霊の声を聞くことができる。

 シェリーは何もない空間をしばらく見つめた。


「微精霊はそう言ってるわね。それから道中、微精霊たちに聞いて回ってたんだけど、黒い魔物は昨日初めて現れたみたいね」

「まじかよ。ミラとシェリーの推察通り、普通の魔物じゃねぇってことか」

「あの……推察とは?」

「ああ。黒い魔物は、儀式で召喚された無生物の可能性が高いって話だ」

「ミラの探知によると、昨日は北の方角から魔物の群れが現れたって話でね。森の南にいた私たちは、今日は中央部で探知して、魔物の出所を特定しようと思っているんだ」

「なるほど……そういうことですか」

「儀式魔法で召喚された魔物なら、魔法陣や祭壇があるはずだわ。それを壊してしまえば、魔物は消えると思う」


 ---


 日が落ちて、夜になった。

 ムビは腹を満たして休息し、ある程度MPと闘気が回復していた。


「さて。どこからお出ましになるやら」


 シンラが、首をポキポキと鳴らす。


 怪物のような5人が、夜の闇を睨みつけていた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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