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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第154話 一人で万を討つ者

 ミラは眼下の少年を何度も見つめ、確信する。


(間違いない……ムビだ)


 その様子に気づいたシンラが、眉をひそめて声をかける。


「あ?なんだ、知り合いか?」

「あれは、ムビじゃ……。ほら、ワシが写真見せた……」

「何っ!?あいつがそうなのか!?」


 シンラは急に興味を示し、魔物の死骸に囲まれたムビをじっと観察する。


「へぇ……ってことは、あの死体の山、あいつが築いたってことか?」

「恐らく、な……」

「ふぅん。いいねぇ……」


 ナズナも獣人族の視力を活かして、まじまじとムビを観察する。


「ほんとだ、写真の通りの顔だね。相当強そうだけど、さすがに多勢に無勢かな?」

「うっし!手助けしてやろうぜ!」

「ちょ、ちょっとシンラ!そのムビって人と、戦闘になるかもしれないんだよ!?」

「だーいじょうぶ。そうなったら、私が戦ってやるさ」


 そう言うなり、シンラは崖を飛び降りた。


「ちょ、ちょっと!?ああもう!」


 ナズナも続いて飛び降り、少し遅れてミラとシェリーも後を追った。


 ---


 ムビは剣を構え、魔物の群れと対峙していた。


(くそっ……!もう丸一日戦ってる……!さすがに体力が……)


 ドゴオオォォォッ!!


 前方の魔物が吹き飛び、ムビは目を見開く。


(な……何だ……!?)


 土煙の中から現れたのは、長身で髪の長い鬼人。

 仁王立ちの姿が、まるで戦神のようだった。


「よぉ、少年!加勢に来たぜぇ!」


 突然現れた鬼人はムビに話しかけ、そのまま暴れ始めた。


 ドゴォォォッ!!


 左側の魔物も吹き飛び、獣人の少女が叫ぶ。


「ったく、どうなっても知らないからね!」


 ムビはポカンとした表情を浮かべ、その場に立ち尽くす。


(獣人……?冒険者か?見覚えがあるような……でも、ありがたい……!)


「あ……ありがとうございます!助かります!」


 ムビは声を張り上げ、二人にお礼を言った。


 さらに、右方向、後方の魔物が吹き飛ぶ。


(また加勢か!?ありがたい……!)


 ムビも最後の力を振り絞り、魔物の群れへと突っ込んだ。


 ---


 突如現れた加勢のおかげで、魔物はすべて討伐された。


「あの……ありがとうございました!本当に助かりました!」


 ムビは四人に深々と頭を下げる。


(獣人、鬼人、エルフ……亜人で統一されたパーティかな?もう一人は、鬼人の後ろに隠れてて見えないけど……)


「いいってことよ。なにやら、孤軍奮闘している様子だったからな。……ところで、これ全部、お前がやったのか?」


 シンラが魔物の山を指差す。


「はい。実は、昨日転移されてからずっと戦ってて……」

「なにっ!?てことは、丸一日戦ってたってのか?」

「はい。もう魔力も闘気もほとんど残ってなくて……」

「そいつは災難だったな。ところでお前、仲間は?」

「それが、ここに転移されたのは俺だけみたいで……」

「なんだそりゃ?そんなことあんのか?」

「みたいですね。幸い、俺が転移されてないってことは、まだ皆生き残ってるみたいですけど……」


 ムビは魔物の山に腰を下ろし、ポーションを飲み始めた。


「ははっ、お前面白いな。私は、シンラ。見ての通り鬼人だ」

「私はナズナ。獣人だよ」

「エルフのシェリーです。よろしくね」


 ムビは三人と握手を交わす。


「あの……もう一人の方は?」

「ははは。ほら、出てこい」


 シンラに背中を押され、隠れていた四人目が姿を現した。

 途端に、ムビに緊張が走った。


「……ミラ……」

「ひ、久しぶりじゃな、ムビ。元気か?……ははは……」


 ミラは下を向き、もじもじしている。


(あー。これ、ガチで好きなやつだわ)


 亜人の三人は、同時に同じことを思った。


「何しに来たの?ひょっとして、俺を狙いに?」

「ははは!狙ってんのは間違いねぇよなぁ、ミラ?」


 シンラが笑いながらミラと肩を組む。


「ち……違うんじゃ!昨夜のモンスター災害の原因を探っていたら、たまたまお前がいて……!」

「昨夜のモンスター災害?」

「なんだお前、知らないのか?転移石に通知来てんだろ。……あぁ、戦いっぱなしで見てねぇのか」


(転移石?そういえば、通知機能があるって話だったな)


 ムビは、チラッと四人を見る。


「大丈夫。私たちはお前に何もしない。安心して転移石を見な」


 シンラの言葉に、ムビの嘘探知は反応しなかった。


「ありがとうございます。それじゃあ、確認します」


 ムビは保存袋から転移石を取り出し——驚愕した。


「冒険者が、一晩で2000人も……!?」

「あぁ、そうだ。お前のところにも来なかったか?黒い奴」

「無我夢中だったので……。そういえば、そんな魔物もいたような気がします」

「……ははは。Aランクを一晩中討伐し続けたっていうのかよ。お前、やっぱりいいな」


 シンラが屈託のない笑みを浮かべる。


「私たちは、その原因を突き止めようと思ってんだ。どうだ、お前も協力してくれねぇか?」

「協力……ですか……」


 ムビはミラをちらりと見る。

 ミラは申し訳なさそうにうつむいていた。


「お前たちの間に、何かあったのは知ってる。だけど、少なくとも今回は私たちに敵意はねぇ。それに、お前の仲間も、まだこの森のどこかにいるんだろ?早く解決しないと、今晩死ぬかもしれないぜ?それとも、今からこの広大な森を探してみるか?」


 確かに、今から『四星の絆』と合流を目指すのは現実的ではない。

 いちいちシンラの言う通りだ。


「……分かりました。モンスター災害の原因調査、俺も手伝います」

「おう、よろしく頼むぜ。お前、有能なんだってな?期待してるぜ♪」


 シンラは笑顔で、再びムビと握手を交わした。


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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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