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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第151話 闇に蠢く者

 エルバニアの森は、S級冒険者選抜大会の初夜を迎えていた。

 数千人の冒険者が集うこの広大な森は、モンスター災害の影響で魔物が溢れ返っている。

 どのパーティも明かりを避け、茂みや洞穴に身を潜めていた。


 ———にもかかわらず。

 盛大なキャンプファイヤーを囲み、どんちゃん騒ぎを繰り広げるパーティが一つ。

 パーティ名、『ミラと愉快な仲間たち』。


「飲め飲めー!!」

「だーっはっはっは!!」


 ミラの他には、鬼人、獣人、エルフの姿がある。

 全員女性のようだ。


 このパーティは予選がサバイバル形式と知るや否や、真っ先に酒とつまみを買い込んだ。

 初日の活動は、川遊びとバードウォッチング、あとは狩猟用の魔物討伐。


 静まり返る森の不気味さなど意に介さず、のんべぇたちの笑い声は夜の静寂を切り裂いていた。


 当然、冒険者たちが気付かないわけがない。

 だが、ミラの姿を確認した途端、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 魔物であれば、酒の肴にされるのがオチだ。


「はー食った食った!いやー、今日は楽しかったけど、冒険者と全然戦えなかったのはつまらなかったなー」

「ほんとそれだよ。S級選抜戦って聞いて、ワクワクしてたのに」

「まぁまぁ、良いではないか♪わしは久々にピクニックができて満足じゃ♪」

「お前がいるせいで戦えないんだよ、ミラ!」

「知らん!わしゃ知らん!わしが興味があるのは、ムビだけじゃ♪」


 ミラはスマホを取り出し、ムビの写真を見せびらかす。


「ほらほら見てみ??超カッコよくない!?この寝顔なんかホラ!!宇宙一可愛い!!」

「まーーた始まったよ、ミラのノロケwww」

「そんなに好きなら、さっさと結婚しちまえバカヤロー!!」

「できるもんならとっくにしてるのじゃ!全然ふり向いてくれないんじゃ~!!」

「知るかよ、お前が距離感間違えたんだろwww」

「うぅ~、失敗したぁ~~~」


 ミラはおいおいと泣き出した。


「ぎゃはは、泣け泣け!!ww泣いてすっきりしちまえww」


 鬼人が笑いながら酒を注ぐ。


「よーし、明日はムビとやらを探して告りに行くぞー♪」

「やめるんじゃ!それこそ距離感、間違うとる!」


 ---


 静まり返る森の中。


 ふと、地面が盛り上がる。

 地中から4人の黒ずくめの男が現れた。

 手の甲には爪のような武器を装備している。


「そろそろ狩りの頃合いだな」

「へへへ。腕がなるぜ」


 Aランクパーティ『螺旋風魔』。

 闇ギルドに所属しており、暗殺をメインに活動している。


「冒険者どもは休息している頃合いだろう。夜襲にはもってこいだ」

「闇の中なら、夜目が効く我らが有利。日が昇るまで狩りまくるぞ」


『螺旋風魔』は音もなく森の中を疾走した。


「探知に反応アリ。冒険者を発見した」


 ---


 Bランクパーティ『風雅連盟』は1人見張りで起きていた。

 この見張りは、探知魔法を発動し、周囲を警戒していた。


(今日はなんとか生き残れた。このまま、明日も乗り切るぞ)


 ズシャッ!


 見張りは後ろから首を切り裂かれた。


「———ガハッ……!?」


 何が起きたか分からない。

 振り返ると、黒ずくめの男が4人立っていた。


(こ……こいつら一体どこから!?探知魔法には反応がなかったぞ!?)


「……なんだ、どうし……ぐあぁっ!!」


 眠っていた冒険者たちも、一瞬で首を切られる。


(な……なんで……)


『風雅連盟』の冒険者たちはそのまま息絶えた。


「転移が始まるぞ。身ぐるみを剥いでおけ」

「くくく……できれば断末魔の声を聞きたかったがな」


『螺旋風魔』が荷物を剥ぎ取ると、遺体は全て転移した。


「おっ、なかなかいいアイテムを持ってるじゃねぇか」

「食料もあるな。これで持久戦になっても有利だ」

「この調子で装備品やアイテムを集めれば、敗退したとしても大儲けだ。今夜はあと5つは狩るぞ」

「くくく。夜に俺達にかなう奴なんていねぇよ。例え、ミラ・ファンタジアだろうとな……」


 ———ザリッ


 そのとき、足音がした。

 見ると、全身真っ黒な人型の魔物が立っていた。


「……なんだあいつは?なぜ接近を許した?」

「分からん……。探知に反応しないようだ」

「ならば、Aランクの魔物ということか。さっさと狩るぞ」


『螺旋風魔』は4人がかりで魔物に襲い掛かった。


 びゅるんっ


 魔物の両腕が伸び、2人の首を掴んだ。


「ぐおっ……!」


 凄まじい力で首を締め上げられる。


「"裂空斬"!」

「"虎殺剣"!」


 残った2人が魔物の腕を斬りつける。

 魔物は手を離し、びゅるんと音を立てて腕を縮めた。


「強いぞ……油断するな!」


『螺旋風魔』は体勢を立て直す。

 そのとき。


 ———ザリッ

 ———ザリッ

 ———ザリッ


 周囲から、無数の足音が聞こえた。


「ちょ……ちょっと待て……」


 無数の人型の魔物に、周囲をぐるりと囲まれていた。


「ま……まずい……!転移石を……早くッ!!」


 魔物の群れが、一斉に襲い掛かってきた。


「ダメだ……間に合わ……ぐあああああああああッ!!!」


 ---


 S級冒険者選抜大会の運営委員長を務めるベックは、寝室で横になっていた。


(いやー、初日は大成功だった。美味い酒が飲めたわい)


 ぐふふ、と笑みを浮かべる。


(我ながら予選の発案は完璧じゃった。ダンジョンを試験会場とすることで、会場費・人件費を削減。さらに、沈静化には莫大な金がかかるモンスター災害を、参加者たちに無償でやらせ、一石二鳥。中抜きした金がたっぷり懐に入ってくるわい……くくく……)


 そのとき、電話が鳴った。

 部下からだ。


(まったく……こんな時間に何の電話だ……?)


 ベックは電話に出た。


「もしもし。なんじゃ、こんな時間に!?」

「委員長、大変です!冒険者たちが次々に死亡しています!」

「……何じゃと!?何があった!?」


 いかにモンスター災害の渦中とはいえ、上位の冒険者たちが簡単に命を落とすとは思えない。


「とにかく、会場に来てください!」


 ---


 ベックは大慌てで会場入りした。


「どうした!?何が起こっておる!?」

「とにかく、こちらへ!」


 扉を開けると、凄惨な光景が広がっていた。


「こ……これは……」


 数百にも上る冒険者の亡骸。

 泣き崩れる仲間たち。


「おい!一体、何があったんだ!?」


 ベックは生存者に声をかけた。


「く……黒い人型の魔物の群れに襲われました!探知魔法に反応が無くて、接近を許して……!」

「お……俺達も、そいつらにやられました!」

「うちもだ!」

「俺達も!」


 生存者たちは、口々に同じことを証言した。

 ベックはゴクリと喉を鳴らす。


(一体、エルバニアの森で……何が起きているんだ……?)

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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