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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第138話 疲労困憊

 午前中は体術の修行が続いた。

 9時までは当て身・蹴り・投げ・歩法・呼吸法などを一通り、解説付きでトレース。

 その後、感覚を掴むために約1時間の反復練習が行われた。


 10時からはリリスとの組手。

 容赦なく叩きのめされた。


「つ……強い……」

「いざ戦闘になると、なかなか技は出ませんし、どうしても力むものです。経験を積み、日常から最適な動きを意識すれば、上達は早くなりますよ」

「うん。頑張ってみる」


 11時からは基礎鍛錬。

 片腕で大岩を持ちながら、指一本で腕立て伏せを行う。


「全ての指で指立て伏せをしましょう。初日なので、とりあえず一本あたり100回ですかね」


 ムビは1時間ほどかけて、息も絶え絶えにノルマを達成した。

 手は震え、力が入らなくなっていた。


「これ……きついね……」

「この岩は重く頑丈で、闘気を乱す特別性ですからね。筋力だけでなく、闘気の総量も増えますよ。合格ラインは、指一本あたり2000回ですかね」

「2000……!?む、無理だよそんなの……!」

「大丈夫です。ムビさんは闘気を習得したばかりで総量がまだ少ないですが、地道に鍛えれば増えます。筋力がついて体の使い方も覚えれば、回数は自然と増えていきますよ」


 リリスは微笑んだ。

 休む間もなく、次の鍛錬へ。


 仰向けに寝て、大岩を数メートル放り投げ、そのまま体に落下させる。


 ズシィン!


「ぐはっ……!」

「もっと高く上げてください」

「は……はい……」


 さらに高く放り投げる。

 当然、衝撃はさらに重くなる。

 大岩が落下する度に地面が揺れる。


「耐久力を上げるトレーニングです。これがノーダメージで済むよう、何千回、何万回と繰り返しましょう」


 12時半になり、ムビとリリスは庭園で昼食を食べた。


「いかがでしたか、体術の修行は?」

「もう、ボロボロです……」

「ふふ。それは良いことです。午後からの剣術の修行もこの調子で頑張りましょう」


 テーブルに並ぶ料理はどれも美味しく、疲れた体に染み渡った。


「味だけでなく、成長促進や疲労回復にも効果的なメニューです。いっぱい食べてくださいね」


 13時からは剣術の修行が始まり、昨日習った内容をなぞった。


「ほら、剣筋が乱れていますよ」


 午前の疲労が響き、体が思うように動かない。


「トレースしないと動けなければ意味がありません。きちんと技を自分のものとして消化しないと」


 14時からはリリスとの立ち合い稽古。


「ほらほら、もっと攻めないと強くなれませんよ?」


 リリスは蝶のように舞いながら、一方的にムビを追い詰める。


(攻めたいけど……圧がすごすぎて、全然打ち込めない……!)


 まるで勝負にならず、一方的にボコボコにされた。


 15時からは基礎鍛錬。

 闘気が尽きるまで剣を振り、最後は剣を地面に突き立てて逆立ち。


(も……もう限界っ……!)


 ムビは倒れこんだ。


「あら。昨日より20分短いですね?」


 昨日と比べ、疲労の溜まり方が尋常ではなく、闘気もほとんど底をついている。

 ムビは泥と汗にまみれたまま、荒く呼吸をした。


「もう一度やりましょう」


 ムビはヨロヨロと立ち上がり、地面に剣を突き立てる。

 今度は30分で倒れこんだ。


「ふむ。限界のようですね。日も暮れましたし、本日の修行はここまでとしましょう」

「あり……がとう……ございました……」


 ムビは大の字になりながら、小さく声を漏らした。


「そうだ、ムビ様。回復魔法の使用は駄目ですよ?自然回復しないと、体や闘気が育まれないので」

「ふぁい……」


 ---


 王宮の浴槽でムビは枯葉のように浮いていた。


(最……高……)


 もはや思考をする体力も残っていない。

 癒し以外、何も求めていなかった。

 擦り傷と痣だらけの体に、熱い湯が沁みる。



「ムビ様、お召し物をどうぞ」

「うん……ありがとう……」


 リンが浴室で待っていて、裸のムビの体を拭いて服を着せた。

 ムビにはもう羞恥心が湧く余裕すらない。

 服を着る動作ですら体が痛み、むしろリンの存在がありがたかった。


(この男……もう限界だな)


 リンはムビの様子を見て思った。

 恐らく、明日には根を上げるだろう。


「本日はリリス様がご予定のため、夕食はムビ様お一人となります。お疲れでしょうから、離れで準備いたします」

「ん……ありがとう……」


 離れで夕食を済ませたムビは、そのままベッドに倒れ込んだ。


(くそう……体が限界だ。これじゃ、とても明日は持たない。回復魔法は使えないし……それなら……)


 ムビは、自然回復力促進の魔法を使用した。

 回復魔法の方が遥かに効率が良いため、滅多に使用されることはない魔法だ。


(念のため、覚えておいて良かった……)


 さらに風魔法で酸素を大量に発生させる。


(確か、酸素濃度が高いと体の治癒力が高まるって聞いたことが……)


 20時。

 部屋の酸素濃度を高めたところで限界を迎え、ムビは眠りに落ちた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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