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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第132話 話題沸騰

「それでは次のニュースです。昨日未明、王室よりS級冒険者選抜大会の開催が発表されました。クローディア王国での開催は実に32年ぶりとなります。セキさん、どう思われますか」

「これは大きなニュースですね。過去には視聴率70%を記録した国民的行事です。冒険者どうしの戦いと言えば決闘(デュエル)ですが、実は決闘(デュエル)には全冒険者の1割程しか参戦していません。9割の冒険者は、『冒険をしてこそ冒険者』という考えの元、決闘(デュエル)に一度も参戦していないんですね。つまり、まだ見ぬ実力者達が数多く存在するわけですが、S級冒険者選抜大会は、その9割の冒険者達が参加してきます。つまり、真の最強が決まるわけです」

「なるほど……。ただでさえ人気の高い『冒険者』コンテンツですが、S級を賭けて全冒険者が鎬を削り合う。だから、高い視聴率を記録するのですね。しかも今回は、第六王女リリス様の専属パーティを選ぶ大会。王族の中でも圧倒的人気を誇るリリス様の関与により、過去最大の盛り上がりが予想されています。しかし、こんなに面白い大会が、32年間行われなかったのは何故でしょう?」

「結局は王の判断によるのですが、理由はいくつか考えられます。例えば、死傷者が出るためですね。S級を決めるためとはいえ、優秀な冒険者達が失われるのは損失と考える見方があります。他にも、他国のスパイや反社会的勢力が入り込むリスクもあります。帝国との戦争が始まったので、それどころではないという判断もあったのかもしれません」

「噂では、王とリリス様の推薦パーティが折り合わなかったとも言われています。何にしても、非常に楽しみです。具体的に、大会はどのように進められるのでしょうか?」

「一ヶ月後に開催される予定です。期間は二ヶ月間で、競技内容は王室・ギルド協会・決闘(デュエル)協会・コロシアム協会の協議により決定します。まずは予選が行われ16チームまで絞り込み、その後トーナメントで優勝者が決まります」

「この大会のために即席で作られるパーティが多数出場することも予想されています。ところで、優勝者にはS級冒険者の称号が与えられますが、具体的にS級冒険者にはどのような特典があるのでしょうか?」

「S級冒険者になると、準王族としての特権が与えられます。全ての納税義務がなくなり、検閲なしでの関所の通過、海外への自由な移動が許されます。公共施設の利用料や特定の飲食店、宿の費用がタダになります。なにより、収益が莫大です。月給1億円の固定給が発生し、一般ギルドでは受注できない王族からの依頼を受けることができます。Aランクの依頼の成功報酬は1億円と言われていますが、S級は少なくとも10億円と言われています」

「まさに、未曾有のチャンスですね。果たして、どのパーティがこの栄誉を手にするのでしょうか?」


 ---


 連日、SNSもメディアも、話題は通称『S級選抜大会』一色。

『四星の絆』は酒場で飲んでいたが、周りの客もこの話に熱中している。

『四星の絆』の面々も、木製のテーブルを囲みながら議論を交わしていた。


「S級選抜大会か……。大変なことになったね」

「まさか生きているうちに開催されるとは思いませんでした」

「ランクに関わらず、全冒険者が参加可能みたいだけど、どうする?私達も出場する?」


 今日はその話のために酒場に集まった。

 まずはユリが口を開く。


「私は出てみたいな!こんなお祭り、参加しなきゃ損だよ♪それに私たちなら、ひょっとしたら優勝するかもしれないし!」


 続いてシノが口を開く。


「私は反対です。死傷者が出る危険な大会です。ムビさんはともかく、私達もはるかに格上の冒険者達と対峙することになります。とてもリスクが高いと思います」


 次に、ルリが口を開く。


「私も反対かな。仮に優勝したとして、王族の依頼に応えなきゃいけないんでしょ?どんな危険な依頼かもわからないし、絶対アイドル活動に支障が出ると思う……」


 そして、サヨ。


「私は半々ですね。反対理由はシノさんやルリさんと同じです。ただ、優勝したときの利益が大きく、ムビさんの借金を返す目処が立つなら、出るのもアリだと思います」


 最後に、ムビが口を開いた。


「俺は反対です。借金について計算してみましたが、S級の報酬は10億、固定給で月1億。借金の年利は450億なので、週一で依頼をこなしてようやくトントンです。ですが、現実的にはそんな規模の依頼はそうそう存在せず、他のS級冒険者を見ても年に数回、多くて月に一度がせいぜいというところです。借金返済には遠く及ばなそうです。リスクは大きいし、皆のアイドル活動に支障が出るのは、俺としても本意ではありません」

「そうですか。それならば、私も反対ですわ」


 サヨがムビに同調した。


「うーん。面白そうだと思うんだけどなぁ。でも、皆が反対なら、私も反対でいいかな」


 ユリも反対に切り替わり、話し合いの末『全員反対』という結論に至った。


「借金は別の返済手段を探すしかないね。今回は、お祭りを楽しく見守ろうか♪」

「すみません、それからもう一点、皆さんにお話があります」


 ムビが重々しく口を開いた。


「実は俺、徴兵される可能性が高いみたいで……」

「えっ!?どういうこと!?」

「栄誉騎士顕彰典で、王様から直々に最前線への徴兵を命じられてしまい……」


 酒場の空気が凍りついた。


「そんな……どうすれば……」

「とにかく、なんとか生き残って、必ず皆さんの元へ帰ってきます。それまで皆さんの活動をお手伝いできなくなりますが……」

「ムビ君不在って……。とても、回しきれないよ……」


 ムビの業務は膨大だった。

 毎日動画編集5本、セレスティア競技場の維持管理、グッズ制作、音楽制作、企画立案、広報活動……などなど、挙げたらキリがない。

 仮に穴埋めしようと思ったら、優秀なスタッフ100人は必要だろう。


「それよりも、ムビさんが無事に帰って来れるか……それだけが心配です」

「行ってみないと、何とも……。ただ、帝国軍は世界最強の軍隊ですからね。ここ数年クローディア王国も連戦連敗ですし……」


 重い空気が流れ、結局この日は何も解決策が浮ばないまま解散した。


 ---


 翌朝。

 ムビが自宅のポストを確認すると、一通の手紙が届いていた。


「なんだこれ……差出人は、王室……?」


 中身を開くと、それはリリスからの直筆の招待状だった。


 ---


 王宮よりのご招待状


 親愛なるムビ様へ


 風に揺れる薔薇の香りが、王宮の庭に春の訪れを告げております。

 この麗しき季節、貴方様の笑顔を王宮にて拝見できればと願い、筆を執りました。

 ぜひ、王宮にて、貴方様と語り合えればと存じます。

 ご都合のよろしき折に、どうぞお越しくださいませ。

 貴女の訪問を、心よりお待ち申し上げております。


 敬愛を込めて


 第六王女 リリス・クローディア


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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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