表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/204

第130話 指差す先に

 リリスが壇上に上がると、会場は拍手喝采に包まれた。

 先ほどの騒動は会場の隅で起きたため、王を含め多くの者は気づいていないようだった。

 リリスは拍手に応えるように、壇上で軽く一礼する。


「リリスは現在、専属冒険者パーティを持たぬ。皆も知っての通り、王族特務の冒険者パーティとは、Sランクパーティ———すなわち、Aランクを凌駕する実力者のみが選ばれる、冒険者の頂点である。だが、そんな存在は国中を探しても滅多に見つからぬ。選定は難航を極めると思われたが……嬉しいことに、相応しい者たちが現れた!」


 王が手を掲げると、会場に驚きの歓声が広がる。


「紹介しよう!『白銀の獅子』の諸君、前へ!」


 拍手が再び沸き起こり、ゼルは歓喜のあまり破顔した。


(ははは……向こうから転がり込んできやがった!)


 万雷の拍手の中、『白銀の獅子』の四人は壇上へ向かう。

 全身に受ける貴族たちからの祝福……ゼルにとっては至福の時間だった。

 少しでも長く味わえるよう、ゆっくりと壇上へ向かう。


 王とリリスが待つ壇上に上ると、拍手はさらに大きくなった。

 王は笑顔で手を差し伸べ、ゼルと握手を交わす。


「皆も知っておるじゃろう。『白銀の獅子』は、今最も勢いのある冒険者パーティじゃ!Aランククエスト10連続達成、全員が臨界者という構成、決闘では直近でAランクパーティに5連勝中!極めつけは『幽影鉱道』事件における禁忌指定モンスター『デスストーカー』の討伐!実績・実力ともに申し分ない!そして何より———彼らの人柄が素晴らしい!」


 王はゼルに視線を向け、満面の笑みを浮かべる。


「特にリーダーのゼル君は、若くして騎士道の鑑のような人物じゃ!その誠実さが評価され、彼らの一挙手一投足に多くの者が注目しておる!」


 ゼルは貴族たちの羨望の眼差しに包まれ、承認欲求の絶頂に達していた。


「これ程素晴らしい人材をなぜ放っておくことができようか?ゆえに余は直々に、王族特務冒険者として彼らを推薦する!なんなら勇者パーティとして、余の専属にしたいくらいじゃ!ワハハ!」


 王の高笑いとともに、会場は再び拍手の嵐に包まれる。

 ゼルは渾身のイケメンスマイルを浮かべていた。


「では、この場で契約の儀式を始めよう!『白銀の獅子』リーダー、ゼルよ!跪き、リリスの手に口付けをするのじゃ!」


 ゼルはこれまで生きてきた中で、最高のイケメンオーラを纏い、リリスの前で跪いた。


「王女、リリス様。この身、あなたの剣となり、永遠の忠誠を誓います」


 ゼルが口上を述べ、リリスの手を優しく引き寄せ———




 パシッ




 ———振り払われた。


「汚い手で触らないでください」


 会場は一瞬、静寂に包まれた。

 ざわめきが広がる。


「な、何をしておるのじゃリリス!?ゼル君に失礼ではないか!?」

「お父様。確かSランクパーティ就任には規定がありましたよね。王と王族、両者の承認が条件だと。私は、この方々を私のパーティとは認めません」


 王はリリスの言葉を聞いて狼狽えた。

 ゼルも、氷水を浴びせられたような顔をしている。


「な、何を言っておるのじゃ!?専属パーティは必ず付ける決まりになっておる!余は親心で、最高のパーティをと思って……!」

「最高のパーティ?彼らがですか……。お父様。彼ら程、疑惑に満ちたパーティは他にいませんよ?」

「疑惑じゃと?彼らの一体どこに疑惑がある?」

「私、彼らについて調べました。『幽影鉱道』事件以前、彼らのレベルはせいぜい40台。しかし事件直後、彼らは全員レベル100であると公表しました」

「それがどうしたのじゃ!?デスストーカーを討伐したのじゃ、レベル100に到達して当然じゃろう?」

「どうやって到達するのですか?デスストーカーは一体しかいないのに」


 えっ……と王は声を漏らした。


「どれだけ連携しようが、最後に討伐するのは一人。その一人が経験値を総取りする。ならば、誕生する臨界者は一人の筈です。残りの三人はどうやって臨界者になったのでしょう?」


 リリスは笑みを浮かべた。


「答えは、経験値ブーストです。推定価格数百億にも及ぶ莫大な財宝が『幽影鉱道』から消えています。彼らが持ち帰ったのでしょう。その資金を使えば、四人の臨界者を誕生させることが可能です。同じやり方で臨界者になられたお父様なら……分かりますよね?」


 経験値ブースト。

 王族や貴族が捕えた魔物を戦闘せずに殺し、経験値を得る手法。

 この会場にいるほとんどの者が、一度は経験している。

 そして国の王たるレオニスは、莫大な税金を使って臨界者となった。


(こいつ……なんで、そんなことまで知ってるんだ……!?勘の良いムビですら知らないはずなのに……!?)


 ゼルは驚きを通り越し、恐怖を感じていた。


「お前の言うことは、初めて聞くことばかりじゃ。とても納得できぬわい」

「お父様こそ、表層の情報を信じすぎです。いつも言っていますが、もう少し自分で調べ、考えるべきですよ」


 王は歯噛みする。


「ええい!では一体、誰が適任だと言うのじゃ!?これ以上の人材は、国中を探しても見つからんのだぞ!?」


 リリスは微笑みながら、ゆっくりと腕を上げる。


「いるではありませんか。臨界者なら、もう一人」


 リリスが指差す先を、会場中の人々が振り返る。

 そこには———肉料理で腹ごしらえをしている最中のムビがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ