第13話 『白銀の獅子』の野盗討伐戦2
「なっ……上級魔法だと!?お前ら一体……あっ!どこかで見た顔だと思ったら、お前ら『白銀の獅子』か!」
「ピンポ~ン、正解♪命運が尽きたのはそっちの方よ」
「く……くそっ!おいゴブリンオークども!こいつらをなんとかしろ!」
ゲロッグはアジトの奥の方へ逃げる。
ゴブリンオークがまたどこからともなく湧いてきて、リゼとゴリに襲い掛かってくる。
「あらら~逃げちゃったか。まぁ、ようやく戦闘らしくなってきたし、ゆっくり追いかけてあげるわ♪」
「おいおい、俺にも楽しませろよリゼ!……ふんっ!」
ゴリが斧に魔力を込めて振り回すと、衝撃波でゴブリンオーク達は吹き飛んだ。
「……くそっ!あんな化け物達が来るなんて!」
ゲロッグはアジトの奥へジリジリ追い詰められていた。
魔物を正確に操作するためには、自分もある程度の距離にいる必要があるので、戦闘を目視できて攻撃が届かないギリギリの位置から魔物を操る。
アジトにいるありったけのゴブリンオークを侵入者にけしかけているが、『白銀の獅子』の二人はものともせずどんどん近づいてくる。
……一見、ワシが追い詰められているようだが……しかし、あいつら馬鹿か?
あれだけ無駄に、魔力消費の大きい呪文や技ばかり使っていては、魔力が尽きるのも恐らく時間の問題だろうて。
ワシのゴブリンオークとお前らのMP、果たして最後まで持つのはどちらかな……?
リゼとゴリは大技を連発しながらゲロッグを追いかけていた。
「こいつらキリがねぇ!」
魔物は一撃で屠れるものの、アジトの奥から次から次に湧いてくる。
もう既に100匹以上は倒した筈だ。
「”灼熱の嵐”!」
リゼが上級魔法を使い、魔物の群れを一掃する。
……あれ……おかしいわね。
なんかちょっときつくなってきた……。
リゼは自分の息が乱れていることに気付く。
……普段は上級魔法を連発したくらいじゃ何ともないのに……。
……バカンス明けで疲れてるのかしら……。
「ゴリ、あたし今日調子悪いみたいで……残り、頼めるかしら?」
「……えぇっ!?……すまん、俺も調子が悪いみたいで、あんまり余裕が……」
「えっ!?あんたも!?」
ダメージも受けていないゴリが疲れるところなんて初めて見た。
今日はどうしたのだろうか、いつものように力が湧いてこない。
疲労で集中が乱れるばかりだ。
「”紅蓮の炎”!」
リゼは中級魔法に切り替えた。
ゴリも技を消耗の少ないものに変えている。
中級魔法では打ち漏らす敵も多くなり、結局魔法を連発する羽目になる。
「”紅蓮の炎”!”紅蓮の炎”!」
リゼとゴリは奮戦するが、次から次へと魔物は湧いてくる。
……やばい!本格的にきつくなってきた……!息が……
「ははは。やっぱり魔力切れを起こしかけてるじゃないか」
リゼとゴリはゲロッグを睨む。
先程まではるか後方にいたゲロッグが、前衛付近まで出てきていた。
「ワシの粘り勝ちだ」
「何言ってんのあんた……!」
これが魔力切れ?
そんなものは一度も起こしたことはない。
この私が魔力切れなんて起こす筈が……。
「リゼ、後ろ!」
リゼの背後からゴブリンオークが飛び掛かる。
ちっ、と舌打ちして、リゼが迎撃する。
「"紅蓮の"……」
瞬間、リゼは眩暈に襲われた。
呪文は発動せず、リゼはそのままゴブリンオークに押し倒された。
「離しなさいよ、こいつ……!」
リゼはゴブリンオークを振り解こうとするが、倒れたリゼに2匹目、3匹目と次々にゴブリンオークが群がり、手や足を抑え込み、徐々にリゼの体の自由を奪っていく。
「リゼ!」
ゴリが何とかリゼの助けに向かおうとするが、ゴブリンオークが次々と襲い掛かり、むしろリゼから距離が離れてしまう。
リゼは既に10体近いゴブリンオークに抑え込まれ、完全に身動きが取れなくなっていた。
くそっ……魔法を……!
上級魔法を放とうとするが、魔法が発動しない。
嘘っ……魔力切れ!?
1体のゴブリンオークがニタニタと笑い、リゼの衣服に手を掛ける。
「いやっ……やめっ……!」
ゴブリンオークは鋭い爪を立たせ、服を引き裂いた。
ゲロッグはリゼの近くまで寄って、その様子を眺める。
「ほほ~っ、良い眺めじゃのぉ~♪さっきまでの勢いはどうした、んん??」
「くそっ!このっ……あっ」
ゲロッグがリゼの頭を踏みつける。
「よっわいのぉ~お前♪敵陣の奥地で魔力切れとは、頭スカスカなんじゃないかな??んん??」
「ふざけんなざこっ!お前なんか一撃で……」
「活きがいいのぉ~♪お前をボコしたつっっよいワシ自らの手で、自慢の体を嬲ってしんぜよう♪」
ゲロッグはリゼに馬乗りになり、そのまま豊かな胸を鷲掴みした。
「いやっ!」
「どうじゃ、ワシは強かろう?ワシの強さを、その無駄にデカい胸に教え込んでやるぞ?」
「リゼっ!……くそっ!必ず助けに来る!待ってろ!」
ゴリは体力の限界に達し、逃げ出した。
「おやおや、仲間は見捨ててしまったか……」
ニチャァっと音を立て、ゲロッグが満足そうに笑う。
「……はぁっ……はぁっ…………殺すっ……!」
リゼは息も絶え絶えになりながら、ようやく言葉を振り絞った。
「おいおいwこの状態でそんなこと言われたらむしろご褒美だろう?w」
ゲロッグはリゼを見下ろしながら勝ち誇った笑みを浮かべる。
「魔力切れで苦しそうじゃのう?ワシの部屋でたっぷり看病してやるからな?うひひ……」
ゲロッグがパチンと指を鳴らす。
「その前に、お前のエロい体でゴブリンオークを少し楽しませてやってくれ。頼むぞ?」
ゴブリンオークがリゼに群がり始める。
「ま……まって……あっ!ああっ!ああああああああああっ!」
広間には、リゼの魔法を受け、息絶える寸前のゴブリンオークが転がっていた。
洞窟の奥からかすかに響いてくる、同胞の嬉しそうなキィキィという鳴き声と、女の苦悶の声を聞きながらニヤリと笑った。




