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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第128話 高嶺の花

 二人はバルコニーの下まで静かに戻ってきた。


「ムビ様、別々に戻りましょう。一緒だと、少し目立ってしまうかもしれません」

「そうだね、そうしようか」

「では、先にお戻りください。すぐに私も続きます」


 ムビは軽やかにバルコニーへ跳び上がり、グラスを手に会場へと戻った。

 煌びやかな音楽が響き渡る中、人々は楽しげに踊り、笑い合っていた。


 ムビは目立たないように元の席に戻った。

 どうやら、特に怪しまれてはいないようだ。


 数分後に、少女が会場に入ってくるのが見えた。

 そのまま、まっすぐこっちに向かってくるので、ムビは焦った。


「ふふ。どうやらバレていないようですね」

「いや、いいの?会場でも一緒に居て……」

「大丈夫です。周りからは、今お話ししているようにしか見えませんから。それより、お腹が空きました。ご飯食べましょ」


 ムビと少女は、料理を皿に盛り合わせて食べ始めた。

 周囲がダンスに熱中する中、二人は食事をしながら談笑した。


 さっきまで食欲の無かったムビだったが、少女と時間を共にしたおかげで、すっかり食欲が戻っていた。


 ──ヒソヒソ……

 ──ヒソヒソ……


 周囲の視線が徐々に集まり始めていることに、ムビは気づいた。

 少女は気にしていない様子だったが、ムビは少女のことが心配になった。


(俺なんかと一緒にいて、評判が落ちたら申し訳ない……)


「あの……アメリア、そろそろ別々になった方が……」

「あぁ、周りの目ですか?私は気にしないから大丈夫ですよ」


 少女はニコッと笑みを浮かべた。


「ところでムビ様。よろしければ、私と踊りませんか?」


 その言葉に、ムビは思わず料理を噴き出しそうになった。


「えっ!?いやいや、こういう社交の踊りは経験ないから……」

「でも、ムビ様にはモノマネ魔法があるでしょう?数分もあれば習得が可能だと思いますが」

「いやぁ……俺と踊ったら、君の評判が……」

「ふふ、心配してくれるんですね。優しいですね、ムビ様は」


 その時、一人のハンサムな青年が近付いてきた。


「こちらにいらしたのですね。お探ししておりました。私はアルベリック・ド・ヴァルモン――ヴァルモン公爵の長男にございます。この夜の一曲を、もし許されるなら、ご一緒に踊らせていただけますか」


 アルベリックは跪いて、少女に手を差し出す。


(公爵って……貴族の階級の中でもトップじゃん!やっぱりこの子、貴族の間でも有名なんだろうな……)


「あら、ちょうど良いところに。では、お願いします」


 少女はアルベリックの手を取り、ムビに視線を向けた。


「ムビ様。モノマネ魔法の準備、よろしくお願いしますね」


 そのまま二人は中央へと進み、踊り始めた。

 少女の美しさは群を抜いており、ハンサムな青年との舞踏は会場の視線を一身に集めていた。


「王よ、リリス王女が踊られております」


 家臣が王に話しかけた。


「おお、姿が見えないと思っていたが。一体どこへ行っていたのか」

「やはり、お美しいですね」

「当然だ。舞踏会ではいつも、最も注目を集めるからな。リリスを見に来ている貴族もいるくらいだ、ワハハ」

「お相手は、ヴァルモン公爵のご子息のようですな」

「なかなかお似合いじゃないか。だが、リリスの相手としてはまだまだ釣り合わんな。あの器量なら、帝国の王子でもなければ割に合わん」


『栄誉騎士』たちもリリスに目を奪われていた。


「おぉ、リリス様、やはりお美しい……」

「俺も、一応パーティの主役だし、踊りを申し込んでみようかな……」

「よせ、いくら『栄誉騎士』だろうと、お前では釣り合わんぞ」

「でも、こんな機会でもなければ、リリス様にお近づきになれるチャンスは無いぞ……」

「確かに……。よし、ダメ元でお誘いしてみるか」


 ゼルはリゼと踊りながら、リリスに視線を送っていた。


(あれがリリス王女……。『白銀の獅子』が仕えることになる主君……。天上の美しさだな。どれ、この後挨拶に向かうか。俺の器量なら踊りに誘うのが礼儀だろうか?惚れさせることができれば……王族入りも夢じゃない。ククク……)


 踊り始めてわずか数分で、リリスはパーティの中心となっていた。

 人々はその美しさと優雅さに、ため息を漏らす。


 様々な思惑が交わる中、ムビは料理を口に運びながら少女を応援していた。


(やっぱりすごく綺麗な子だな。物知りだし、剣術もすごいし、公爵家から求婚を申し込まれても全然不思議じゃない……。頑張っていい人見つけて、玉の輿になるんだよ……)


 ---


 踊りが終わり、少女はムビの元へと戻ってきた。

 ムビは正直、このまま少女が別のテーブルに行くと思っていたので、少し嬉しかった。


「コピーはできましたか?」

「うん……一応、できたけど」

「では、次は私と踊りましょう」


 少女は微笑みながら、ムビに手を差し伸べた。

 その瞬間、会場中の視線が二人に注がれた。


(なんだあの冴えない男!?なぜ、リリス王女と親しげに……!?)


「王よ。リリス王女は、もしや『栄誉騎士』の肩書だけで判断し、何も知らずに近付いているのでは……」

「そのようだ。全く、所詮はまだ16歳だな。人を見抜く力がまだまだ不足しておる」


「おい……あいつは、我ら『栄誉騎士』の面汚しじゃないか?」

「リリス王女はきっと『栄誉騎士』と踊るおつもりで、あいつに話しかけたのだろう。我らがはせ参じて、正しい認識を与えねば」


(なんでムビの野郎がリリス王女と親し気なんだ?……あの野郎、調子に乗りやがって!リリス王女と懇意になるのは俺だ!)

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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