表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第2章 『四星の絆』の夢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/208

第108話 貸せない理由

「えぇっ!?どういうことですか!?」

「それが……私にも分からないの!理由を聞いても、答えてくれなくて……!」

「俺も連絡してみます!」


 ムビはスマホを強く握りしめ、急いで電話を切った。


「どうしたの、ムビ君……?」

「エヴリンさんから連絡が……ルミノールアリーナが、貸せないって……!」

「えええっ!!?」


『四星の絆』のメンバー全員が、息を呑んで立ち上がる。


「どういうこと!?」

「すぐ確認してみます!」


 ムビは慌ててルミノールアリーナへ電話をかけた。


「……ダメです。時間外みたいで……。明日、もう一度かけてみます」

「だ……大丈夫、だよね……?」

「大丈夫です。ライブは必ず開催しますので……!」


 ---


 翌朝。ムビはいつもより早く出社し、開館直後のルミノールアリーナへ電話した。


「はい、ルミノールアリーナです」

「私、ルナプロダクションのムビと申します。『四星の絆』のライブについてご連絡しました」


 一瞬の沈黙の後——声のトーンが凍りつく。


「ああ、ルナプロダクションですね。昨日お伝えした通り、当アリーナはお貸しできません」

「そ、そんな……!一体なぜですか!?」

「申し訳ありません。検討の結果、決定いたしました」

「検討って……!予約は一ヶ月以上前に済ませていたんですよ!?」

「しつこいですね。失礼します」

「まっ、待ってくだ——」


 プッ……


 ツー……ツー……


 電話は無情にも切られた。


 くそっ……!一体どうなってるんだ……!


「ムビ君……どうだったの?」


 エヴリンが不安な表情で尋ねる。


「ダメでした。直接ルミノールアリーナへ行ってきます!」


 その言葉と同時に、ムビは駆け出していた。


 ---


「お願いします!どうか、アリーナを使用させてください!」

「しつこいですねぇ。無理なものは無理なんです」


 ムビは粘り強く交渉を続けた。

 しかし、何を言っても冷たくあしらわれるだけだった。


「せめて、理由だけでも教えてください……!」

「何度も言ってますよね?検討の結果です」


 ムビは嘘探知魔法を発動しながら会話を続けていた。

 色々な質問をするが、一向に全容が見えない。


「外部からの圧力ですか?」

「だから違うって。検討の結果だって言ってるでしょう」


 ———嘘。


「……もしかして、『エヴァンジェリン』からの……?」


 沈黙。職員は、深くため息をついた。


「いいかい。ここだけの話だよ。うちだってほんとは貸してやりたいよ。あんたら一体、何したんだ?この世界で生きていくのに、『エヴァンジェリン』に目を付けられたらおしまいなんだよ。今後は身の振り方を考えるんだな」


 アリーナ職員は部屋を出て行こうとする。


「待ってください!お願いします……!」


 職員の目つきが鋭くなる。


「あのな?うちだって、『エヴァンジェリン』にはかなりお世話になってるんだ。その『エヴァンジェリン』に盾突いて、あんたらと同じようになれっていうのか?冗談じゃない!あんた、責任取れんのか!?……話は以上だ。お帰り願おうか」


 ---


 その日、ムビはトボトボと会社へ戻った。


「ムビ君……どうだった?」


『四星の絆』とエヴリンがムビの帰りを待っていた。


「……ごめんなさい。駄目でした。『エヴァンジェリン』の圧力です」


 冷や汗が、皆の頬を伝う。


「いくら何でも、ここまでするなんて……」

「エヴリンさん、どうしましょう……?」

「『エヴァンジェリン』の圧力なら、ルミノールアリーナはもう厳しいわね……。他の会場を探すしかないわね」

「……そうですね。俺もそう思います。今からでも、他の会場をあたってみます」


 ---


 その日一日、ムビは全国の会場に電話をかけ続けた。

 だが、返事はどこも同じだった。


「すみませんが、そちらのグループにはお貸しできません」


 理由を尋ねても、答えは返ってこない。


「ムビ君……どうだった?」


 ずっと隣に座っていたユリが、小さく囁く。


「ダメでした……ごめん」


「ううん、ムビ君が謝ることないよ。ありがとう」


 ---


 翌日、ムビは朝から晩まで電話をかけた。

 ルミノールから遠く離れた小さなホールも、大規模なドームも——すべて断られた。


 あきらめるな……。 必ず、どこか会場がある筈だ……。


 翌日も、ムビは朝から晩まで電話を続ける。

 翌日も。その翌日も。


 それでも、会場は見つからなかった。


 もう……国中のありとあらゆる施設、1件残らず全部連絡したぞ……。


 ムビは頭を抱えた。

 こんなことがあり得ていいのか。


 ひょっとして、これが今後ずっと続くのか?

 まさか……『四星の絆』は、もうステージに立てない……?


 その瞬間、ムビの脳裏に『四星の絆』と過ごした日々が蘇った。


 レッスンで流した汗。

 夢を語り合った夜。

 そしてダメな自分を拾ってくれた皆の笑顔。


「……もう、ここしかない」


 ムビが最後に選んだ連絡先は———『エヴァンジェリングループ』だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ