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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第2章 『四星の絆』の夢

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第101話 癒しの香り

 ムビは紹介されたBLの本を読んでいた。

 正直、一切興味がない。

 男子学生同士の恋愛がテーマの本だった。

 現実の男性心情とのギャップに、ムビは読めば読むほど引いてしまう。


 うわぁ・・・なんでこんな展開に・・・。


「・・・どうですか?」


 シノがおずおずと感想を尋ねる。


「・・・いや、面白いですね!この・・・なんていうか・・・一生懸命なところが良いですよね!」


 シノの表情がぱぁっと明るくなる。


「本当ですか!?そうですよね!ムビさんなら分かってくれると思いました!」

「いやぁ・・・まぁ・・・ははは」

「ムビさんに布教できて良かったです」


 シノは機嫌を取り戻したようで、ムビも安心した。


「良かったら、何冊かお貸ししましょうか?」

「・・・そ・・・そうですね、今度、また時間があるときに・・・」




 その後、ムビとシノはモーニングルーティーン動画の打ち合わせに入った。


「目覚めの瞬間は大体ヤラセなので、一回起きてからカメラを設置して、起床シーンを撮影すればOKです」

「えっ、あれってヤラセなんですか?」

「まぁ、殆どはそうですね」


 シノは少し考える。


「私、できればヤラセなしで撮影したいです」

「それなら、一晩カメラを回しておきましょうか。ちょっとベッドに寝ていただいてもいいですか」


 シノはベッドで横になる。

 ムビはカメラを設置し、ベストな画角を探す。


「この画角でカメラを設置しておきますね。寝る前に、電源を入れておいてください。あとは、歯磨きや洗顔、朝食のシーンですね。お化粧のシーンもあれば、女性ファンが喜んでくれると思います」


 シノに実際の動きを想定してもらいながら、ベストな画角にカメラを数台設置する。


「これでよし。あとは、全部電源を入れて、今想定した動きをしていただければOKです」

「ありがとうございます、ムビさん」


 シノがぺこりと頭を下げる。

 時刻は21時を過ぎていた。


「それじゃあ明日もあるので、僕はそろそろ帰りますね。遅くまで、ありがとうございました」

「あの、ムビさん」


 シノがムビを呼び止める。


「やっぱりちょっと不安というか。私、血圧が低くて、朝が弱くて。寝ぼけてミスをしそうな気がして。もしよろしければ、撮影の現場に居ていただけないでしょうか」

「あぁ、確かに・・・。分かりました。それでは、明日の朝にまたお伺いしますね」

「いえ、朝わざわざ来ていただくのも申し訳ないので・・・。良かったら、泊っていきませんか?」

「えっ」


 ムビはドキッとした。


 女子の家に上がるのも初めてなのに、お泊りなんてそんな・・・。


「お願いします。これからただでさえ時間がないのに、撮り直しになったら申し訳なくて・・・。ムビさんがいてくださったら心強いです」


 そう言われたら、なんとか力になりたくなる。


「分かりました。すみません、ご迷惑をおかけしますが・・・」

「いえいえ。私から言い出したことですから」




 シノはお風呂にお湯を溜め始めた。

 その間、ムビとシノはココアを飲んでまったり雑談をした。

 穏やかな時間が過ぎていく。


「そろそろお風呂が溜まる頃ですね。ムビさん、お入りください」

「いえいえ!シノさんから入っていいですよ」

「いえ、私長いので。私が先だとお風呂が冷めちゃいますから。ムビさんお先にどうぞ」


 しばらく押し問答が続いたが、結局ムビからお風呂に入ることになった。

 ムビは服を脱いで浴室に入る。


 うわぁ、なんだかいい匂いがする。

 お湯に何か入れてあるみたい。


 浴室は水垢一つなく、ピカピカだった。

 きっと日頃から、シノが掃除をしているのだろう。


 シャンプーもボディソープも、凄くいい香りがする。

 なんだかとても癒される。


 湯船に入ると、湯加減も丁度良く、極楽そのものだった。


 はぁ~~~気持ちいい。

 シノさんにも温かいままお風呂に入って欲しいな。

 100数えたら上がろう。


 ムビは15分程で浴室から出た。


「すみません、上がりました~」

「あれっ、もうですか。ムビさん、早いですね」

「いえいえ、いつもこんなもんです」


 風呂から出るとき、魔法で少しお湯を加熱しておいた。

 一番風呂並みのあったかいお風呂になっているだろう。


「私、お風呂長いので、もし眠くなったら先に寝ててくださいね」


 そう言って、シノは浴室へ向かった。


 ムビはドライヤーで髪を乾かし、日課の『Mtube』視聴を始めた。

 流行の動画や音楽を1時間程漁っていると、シノがお風呂から上がってきた。


「ムビさん、起きてらっしゃいましたか」


 お風呂上がりのシノは卵のように肌がつるつるになっていた。

 シャンプーのいい匂いで部屋が満たされる。

 パジャマに着替えており、とても可愛らしかった。


「ええ。いつもこの時間は『Mtube』を見ているので」

「そうなんですね。あっ、お客さん用の歯ブラシもあるので、良かったら使ってください」


 ムビとシノは、パソコンの前で一緒に歯を磨きながら『Mtube』の動画を見た。

 動画を見ながら、隣でシノが笑ったり驚いたりしている。

 至れり尽くせりというか、シノの家は癒しで満ちていて、なんだかとても落ち着く。


 歯磨きが終わり、ひとしきり一緒に動画を見たところで、時刻は23時を回っていた。


「そろそろ寝ましょうか。ムビさん、ベッドをお使いください」

「ええっ!そんな、僕は居間の方で寝ますよ?」

「いえいえ、お客様を床で寝させるわけには」

「でもほら、明日モーニングルーティーンの撮影もありますし、シノさんがベッドで寝た方が」

「確かに・・・。それもそうですね。すみませんムビさん、ベッドで寝させていただきます」


 シノは申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。


「それじゃあ、おやすみなさい」

「はい。おやすみなさい」


 シノは寝室の方へ向かった。


 ムビは電気を消し、居間に敷いてある布団に包まる。


 シノさんのお家、とっても居心地良いなぁ。

 なんだかすごく癒されちゃった。

 今日はぐっすり眠れそうだ。


 15分程して、ムビはウトウトし始めた。

 そろそろ眠りに落ちそうだな、と思っていた時。


 キィ、とドアの開く音が聞こえた。

 寝室からシノさんが出てきたようだ。

 トイレだろうか。


「あの・・・ムビさん、起きてますか?」


 ムビはすぐさま目を覚ます。


「はい、起きてますよ」


 真っ暗で、シノの姿は見えない。

 暗闇の向こうから、シノの声が聞こえてきた。


「本当に申し訳ないのですが・・・今晩、私と一緒に寝ていただけないでしょうか?」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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