加茂櫻は、諦めない。
俺の人生の分岐点ともとれる加茂櫻からの告白から一日がたち、クラスの雰囲気はざわざわと騒がしかった。
実際、あれは罰ゲームなわけで、人生の分岐点を担ってもらうには荷が重すぎる。
「はぁ、俺も彼女ほしいな……。」
俺は男子高校生であれば絶対に一言はいうセリフを口にした。
ただそれだけのことだったが、騒々しいこの空間はさらに騒々しさを増した。
「おい、あいつ加茂さんの告白断っといてなんてこと言うんだ。」
「加茂さんも一緒のクラスにいるのにサイテー」
「あんな奴のどこを好きになったの加茂さん」
「山本キュン♡おいどんが付き合ってあげるでごわす」
「告白されたからって調子乗ってんじゃないの?」
朝からこのざまである。
俺の一挙手一投足にクラス全員が俺への攻撃材料を粗探ししている。
いや待て、一人変なの混じってなかったか?
まあいいか。当の加茂本人は、告白が失敗したこと、それを見られていたこと、今この現状の俺への申し訳なさからいろいろな感情が渦巻いている腹痛いときみたいな顔をしている。
「うわ、あいつ加茂さんのことみてるよ」
「落ち込んでる加茂さん見て悦に浸ってるとかサイテー」
「山本キュン♡のまなざしにじぇらしぃでござる」
「告白されたからって調子のてんじゃないの?」
いや、絶対やばい奴いるなこれ!!早く退散しよう
SNSコメント欄風刺のような教室の空気感にいたたまれなくなった俺は、廊下へ逃げ出したのだった。