加茂櫻は、諦めない。
「好きです!付き合ってください」
それが、嘘だとわかっているが意外と嫌な気はしなかった。
眉目秀麗、文武両道、温厚篤実。
世の中にある、誉め言葉は彼女に向けているのではないかと思うほどの付け入るスキがない超人的な女子高校生、加茂櫻。
「いや、金なら持ってないぞ。友達がいないが、親が厳しくてな。」
そう、そんな彼女が俺に告白をする道理はないのである。
たぶん親とかが病気とかでお金が入用なのだろう。親思いでいい子だな。
「え!?なんでお金の話?あ、交際費の話……かな?私全部払うから大丈夫だよ!好きな人には尽くしたくなるっていうか……なんていうか……」
もじもじと顔を赤くして彼女はそう答えた。本当に金銭面の話ではなかったのか。
と、なるとだ……残る可能性はただ一つ。
「悪かった、加茂さんにこんなことさせてしまって。友達とか人質に取られたんだろ?」
キョトンとする彼女に俺は小声でつづけた。
「いやだから、罰ゲームはこれくらいでいいからお互い早く帰ろうよ。後ろの人たちもちゃんと見てるみたいだし。」
というと、俺は足早に下校した。
ただ、悟られていたことに驚きを隠せずぽかんとしている彼女だけが、校舎裏に突っ立っているだけだった。