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狂犬いえいえ、忠犬ですよ。  作者: sirosugi


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22 地味な人ほど、強くて厄介なものです。前編

 日常生活編。最強パパとママが御登場

 強者というのは似てくるもので、何かを極めた人間というのは、おバカななものです。えっ、私なんてまだまだですよと、フェイラルド・テスタロッサですごきげんよう。 

 スバル殿下の側近も無事に決まり、即位も結婚もほぼ確定、妃教育もより本格化した今日この頃。メイナ様は一層忙しい日々を過ごされています。内容が濃くなっていく日々の学業もそうですが、スバル殿下のパートナーとして、行事に参加するために、王城へ通う日々。この移動時間も馬鹿になりません。

 いっそ、王城、あるいは王都にあるフェルグラント家の別邸に移り住むという案もありましたが、メイナ様は、それを固辞して、生家であるフェルグラント城で過ごされています。

 しっかりしていてもまだメイナ様は10歳。まだ両親から離れるのは寂しいですし、慣れ親しんだ人と離れて生活するのは嫌だ。そんな可愛らしいわがままをおっしゃられたときの我々の喜びとときめきと言ったら、言葉にできるものではありませんわ。

「ふわああああ。」

 朝食を食べながら、大きなあくび。リラックスしたお嬢様を見れるのは、まだまだ、ご家族と我々の特権です。

「あらあら、メイナ、口元が汚れてるわよ。」

「むぐ、母様、自分で。」

「奥様、ここは私が。」

 そんな忙しい中だからこそ、奥様とお館様、メイナ様の御家族がそろっての朝食の時間は大事にされています。奥様は自分の隣にメイナ様を座らせ、食事の間もアレコレとお世話をしたがります。

 そうなると私たちには給仕以外にすることがなく、微笑ましくも見守るしかないわけです。

「フェイも一緒に座って食べればいいじゃない。」

「そういわけにはいきません。」

 あと、私も同列に扱われようとするのは、いただけません。侍女長の目もちょっと怖いですし。

「あのー、俺も混ぜてくれない。」

「旦那様は、お早くお済ませください。仕事が控えております。」

「うご、俺の扱いが雑。」

 対面のテーブルでは、執事長によって朝食を流し込まれる旦那様の姿、最近のフェルグラント家では珍しい、平和な朝の一幕でございます。


 フェルグラント家のお役目は、魔境と言われる場所から人類の生活圏を守ることにあります。かつて魔王と呼ばれる存在が、勇者によって打倒された地。そこは魔王が消えたあとも色濃く魔力が残り、魔物と呼ばれる存在を生み出し続けています。魔物に知性はなく、は本能や独自の修正に従って行動しているため、魔境から出てくることはほとんどありません。しかし、その力は強大で、一体でも人類の生活圏に侵入を許せば、その被害は甚大となります。

 ゆえにフェルグラント家の広い領土は、積み重ねてきた功績であると同時に、人類の生活圏を守る防衛線となっているわけです。

 お館様。ゴルド・フェルグランド辺境伯閣下は、その防衛を担う人類の最大戦力です。王国の開祖であり、魔王を討ち滅ぼした初代王にして勇者が使っていたという勇剣術のすべてを体得した史上二人目の剣士にして、王国最強という言葉はお館様のためにあります。

 一部で剣術バカとも言われているそうですが、別にバカではありません。

「これ、俺が行った方が早くない。」

「だめです、この程度の討伐ならば巡回中の兵士で充分に対処可能です。」

 やや正義感が強いノウキンというだけですわ。多少の雑務なら自分で片付けたほうが早い。そう考えて自ら動こうとされる姿勢は立派ですが、トップが一々動いていては、組織は成り立ちません。

 執務室で落ち着いて仕事をすることが苦手ですが、逃げ出すとか飛び出すということはなく、執事長をはじめ臣下の言葉を受け入れる度量もある御人なのです。

「お父様・・・。」

 だから、メイナ様、そんなどうしようもない大人を見る目で見ないであげてください。

「お嬢様、お館様はあれでいいんですわ。」

 本日は、領地運営の仕事を学ぶという名目で、お館様のお仕事を見学されているメイナ様に付き添わせていただいています。執務室に特別に用意されたテーブルに座りながら、執務に励むお館様の仕事について、執事長からそれとなく説明を受ける。

 最終決定権をもつ為政者の仕事の多くは承認であります。税率や兵士の配置、各地から届いた陳情や裁判結果など、様々な書類を確認し、サインをする。そう言った単純なものでございます。勝手にやれと言いたくなる内容も多いそうですが、行動や治世に責任を取ることも仕事であるのですが。

 優れた為政者は、自分で何かを定めるのではなく、信用できる人間に任せるものだそうです。特にフェルグラント家に仕える人間は優秀で、勤勉で善良です。収支を誤魔化して私腹を肥やしたり、仕事を適当にすることが、結果として自分たちの生活を脅かすことにつながることを理解しているので不正をするものなどいません。

「はあ、どうせなら、もっと派手な討伐でもあればいいのに。正直平和過ぎだ。

「親方様・・。」「お父様。」

 愚痴を言いつつも手を止めないのは立派ですが、なんとも地味で情けない。ただこれも為政者の姿だそうです。領主や王、上に立つ人間の生活は、派手で華やかな一面もあれば、このように地味で静かな一面もあるわけであります。婚約者の前でかっこつけるために、派手めな仕事ばかりをしているスバル殿下はまだまだ未熟なのですわ。

「うん、ちゃんとわかってる。でも。」

 そのあたりの機微をメイナ様はきちんと理解されています。

「お父様、書類にはしっかりと目を通されるべきだと思います。」

「ぐっ。」

 おやおや、お館様の信頼と言う名の手抜きは見抜かれてしまったようです。

「くうう、今すぐにでも魔物を、父親の威厳を。」

「フェルグラント家の当主の言葉ではありませんな。」

 うーんと渋面になる執事長様。

 メイナ様の前でかっこいいところを見せたいというお気持ちは分かります、流石に不謹慎です。

 ここ数年で、フェルグラント家の武力は、発展しています。並大抵の相手ならば、私や、兵士さん達で対処は可能です。

 親方様が出陣しないとならないような事態になったら、それこそ一大事ですからね。

「いやいや、冗談だ。冗談だぞ。」

 その場にいる全員からの視線に慌てて言い訳をする親方様。もちろん本気でないことは全員わかっておりますわ。

「た、大変です。魔境から砂塵が、オーガの群れがこちらに移動しているとの報告が。」

 と、そこで急報を告げる使者が執務室に飛び込んできたのは、偶然ですわ。

「「「お館様・・・。」」」」

「お父様。」

 かといって、お館様をかばえる空気にはなりません。


ゴルド「はじめてメインっぽい話なのに、扱いが・・・。」

フェイ「ファイトですわ、お館様。」

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