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狂犬いえいえ、忠犬ですよ。  作者: sirosugi


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1 外での茶会の前には虫対策が大事です。

 有能な侍女さんの優雅な一日のお嬢様溺愛の日々。になるといいなー

 大陸最大の王国「フィアット」

 魔王を倒した勇者によって建国された王国は、魔法と騎士の力によって500年の繁栄をつづけ、この先500年も繁栄するだと言われている大国でございます。

 その根拠は勇王と呼ばれる現ファムアット王と、それを支える辺境伯家「フェルグランド家」の実力でございます。東の3分の1を占めるフェルグランド領はその領土の半分が魔物の蔓延る深い森で、かつては魔国と呼ばれた荒野とつながっています。

 フェルグランド家はそんな魔境から迷い込んできた魔物の脅威から王国を守る盾であり、未開の地を見開く剣でもあり、代々の当主様と領民が一丸となってお役目を務めているのです。

 そして、当代のフェルグランド夫婦は歴代でも最強と呼ばれています。

 ゴルド・フェルグランド様は、王族の流れを汲む尊きお方であり。初代王の使ったと言われる勇剣術の使い手で、剣を持たせれば切れぬものはないと呼ばれる戦の天才であられます。奥方のアリア・フェルグランド様は古の魔法を蘇らせた賢者と名高い才媛でございます。勇猛と名高きフェルグランド家の中でもお二人の実力は抜きんでており、お館様たちが現役ならば王国は魔国へと勢力を広げられるのではないかとも言われているのです。

 まあ、お二人を含め、王家の人々や高貴なる人々がそんな浅慮はなさいません。そんな愚かなことを言うのは、物の通りと現実を知らないおバカさん達ですわ。

 ただまあ、そんな雑音と暴走を防ぐために、フェルグランド家とファムアット王家は常に強いつながりを持つことが求めれます。

 御年の近い王太子様(お坊ちゃん)と、我らが姫君、レグナ・フェルグランド様の間に縁が持たれるのも致し方ないことなのでございます。

「致し方ないのです。」

 大事なことに声に出して言いましょう。ちゃんと、人の前で。

「うわ。相変わらず失礼。」

「申し訳ありません、殿下。フェイ!」

 私の代わりに相手に詫びを入れて、私を窘めるお嬢様。

「お嬢様・・・こんな状況でも相手を思う、そのお慈悲。私、感動で涙がでそうです。」

「いや、まったく泣いてないでしょ。」

 それは侍女ですから。そしてお嬢様はこの世に舞い降りた天使、いや女神様です。

 高級な陶器を思わせるつるつるの肌に、夜の星空のごとく光沢を放つ黒い髪と、理知的な瞳。芸術品のようなカンバセのお顔とともに、すらりとした手足。大人向けのシックな色合いなのにフリル満載なドレスを着こなす姿は幼いながらになんともいえない色気を盛っていて、目をそらすといなくなってしまうのではないかと不安になってしまいます。いや、私がお嬢様から意識をそらすことなんてありえませんけれど。

 そして、10歳でありながら、この状況を正しく理解する知性とお相手をかばう慈悲深さ。

 だというのに・・・。

「まったく、本来ならば、城ごとなます切りにして差し上げるべきなのに・・・。」

「言い方。それにその後が面倒でしょ。」

 おっとそれは確かに、あまりに無様なやらかしに私としたことが気が高ぶっていようです。

「はあ、レグナ。この度はこちらの不手際で不快な思いをさせて申し訳ない。」

 うんうん、悪い事をしたらまずは謝罪、そして次に備える。王太子様(お坊ちゃん)ながら最低限のことが分かっているのはポイントが高いですね、0.001ポイントぐらい評価を高めましょう。

「スバル様・・・、今回の件で殿下が責任を感じることはありません。あくまで悪いのは・・・。」

「しかしながら、婚約者とのお茶会という場面に少々手抜きが過ぎるのはいかがだと。」

「フェイ・・・。」

 いえいえ、致し方ないというのは事実なのでこちらに落ち度はないですわよ。お嬢様。そんな怖い顔をされないでください、冤罪でも自分の首を切り落としたくなってしまうじゃないですか。

 

 ねえ、アナタも思いますよね、羽虫さん。


 致し方なく婚約関係にある王太子様(お坊ちゃん)と、我らが姫君、レグナ・フェルグランド様はまだ幼いですが、5年ほど前に婚約されてから仲睦まじく、何かと理由をつけては交流をされています。今回はお館様である父君ゴルド様のも代理として定時報告のために王城を訪ねたレグナ様をねぎらうために、スバル様が張り切ってお茶会の席を用意してくださいました。

 季節の花々に各地の銘菓。座り心地のよい椅子とテーブルが用意された東屋は非常に素晴らしいものです。王城にはいくつも庭園がありますが、スバル様は張り切って用意をし、花やお菓子について熱心に手紙に書かれ、自ら何度も手入れをされたそうです。

 少々勢いが余っておりますが、婚約者をもてなすために張り切る様子に、レグナ様も微笑まれていました。が、準備に夢中になった結果、少々警備がおろそかになってしまったようで。

「ふん、田舎娘がのこのこと王城に来るなんて、みのほ。」

 先に庭園に案内されたレグナ様がスバル様を待っている、わずか数分。その間に良くしゃべる羽虫さんが中庭に乗り込んで、汚い羽音を奏でられたんです。

 えっ、羽虫さんはどうしたって?関節を外して、喉を潰してそこに寝転がっていますわ。もちろん、芝生が乱れないように、近くにいた仲間の羽虫さんのマントをはぎ取って敷物にしてあるから心配はいりませんわ。

「な、なんだこれは。」

 遅れてやってきたスバル様とお付きの人達が顔を真っ青にして声を荒げますが、そんなことよりもレグナ様の給仕が先でしょうに。全く気が利かない。

 ささっとお茶を用意して、レグナ様とスバル様に給仕する。その間フリーズしているお付きの人達は減点です。

「ワーグナ侯爵令嬢、なぜここに?」

 お茶の用意が整いレグナ様にお茶の手前をほめられたあたりで、やっと再起動したスバル様が羽虫の名前をおっしゃられたようですが、なるほど侯爵令嬢でしたか。

「どうりで品がない羽音でしたわ。」

 貴族階級では上から二つ目、トップたる王族を含めれば3番目。本来ならば公務や夜会など以外で王族と接触が許されることのないお立場の羽虫さんです。

「ひゅーひゅー。」

 あらあら何かを訴えているようですが、しゃべれませんよねー。話を聞くなら、横でガタガタ震えているお付きの騎士もどきに聞いた方がいいですよ。

「も、申し訳ありません、令嬢に手荒なことができずこのように。ぐは。」

 マイナス30点。人の所為にしている上に、そもそも殺気を隠せてない。

「フェイ。尋問ができないから。」

 そんなもの必要でしょうか。しかし主の命令ならばしかたありません。

「えい。」

 軽く羽虫さんを蹴り上げればその手からコロコロと落ちるのは怪しげな小瓶。厳重に封がしてありますが、割れやすいので投げつけて中の薬品を相手に浴びせるという暗器の類です。

「「「なっ」」」

 少なくともその場にいた全員が驚きで声を上げるぐらいは。あっレグナ様は気にせずお茶をされています、全知全能なお嬢様とそれにお仕えする私には気配ですぐにわかりましたけど。

「そして、そこの騎士様は王城内で帯剣は許可されておりませんよね。規格外の模造品、どこでみつけられたのかしら?」

 ガタガタと震える騎士もどきの頭の上に、ビンを置いてあげると大人しくなりました。おやおやなかなかの薬品のようですねー。

「で、この不始末、どうつけられるんですか?」

 侯爵令嬢ごとき羽虫が紛れ込めるようなお茶会なんてものを企画した責任はどうとっていただけるのでしょうか。

 慌てて羽虫と騎士もどきを片付けるように命令をだすスバル様。その対応の遅さにイラっとして、その首をへし折りたくなります。

「じーーー。」

 ですが、他でもないお嬢様が見ているので私はそっと後ろに控えます。

 そうして先ほどの会話となったわけです。


 おっと申し遅れました、私はフェイラルド・テスタロッサ。取るに足らない、いやこれは不敬ですね。恐れ多くもレグナ・フェルグランドお嬢様の侍女を務めさせていただいております。


 メイドさんによる主人溺愛と圧倒的な武力無双なお話です。

 別作品と並行して、できれば連日、遅くても3日と開けずな更新を目指しますので、もしよかったらお付き合いください。

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