潜影
俺は、ある日を境に『影』に潜れるようになった。
それに気づいたのは、殺しをしてしまい、警察から逃げているときのことだった。
それからというもの、俺は欲望のままに進み続けた。
強盗、殺人、窃盗、やれることは何でもやった。
その日々はスリル満点で最高に楽しかった。
いままでのどんなことよりも楽しく感じてしまった。
そんな、イカれたことに楽しみを見出していたからだろうか。
やはり天罰というものは下るものだな。
まず徐々に何をしても楽しくなくなってしまった。
いままで楽しかったこと、新しいこと。何をしても楽しくない。
そして、気持ちが常に沈む。
何時でもどんなときも心が沈んでぼーっとするときも増えた。
だから、『影』に潜ることも減った。
ある日、ふと『影』のことを思い出し、久しぶりに潜った。
息がしやすい。気持ちがいい。
こんなふうに感じるのは久しぶりだった。
ただ、何かがおかしい。
気づいたときには、取り返しの付かないほど沈んでいた。上がり方すら思い出せない。
何か無いかと腕や足を振り続ける。ただ何にも触れることはなく、気づいたときには何も見えず、これが絶望か。なんてことも思ったりした。
ただ俺は1つの答えにたどり着いた。
やはりこれは天罰だったんだ、と。
これまで俺が殺してきた人たちの俺に対する復讐なんだ、と。
そう思うと、俺は仕方なく思えてきた。
そして、今更これまでの罪を噛みしめるようにゆっくりと落ちていく時間を数え続けた。