チェックメイトって言いたい!
チェックメイト――チェスにおける王手詰みのことであり、転じて勝負事の決着がついたという勝利宣言としても用いられる。
そして、これが重要なのだけれど、数々のアニメやマンガの中で、かっこいい主人公たちが最高の見せ場で放ってきた決め台詞でもある。
「チェックメイト! ……って言いたいんだ、僕は!」
積年の願いをぶちまけた僕だったが、しかしクラスメイトたちの視線は冷たい。くそう、高校生ともなるとこういうことは理解されないか。所詮は孤高の道よ……。
と、かっこつけてもこの衝動は収まらないので一旦学校を飛び出す。僕は帰宅部なので誰が引き留めてくることもない。
キィィッ
「あっぶねぇだろ、おいっ!」
「あっはははぁ、ごめんなさぁい!」
危ない危ない。校門前の道路でトラックに撥ねられそうになって運転手さんに怒鳴られてしまった。ちょっと気持ちがはやりすぎて視野が狭くなっていたようだ。だが、そんなことの反省で時間を浪費するほど僕は暇じゃない、ごめんよ運転手さん。
さて……あっ!
「やめるんだっ、困っているじゃないか!」
「ぁんだぁ!? てめぇっ!」
不良に絡まれている気の弱そうな学生を発見! この不良を叩きのめして、とどめの一撃を見舞う直前にチェックメ――
「ふっざけんなこのヒョロガリがぁっ!」
「ぁっ! がっ! く!」
くそう……、僕はケンカとかしたことないし、運動だって苦手なんだった。一方的に叩きのめされてしまった……。絡まれていた学生もいなくなっているし。
あっ、あっちなら……!
「おじいさん、一手どうですか?」
「おぉ、学生さん! えぇよう、そこに座んなぁ」
ふふ……、公園のベンチでマグネット将棋盤を出していたおじいさんと対局だ。チェスではないけど将棋もボードゲーム。一番王道のチェックメ――
「ほい、王手。詰みじゃろ?」
「……ぁ」
いやこれ将棋だよ、チェスじゃないからどうせ言えても王手だよ。意味ないから負けてあげたよ! わざとね! わ・ざ・と!
もうこの辺にいい感じのチェックメイトチャンスは見当たらない……っ! まだ部活動中だろうから、一旦学校に戻ってみるか。何だかんだとクラスメイトならある程度相手もしてくれるしな……。
よし! そうと決まれば善は急げ。チェックメイトにチェックするためにあの校門へ……
キィィィィッ
「あ、チェックメイト」