3話
目覚ましが鳴る。4時だ。まだ眠たいが、釣りのためなので仕方ない。
昨日押し入れから出しておいた釣り道具たちと共にマンションの一室をでて、玄関付近の道路で橋田を待つ。橋田の車はは4時半を少し過ぎた頃にきた。
「遅いぞ」
「悪い悪い」悪びれる様子はない。
車を走らせ、釣り場に着いたのは5時半だった。橋田いわく、日の出の前後1時間が釣りのゴールデンタイムらしく、そのために早起きしたのだった。
やはり釣りに適した時間だからなのか、最初は順調だったし、釣りの経験がない僕もそこそこ釣ることができた。しかしそれも長くは続かず、昼御飯を食べる頃には魚の気配すら感じなくなっていた。
「全然釣れなくなったな」行きに寄ったコンビニで買ったサンドイッチを食べながら橋田が言った。
「そうだな」梅おにぎりを食べながら答える。
「暇潰しに面白い話してやろうか?」
「是非お願いしたい」次はおかかに手を伸ばす。
「昨日会社にスマホ忘れたんだけどな」
「取りに戻ったときに輸送の車が駐車場に無かったんだよ」
輸送の車というのは、普段ウォーターサーバーを運ぶのに使う車だろう。外装に大きく入っている社のロゴを僕は密かに気に入っている。
「確かに少し気になるな」
その車を使うのはウォーターサーバー設置係である僕と橋田の2人だけだった。
「今度部長に聞いてみたらいいんじゃないか?」
「そうしようかなー」橋田が答えた。
その後僕たちはこれ以上は釣れない、と釣りを諦めて橋田の家に帰ってきた。
夕方、釣った魚を橋田が調理してくれたが、なかなか美味しく、今度自分でもやってみようと思った。