依頼*1
暗い暗い影を落とす路地裏を息を荒らげて駆け回る一人の少年ーー
「はぁはぁ……っうぅはぁはぁ……ダメだ、ダメだダメだダメだダメだ」
「知っては……知っちゃいけなかったんだ……こんなことに……はぁはぁ……こんなことになるなんて死っていれば.......!」
少年の後ろを追いかける黒いロングコートに身を包み仮面を被った謎の集団
猫達は今日もゴミ箱の上で踊りゆくーーーー
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「なーんかさ。今日もまた人混みに人が多くねー?」
「当たり前だろ都会に人が多いのは。それに人混みに人が多いとは言い方がおかしい。去ね」
軽口を叩く緑色の髪をした黒いタンクトップの少年と口元まで隠したロングコートに身を包む少女。
季節感真逆の服装に身を包んだ2人は、真夏のデパートのエスカレーターで今現在絶賛移動中だ。
「とゆーかさー、いくらあのおっさんの呼び出しにしてもよー」
「こーんな人の多いデパートの最上階で待ち合わせってそんなのありかー?」
「うるさい。ゆー通りに動けばいい。まだ余計なこと言ってるのか」
「はいはい。ノアさんは仕事熱心なことで大変ご立派ですよぉーーーー」
エスカレーターを上りきった先、若者向けのカジュアルな服屋が見えてくる。
「あぁ良く来たね、随分待ちわびた。人が多くて道に迷ってしまうくらい少し君たちには都会が過ぎたかな?」
"てんちょー"ときらきらなラメ入りのピンクな文字で書かれた名札をした男が話しかけてくる。
金髪に派手なピアス、歳は40代といったところか。
「人混みにまだ慣れてないのはコイツだけ。私はもう慣れてるのにコイツのせいで遅れた」
「まーぁ、そんなことだろうと思ったよ。そうなると"君たち"ではなく"君だけ"と言った方が正しかったかな?」
「うるせぇ!大体こんな所に呼び出して何の用だよ?織田のおっさん」
「ラネア、君は口の利き方がなっていないようだね。君が生意気な可愛げのあるクソガキってことは重々承知しているが……」
「私の今の心は君に長々と待たされた上に存在している。まだまだ生意気っ子だななんて今は笑って見過ごしてやれる保証はないよ?」
落ち着いた声色からドスの効いた声、緑髪の少年ラネアも少し怖気付く。
「遅くは……なった。でもよ……おっさん仕事してる最中だから……そ、そんなには持て余したりしてない筈だぜ!」
「確かに今現在私は仕事の真っ只中だ。君が来るまでに私は今月のおすすめを5着は売ったし、隣のお店のマダムと一緒に『お皿で暴れるプルプルプリン』までも捌いてみせた」
「店全体の売上としてはもっと売っている。しかしだねそれとこれとは別さラネア」
「私は君が来なかったせいで仕方なく売ることに時間を使ったんだ。本来であればこの時間は君たちに対する委託時間として使おうと考えていた。分かるよね?」
「それは……」
「これ以上ラネアに絡むだけ時間がもったいない。織田早く用件を話して」
織田は肩を下げて息を吐く。
「あぁ……そうだね。用件を話そう」
「次のイベントの事なんだが……」