表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の雨音  作者: 白秋笑
鬼のイベント
10/37

鬼の戦後処理

 ここは薄暗い会議室。目の前にサーフボードの様な形の机を囲む様にして大人達が座っている。奇抜な格好をした大人達が。


「いや〜にしても今回も大成功だったッスねー。佐藤サン」


「そうさね。なんたってあたしらが鬼だからね。普段から鬼のようだなんって言われてるあたしらが。がははははははは」


「須藤サンもそう思うッスよねー?」


「はぁ……」


 全く。何が大成功なのやら。お前達は大抵のイベントはどんな結果になろうが大成功だといつも言っていることでしょうに。


「あの2人は相変わらずサボりの様ですし」


 いや。それはもういい。あの2人はイベントの最中からサボりだったのだ。それにあの2人が指示通り仕事をすることなんて数える程しかないだろう。問題はそれよりも……


「それよりも何故招集をかけた本人自体がいないんですかねぇ……」


「自分はプレイヤーにイベント終了のメールを送って終わりですか。そうですか」


 今回の鬼ごっこのイベントを始めたのも、私達にこうして鬼役をすることを命じ今現在招集をかけたのもあの方……いわゆる私達の上司だ。その上司が何故居ない。


「いえ!メールを送って仕事オシマイじゃないと思うッス!他にもヤルコト一杯あるハズッス!」


「そんなことは分かっています。先程の発言は皮肉です」


 私の大きなストレスの要因1人目、この全身包帯グルグル巻きの男『瀬尾』。元々放浪をしていたりニートをしていたりフラフラと生きていたところ何でここに来たのかは知らないが新しく入って来た新人。確か歳は26歳だったはず。


「それよりも何故あなたはそんなにも包帯だらけなのかお聞きしたいのですが」


「イヤ〜実は鬼の着ぐるみを着ながら車を運転してたら、壁にぶつけチャッタんッスよ〜」


「そういうことを聞きたいのではありません。何故そんな所でそんなことをしていたのか聞きたいのです」


「私はくれぐれも目立ち過ぎないようにと言うことを再三お伝えして来ましたよね?」


「いやぁだって鬼役ッスよ!やるなら目立ちタイッス!」


「服だってテンション上がって鬼にナリキルべく自作したッス!」


「お!やっぱりアンタもかい!あたしも夜なべして作ったんだよ!」


「おぉ〜!佐藤サンもッスか〜!やっぱテンションぶち上がるッスよね!!」


 はぁ……。私のストレスの要因2人目『佐藤』。イベントに対して熱心なのは良いが、どこか張り切る方向が違うというか……馬が合わないというか……。それに普段からうるさすぎる。大体私は大人しく生きていたいのだ。こんなにも明るい人間とは元々上手くいく筈もない……。


「それにしても2人とも目立ち過ぎです」


「ネットでは、事故があった、おかしな格好の人物が街を爆走していた、不審な着ぐるみの人物を見た、大声を上げながら若者を追いかけ回している人がいたーーーー」


「など目撃情報が沢山上がっています。ただでさえ最近ではメディアで取り上げられることも多く、警察の動きも活発です。少しは自重してもらわないと……」


 瀬尾と佐藤はコソコソと話し出す。


「そんなこと言っても須藤サンだって相当目立ってたッスよね」


「かなりウワサになってたッス。十字架のヘンタイがイルって」


「どうやら本人には変態の自覚がないようだねぇ」


 何を話しているのかは知らないが2人には本当に困ったものである。それに今回のイベントにしたってそうだ。参加者の中に気付いてる人間がいるかどうかは知らないが、逃げ切った者達全員が参加していた訳では無い。それについて尋ねても『そういう人達も必要さ。色んな人達のデータが欲しいからね』等とあの方は仰る。魔女にしてもそうだ。魔女を全てのイベントに配置したり、なんなら()()()()()()()()()()()()()()()。このイベントに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。


「そうそうこれ預かってたんだよ。次のイベントの場所だって。これが今回の会議の目的みたいさね」


 全くこの人は……。預かっていたならすぐに出してくれていたら良かった物を。そうしたらすぐに会議なんて終わっていたじゃないか。もういい。とっととこんな会議終わらせて帰ろう。


「はぁ……。では確かに受け取りました。それではこの会議はこれでお終いです。では。」


 そういって須藤は部屋から出ていく。残された2人は顔を見合わせて話し出す。


「なんで須藤サンってこの仕事してるんッスかね?」


「お祭り騒ぎみたいなのがスキじゃないと運営側なんてトテモ向いてないと思うンッスけど」


「まぁ色々あるんじゃないかい?この運営には様々な理由で集まった色んな奴らがいるからねぇ」


「何も仕事が全てじゃない人達もいるのさ」


「いや須藤サンは完全に仕事って感じでヤッテル人ダト思うッスけど……」


「それより……」


「それよりなんで須藤サンはさっき、上はくたびれたスーツだったのに下はオムツ一丁だったんッスか?」


「それがヤツの仕事姿さ。なんでもトイレに行く時間も惜しいらしいさね」


「多分須藤サンがこの中で1番の天然サンッスよね……」


 時刻は朝の4時を回る。今日もまた足元が少しスースーするような爽やかな朝が来るのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ