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第85話 酒造場、道中にて……

「う〜む……。もう少しで目的地のはずなのじゃが……」

「もしかして、道を間違えたんすか?」

「妾は知らぬぞ? 言い出しっぺの恥でも良かろう。クリム」

「こりゃいかんな、レヌス」

「ほんと仲の良い夫婦なんすね……」


 みんなと別れた俺とレヌスは、クリムの案内で酒造場に向かっていた。さっきから、うっすらとした麦酒(ビール)の匂いが、鼻をくすぐっているけれど、酒造場は見えてこない。

 一体どこにあるのやら。道中感じた、微かなアルコールに混じる鉄サビ。多分、このアルコール成分が、廃工場の鉄筋をサビつかせているのだろう。

 歩けば歩くほど、双方の匂いがキツくなる。というより、酒の匂いが強すぎて、だんだん頭がクラクラしてきた。

 きっとこれが、(くだん)の〈レイベル酒〉なのでは? 俺は一人妄想を始めてしまう。そして酒に弱いらしい。


「……で、酒造場はまだなんすか?」

「アレン殿。そのことなのじゃが……。我も……」

「?」

「ようわからん」


 なるほど。って。


「わからんのかーい‼」

「クリム、アレン、茶番はやめてくれんかね。うっとうしいわ……。妾にそこまでしばかれたいか?」


 ――シューン……。


 急に空間が寒くなった。しょうもない、ボケ――クリムはそのはずではないと思うけど――とツッコミ。どうしてこうなった。

 俺の仲間は変わり者が多いのか。それとも俺の捉え方が悪いのか。加えて、口調にクセがある人も多い感じもする。

 特にフィレンは、上手く発音できないからか『さん』が『しゃん』になってるし、語尾『りょん』でめちゃくちゃ可愛い。



 ******



 ――「レノンしゃんアイドルりょん?」

 ――『うん、そうだよ。名前は……』

 ――「フィレンなんだりょん。現在アイドル育成中なんだりょん‼ 優秀でおすすめなのは、チェリスりょんね。キレッキレですごいりょん‼」

 ――「ちょっと、フィレンったら何人材派遣してるのよ? アタシは却下するわ」



 ******



 別行動をする前に聞いた会話。どう考えても、アイドルオタクに見えてしまう。実際は、もっとアイドルに詳しいかもしれない。ダンスも詳しいだろうし。

 もう一人を挙げると、やっぱり俺の彼女のルグア。彼女はほんと変わっている。周波数上げたりして追い込んで、生死の境界線を壊しすぎだ。

 それに俺を助けて……。


『おーい、アレン聞こえてるか? 酒造場向かっているんだよな?』

「ルグアさん‼ 何で突然通信魔法を?」

『んなこと聞く前に、酒造場のオーナーが怒ってるぞ‼ 通話だから先導できないが、私ができる範囲で案内してやる‼』

「いいんですか? なら、あざっす‼ 団長ぉ‼」


 タイミングバッチリの助け舟。俺はルグアの案内で、スムーズに目的地へ辿り着く。酒の匂いが(ただよ)う工場の、酒造場のオーナーを探すところから開始。

 それと同時に、更生剤研究のカウントダウンが始まっていたとは……。この時は彼女(ルグア)しかわからなかった。

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