第79話 十七層にて
「これでもう大丈夫ね。アレン‼ ちょっといいかしら?」
「ちょっとって、なんすか?」
「まあ、いいから来なさい」
「りょ、了解しやした……」
工業オイルの馴染みない臭い。錆び付いた鉄筋、ひび割れたコンクリートや建築物。ここは第十七層。フロア設定は廃工場か? 足の踏み場がない壊れた吊り橋。
チェリスのところに向かうため、俺はグラグラと不安定な道を進む。下を見れば、地面を視認できないほどの高さ。恐怖で震えて足止めを食らう。
「早くしろ。後ろが詰まっている」
「そそ、そんなのわ、わかって……」
「無理なら全員運ぶ。背中に乗れ、あと1時間経てば、この橋は壊れる」
「ここっえー?」
「ニワトリしゃんみたいだりょん」
何気ないフィレンのツッコミ。後ろから突っ込んでくる、緑狼・風魔。翼がないため落下するが、突風と共に浮上。チェリス以外のメンバーを乗せて、向こう岸に運ぶ。
「よしじゃあ、クエスト終わらせるわよ」
「チェリス、クエストって……」
「討伐クエストよ。この階層には装備も豊富。価値の保証はするわ」
と言ってる間にも、集まるのは小型エネミー。機械音やモーター音、軋むような甲高い音が耳をつんざく。クエスト攻略。思えば、ゲームというゲームをしていない。
廃工場を歩く。しばらくして見えてくる少女。キョロキョロと辺りを見回して、誰かを探して……。
『あ、いたいた‼ アレンさん、チェリスさん、クリムさんも‼ はじめまして‼』
「だ、誰?」
唐突な切り出し。理解が難しい展開。全く意味がわからない。はじめましてなのに、名前知ってるってどゆこと? 少女は脇にノートを挟み、全力疾走で俺達の方へ。
「改めまして、作者のディガルです。ペンネーム変えましたけど。ガデルでログインしています」
「ま、マジっすか……」
(作者ほんとに来ちゃったよぉー。どうするん。ヤバいじゃん。物語終わる‼ 終わるって‼)
「大丈夫ですよ。ちょっと興奮しすぎだと思います。ここからは私も同行するので……」
同行すると言っているが、危ういに違いない。あくまでも、作者は神の存在。これなんでもありの状態になってしまう。絶対にログアウトした方がいいと思う。しかし、
「実は、ノーマルアカウントなので、ログアウト不可能なんですよね。マスターアカウントなら、自由に出入りできるけど……」
「ガデルったら何やってんのよ。こうしているのもあれね。さっさと敵を片付けましょ」
いつの間にか、1000体近くまで増えた、小型メカエネミー。ロボットダンスが可愛いが、倒さなければクエストも終わらない。
どうなっても知らない。どこまで行けるのだろうかと、俺は心配で仕方なかった。




