第71話 マロネの用件
「それで、マロネだったかしら? アタシを殺しに来たんでしょうね?」
きらめく鋭い眼光。チェリスのパワーボールが、一直線に桃髪の少女に投げられる。
「ブッブー。今回の目的は~。フィレン君なんだよねぇ~。どこにいるのか教えてちょ?」
クリオネのようなマロネ。時に優しく可愛い子ぶったオーラを放ち。時に、狂気の悪夢を生み出す。
ウェンドラとは別の破壊力がある。それゆえ、俺はマロネに嫌悪感を抱いていた。
このままでは、チェリスまで失うかもしれない。心配性にもなったのだろうか?
やるせない気持ちでいっぱいだ。どうにかして守らなければ。いくらユニークスキルやら、システム外スキルやらを持っているとはいえ、力量不足なのは承知している。
「そそ、それで、フィレンになんの用があるんすか?」
言葉に詰まりながらも、俺はマロネに問いかける。
「あのねぇ~。ルグアから頼まれたことがあってぇ~。毒のことなんだけど♡」
「アイライの毒が、どうしたりょん? もしかして、欲しいりょんか?」
「話が早いよーん♡ あの子専用のがあるって聞いたけどぉ~」
せ、専用あるんすか……。団長……。ルグアのことが、わかるようでわからない。いつも悩んでる。考えないようにはしているけど……。
『ああ……。そのことか……。フィレン‼ 準備できているんだよな? 追加注文で5倍濃縮‼』
「承りました‼ なんだりょん♡」
まるで、常連客のようなルグアのセリフ。5倍濃縮ってどゆこと? 毒を濃縮するわけ?
『そうだが……』
ほんと、俺の彼女は何を考えているのやら……。濃縮って、猛毒じゃん。ってか、なんでそうなる?!
ツッコミを入れるのも、体力を消費するのに、ツッコミどころの多さは、かなりキツい。
「思えば、ここ第十五層でしたっけ? 地形的にはどんな感じなんすか? 会話が楽しすぎて……」
たしかに、どういう場所なのかを忘れていた。話に夢中で細い道と大きな川しか、視覚情報として入ってこない。
地形を完璧に覚えられないので、知らない道なら、もっとわからない。登下校も同じ道しか通らないし。
「教えてもらっても……」
――ポチャン……。
「これって、水が跳ねる音っすか? なんか……。怖いんですけど……」
ホラーめいた高音。お化け屋敷は大嫌い。小さく縮こまる俺を、周りのみんなが嘲笑う。
『お前、こんなんでビビるんかよ? 弱っちいなぁ〜。それでも男か? 安心しろ、ここは下水道だからさ。幽霊なんか出てこねぇよ‼』
ゆゆ、幽霊⁉ ルグアの発言で、余計に恐怖を植え付けられる。それは敵味方も関係なく、視線が一点に集まっていく。
そう、怯える幼稚園児となった俺を……。




