第69話 アイドル活動始動⁉
――ワン‼ トゥー‼ スリー……。
ルグアに道を教わりながら、第十五層を移動中、聞き覚えのある声質の、軽快なカウントが耳に入ってくる。
――アルしゃん、振りを間違えているりょん‼ もっと……。あ、クリムしゃんも、腕の方向が逆りょん‼
「アレン。この声、フィレンじゃない?」
「そうっすね……」
「ちょっと、なにデクレッシェンドかけてんのよ?」
だって、予想つくんだもん。このまま合流したら、チェリスが不満を持つ会話が出てくるって……。
当の本人は気づいていないらしく、スタスタとクリム達の場所へ歩いていく。高確率で怒り狂うことが起こるのに……。
それは現実になる。チェリスの、
「ただいま。なにやら楽しそうね」
という言葉を皮切りに……。
「あ‼ アレンしゃんとチェリスしゃん。おかえりりょん‼ 早速、チェリスしゃんはレッスンするりょん‼」
「れ、レッスンですって⁉ 嫌に決まってるじゃない。アタシはきゃっ……」
拒否しようと嫌がるチェリス。だが、フィレンは彼女の手首を掴み、無理やり引きづり込む。
俺は、駄々をこねる女性を眺めつつ、男性陣に紛れて座る。
『大変なことになったな……。チェリスが可哀想でならない……。フィレンも張り切るのは、なんとも言えないが……』
「ですよね……。ルグア達の方は、どんな感じなんすか?」
やっぱり、ルナやルクス。ガロンや他メンバーのことが知りたい。しかし、ルグアからの返答は戻ってこなかった。
曰く、俺達の状況を把握できても、第五十層の情報が入らないようで、風に聴いても意味が無いんだとか……。
『下層のことしかわかんねぇから、不満なんだよなぁ~。って、言ってもわかんねぇか……』
「いや、ま、まぁ~、なんとなく……」
助け舟を出そうにも、出航せずに沈没してしまう。ちょうどいいセリフが、浮かばなかったのだから。
目の前で繰り広げられているのは、フィレン先生による、ダンスの熱血指導。
「ふぃ、フィレン? そ、その……。こ、こう……かしら?」
腰を振りながら、綺麗にターンを決めて、流れるように波を作るチェリス。駄々をこねた姿は、いったいどこへ行ったのか……。
三人の中で一番キレキレだ。
「チェリスしゃん。嫌がる割には、筋がいいりょんね……。華やかで可愛いりょん。これなら、ファンもメロメロなんだりょん‼」
「は、恥ずかしいじゃない……。そ、そこまで……きれい?」
「綺麗りょん‼ センターはチェリスで決まりだりょん‼」
フィレン先生……。多分、一目惚れしている可能性が高い……。チェリスに……。
ほぼ強制で始まった、女性三人――クリムは絶対違うが――のアイドル活動。今後の飛躍。乞うご期待‼
「いや、ジャンル違うから……。ゲーム攻略してないじゃん‼」
『……だな』




