第56話 沼地の知り合い
「なんか、前進んでなくね? ってか、雷夜。なぜここに連れてきたんすか‼」
いつの間にか、身動きが取れなくなっていた、俺と他四人。クリムは飛んでいるので、計算していない。
「現在進行形で沈んでいますからね……」
小声で補足をするアルス。どうしてこうなったのかというと……。
◇◇◇十分前◇◇◇
「アレン。クリム。チェリス。アルス。ふうにい‼ こっちこっち‼」
雷夜に連れられ、やってきたのは巨大な沼。雷夜が言うには、ここに知り合いがいるとのこと。
「フィレン‼ 起きてる?」
名前なのだろうか? 雷夜が叫ぶが、返答無し。ぞろぞろと沼に入って、フィレンを待っても、何も起こらない。
「やっぱり、昼間だから寝てるのかなぁ~? フィレン、夜型だし……。」
「おい、そういう問題でいいんすか⁉ 沈んでんだけど‼」
そして、現在に至る。
◇◇◇◇◇◇
「フィレン起きてよぉ~‼ 友達呼んできたからさぁ~。ね♡ ね♡」
『う、んうぅ……。もう少し寝かせてりょん……。まだ起きる時間じゃないりょん……』
「うわっ‼ 語尾『りょん』って可愛い……」
いやいや、そうじゃなくて。ほんとに可愛いから言ったけど。どこまで沈むんだよ⁉ もう腰が消えてるんだけど‼ 底なし沼⁈
真下から聞こえる声に黄色い声を上げながら、ふんぞり返って全身が埋もれた。自業自得ならぬ、自業自損。もがけばもがくほど、泥をかぶる。
――むにゅ……。
なにかに触れた気味の悪い感覚。背中を押されて、山なりに波打ち始めた。
『誰りょん? アイライに触ったの誰なんだりょん‼』
ひょっこり顔を覗かせる蛇。これがフィレンさん? 思っていたのと違う。
語尾が可愛いから、姿も可愛いと思っていたけど、完全に威嚇したアオダイショウじゃん‼
『ん? アイライになにか言ったかりょん? アイライはアオダイショウじゃないりょんよ?』
「えっ⁈ 違うの⁉ イメージ的にはアオダイショウなんだけど、違うの? じゃあ、何?」
思わずフィレンに問いかける。
『ヌママムシだりょん‼ 毒には自信あるりょんねぇ~。噛んだりしないりょんから、安心するりょん♡』
語尾が可愛いすぎて、内容が入ってこない。ヌママムシって出血毒を持ってるんだっけ?
『その通りだりょん‼ あと、人に戻るりょん‼』
戻るパターンあるのか……。どうでもいいので、ショートカット。フィレンの髪型もショートカット。短縮と短髪。
またメンバーが増えた。旅は道連れとはこんな感じなのかな? うずまきほっぺが印象的な新入りに、メロメロ状態の俺。
「アイライって、あなたのことっすか?」
「そうだりょん♡」
フィレンは、きっとボスではないので、雑談をしながら移動を再開した。




