第51話 2色の瞳
夜が深い時間。辺りが完全なる暗闇の中で、戦いはまだ続いていた。
「風魔さん。いつまでやるんすか?」
「特に考えていない……」
よろけながらも剣を振るアレン。それを眺めて判断に悩む風魔。演者と監督のようにも見て取れる。
「だんだん、めんどくさくなってきた……」
アレンは、少しでも早く終わらせたいと、苦言を漏らすが、剣舞を途切れさせることはない。彼が持つ剣を強化するという、ノルマを課せられているのだから。
強化すれば、強くなる。そんなことは、誰でもわかる。けれども、全ての場所で可能とは限らない。
「オマエ、本気で認めてもらう意思はあるのか?」
ツンと尖った風魔の指摘。アレンが戦っているのは間違いないが、意識が右往左往と定まっていない。よろけた時点で、一目瞭然。
「強化したいのは、俺の希望だけど……。もう……」
「本気で戦いたいなら、剣の能力を最大限活かせ‼ それができないやつは、一生戦場に立つな‼」
暴風が解き放たれたような怒号。心が折れてしまいそうなセリフが、アレン目掛けて牙を剥く。
「……。で、でも」
今の彼に、覇気は感じられない。ほんとは本気で戦いたい。
剣本来の力を使いたいが、過去2回のトラウマが錠となり、引き出すのを拒んでいた。
普通に戦うことはできる。できるのに、たった一つの恐怖があるのだ。
「終わりだな……。まだ認めるには、実力が若すぎだ。未熟者に、そいつは似合わない」
風魔が、仕事を終えたかのように立ち去った、その時。フィールド全てを赤く染め、火炎地獄に変貌を始めていく。
見れば、アレンから怒り狂った勢いで、炎が暴走をしていた。それは、剣の怒りではなく、彼自身の怒り。
「本気で……、なんすよね。ちょっと怖い。でも、恐怖のどん底は居心地が悪い……。さっき気づいたけど……、俺は戦士失格でいいっすよ。
ただの凡人。ましてや、下民でもあながち間違えではない俺に、戦う権利はない。けど、俺には救いたい人がいる。だから戦う。戦っている。
見くびってばっかじゃ、何も始まらないっすよね。風魔さんのおかげで、思い知らされました」
意思の強さは、鋼鉄ように硬いアレン。心は折れても、願いをブレさせない力は、この上ないと言える。
「まだやるのか? 諦めは早い方が……。ん? その瞳。オマエ、まさか⁈」
風魔が目にしたものは、片目を赤く光らせる、アレンの瞳だった。
〈2色の瞳〉。両目の色が違うという現象。理由はわからない。でも、今起こっているのは、嘘偽りのない真実。
「最初からすればいいものを……。オマエは剣に認められた。強化する」
やがて炎は鎮まり、新芽が顔を出した。




