第2話 ギルド勧誘
※2022年3月07日 加筆微修正
※ 〃 年3月20日 修正版描写反映
※ 〃 年5月05日 句読点修正
『あっ‼ そこのお兄さんどうですか?』
この発言が誰に向けての言葉なのか、イマイチわからない。誰かに向かって走りだす少女。髪型はボブヘアで、ライトブラウンという明るい印象。
誰に向かって駆けているのかわからないけど、一直線に走り寄ってくる。
俺は横目でコクリと頭を下げて、完全スルーで通りすぎる。しかしその方向は完全に俺のいる場所で、急接近からの第一声はというと、
「あなたのことです! どうですか? ギルド【アーサーラウンダー】のメンバーを、募集しているんですけど……」
どうやら俺のことだったようだ。どうしよう……。入ろうか……。拒否するか……。
今までギルドと言えるギルドに入れなかったため、あまり期待はしていない。
入っても誰も手伝ってくれなかったし、「クエスト行こう」と誘っても誰も来てくれなかった。
そのような理由で、俺は友達も少なく遊び相手もいない一人っ子。学校ではいつもボッチ枠で、イケメンなのにあまりモテない。
そもそも自分でイケメンと言っていいのだろうか? それもなんか違う気がする。
『おーい‼ ガロン‼ 調子はどうだ?』
「モードレさん‼ お疲れ様です‼ 今、ちょうどいい人を見つけたところです‼」
モードレ? って誰? モードレだから、モードレッド……。円卓の騎士じゃん‼ アーサー王伝説の‼ でも、モードレよりアグラヴェイン派なんだよね~。
ってアーサーってそういうこと? なんか強そうなギルドに誘われてしまった。VRMMOには不慣れな俺でもいいのだろうか?
足手まといになっても知らないよ? それよりも、この男性(?)は誰なのだろうか? 気付かぬうちに俺の目の前に立っており、平然としている。
身長は俺と同じくらいで、顔立ちも男性っぽいけど、もしかして? っていう場合もありそうな気がするし……。まだ自己紹介してない……これからするのか……。
「ん、あ。えーと、攻略ギルド【アーサーラウンダー】団長のルグアだ。君が、ガロンがスカウトした人だよな?」
「は、はい……。でも、さっき『モードレさん』って呼ばれていた気が……」
「ああ、あれか……。まあ、肩書きみたいなやつだ。気にする必要は無い」
それなら納得できる。このギルドは面白そうだ。俺はルグアという人物に興味が出てきた。
性別は聞いてみない限りよく分からない見た目だけど、いろいろ知りたくなってくる。きっとこの人は強いんだろうなぁ。ステータスも高いはず。
メンバーも優しいだろうし。俺的にはピッタリかもしれない。 VRMMOで遊んだ経験者ではあるけど、そこまで戦闘は上手くない俺。
自分で言うのもあれだけど、伸び代だけはあると思う。武器で戦うよりも道具で戦いたい。いや、武器も一応道具か……。
街人A『あれ、あの〈WWM〉事件を解決したルグアじゃない?』
街人B『そういえば、今日スペシャルゲストが参戦するとか何とか言ってなかったっけ?』
〈WWM〉事件とは、今から六年前に起こったVRMMO事件のことだ。全世界の裏世界を舞台としたゲームで、プレイ人数は9000万人超え。
しかし何者かによって暗号化され、現実世界で15時間。ゲーム世界で500年もの時間を過ごすことになったらしい。
そこで活躍したのが、この【アーサーラウンダー】と、このルグアという人物らしく。架空の話だと思っていたが、現実に存在したのかと思うと少し怖い。
「その、【アーサーラウンダー】? ってギルド。俺、入りたくなった。期待してないけど……」
「よし! んじゃ決まりだな!! ガロン帰るぞ!」
「了解です。モードレさん!」
っていうかこのルグアって人、フレンドリーすぎね? こんな盛り上げて積極的で、しかも団長だろ?!
相当わっしょい祭りのギルドなんだろうなぁ……。きっと楽しいはず。ワクワクが止まらない。デスゲームというのも忘れ、胸を躍らせ飛び跳ねる。
ルグアとガロンの案内で【アーサーラウンダー】の拠点へ。相手の名前はだいたい覚えたけど、俺自己紹介してなくね⁉
拠点はギルドとはまた違う、三階建ての住宅。その中は、想像を遥かに超えていた。