第2-76話 相変わらずルグアが強すぎる件について……
◇シュトラウトを出発して10分後◇
「ななな、なんすかこれは‼」
「デザートウルフに囲まれちゃったね」
「囲まれちゃったどころじゃないっすよ団長‼」
「アレンやる? 返したい物もあるし」
「返したいもの?」
「〈スカーレット・ブレード〉。クリムに預けてたんだって? 別に良かったのに……」
いやいや、クリムに預けてなかったら絶対盗まれてたって‼ でも、なんでなんだろ? 未来予知? ナイナイナイ。
けど、ちゃんと受け取ってくれたんだ……。ルグア団長ほんと優しいなぁ。だから、大好きなんだけど。早く婚姻届出したい。
「私が使ったから、その分風魔に頼んで重くしてもらってるけど……」
「重いの好きっすよね……」
「はい。これ。例の。潰れないようにねっ‼」
うわっめっちゃ笑顔で渡されているんだけど‼ どれくらい重いんだろう?
「ざっと平均体重の成人男性五人分」
「ヤバッ‼ それを片手ってことっすよね?」
「そうだけど?」
「ヤバッ‼ ヤババヤバッ‼」
「おーい壊れてっぞー」
「団長すんません……。あと口調戻っていやす」
「どうしてもアレンの前だとね……」
「じゃ、じゃあ、剣は受け取っておきま……」
――グゴォ⁉
「あーあ、潰れちゃった」
いやいや重すぎるんだけど。成人男性五人分なんだよね? そりゃ潰れるわ。俺そんなに腕力強くないし。
それに心なしか柄の温度が上がってる気がする。握れなくはないけど……。
〖ルグア殿‼ 待つがよい〗
「クリムなんで?」
〖いくらか前に、アルス殿からも預かっていてのう。それをアレン殿にと思ったんじゃよ〗
「俺にっすか?」
〖名前は自分で決めるが良い。水を司る武具じゃ。貴殿なら使いこなせるじゃろ?〗
神出鬼没のクリム。小さな龍の身体で、龍の彫刻が入った剣を咥えている。色は藍色。水が流れるエフェクト付きだ。
名前を付けるとしたら、やっぱり〝アルス〟って付けたい。〈スカーレット・ブレード〉も初期名は〈クリムゾン・ブレード〉。
名付けるなら……。
「アルス・グレイソードで」
〖アルス・グレイソードでいいんじゃな?〗
「それでお願いしやす‼」
名前が決まった。俺は〈スカーレット・ブレード〉をルグアに返して、クリムから剣を受け取る。
まるで実体がないかのような感触。清らかな水の肌触りに違和感があるが、たしかにそこには剣がある。
「それじゃあ。アレン素振りしてみてよ」
「そうっすね」
俺は素早く剣で薙ぐ。水切り音につられて、刀身が鋭く変化した。
次は切れ味。水はダイヤモンドも真っ二つにする威力があるが、それを完全再現しているのか、近くの敵を一網打尽にしてみせる。
「すごい……。ほんとにこれ俺がもらっても?」
「ほらつべこべ言わずに切り抜けるよ。ロムさんとメルフィナさんは体力温存で。ここは私とアレンに任せて」
「了解しやした‼」
〖では、我は先に帰還しようかのう。みなの活躍期待しとるぞ〗
「クリムさんあざっす‼」
◇◇◇数分後◇◇◇
「団長減らなくないっすか?」
「だね。私の予想だと、あと5万体かな?」
「ご、5万……」
「一瞬で片付けられるけど、どーする?」
「い、いや。結構っす……」
一瞬の隙もなく集結するデザートウルフ。切り込み穴を作っても、瞬き一つで埋めて行く。
こちらとて暇ではない。ルグア団長もそう思っているに違いない。
俺はもらったばかりの〈アルス・グレイソード〉を振るい。ルグアに負けじと接戦を繰り広げる。
別に討伐数で競っていないけど、これが思いのほか楽しい。それよりも今使ってる剣、めちゃくちゃ強いし扱いやすい。
「考えてみたら、私まだ2色の瞳見たことないんだよね……」
「それって『やれ』ってことっすか?」
「絶対じゃなくていいよ。興味本位だから」
「別にいいっすけど……。この武器の場合どうなるかもチェックしたいし……」
(属性何にしよ)
俺は迷う。迷っているうちに、ホワリと炎が頭をよぎった。火属性を使えということなのだろうか?
俺は〈アルス・グレイソード〉に炎のイメージを送る。初めての武器で成功するかは不明だけど、半分無意識に乗り移る。
自分では目の色の変化に気づけない。なのに、ルグアは釘付けだった。きっと成功したのだろう。
「こんな感じっすかね……」
「相当コツ掴んだみたいだね。私が『強くなってる』って言ったのは、それのことだから」
「なるほど‼ 団長残りの後処理は俺がやってもいいっすか?」
「やる気満々だね。ちゃんと体力の方も考えてるなら良し。こっちの世界じゃリアルとほぼ感覚変わらないから」
「そうなんすね……。ならやっぱり……。どうしよ……」
「終わったよ?」
え、マジ? 俺の出番なし? 嘘でしょーー。デザートウルフは? もしかしてルグア一人で殺っちゃったけー?
「次来る前に急行するよ。ほらアレン移動の準備」
「あ、はい。ルグアサンスミマセン……」
「運が悪かったら永久ループな‼ なんちゃって。いざ、グラウゴ鉱山へ‼」




