第2-72話 アレン脱出作戦 その2
――『よし。あとはその……』
「ルグアさん?」
――『いや、構造が変わってる……』
「えっ?」
『僕も同感です。部屋の入口がどこにもない……』
「そんな。俺脱出不可能じゃん‼」
◇◇◇明理側◇◇◇
「おいチビ。さっきから何言ってんだよ?」
「バレンさんいつの間に⁉」
「フン。さっきメルフィに強制起床させられた……。ってか。口ん中入れすぎなんだっつーの‼」
「ごめんなさいね……。今回酔い気味だったから、ゼレネスの茎ごと300本突っ込まっせてもらったわよ」
「んだから。詰め込みすぎなんだよオラァ‼」
突然メルフィナに殴り掛かるバレン。私は瞬時に割って入り……。
――バシッ‼
とてつもない速さの拳を、右手一つで受け止めた。
「っつー……。力入れすぎだぞバレン。間に合って良かったぜ……。女にはもっと優しくしろ」
「明理さん。また口調変わってる……」
仕方ない。今はアレンとも会話をしている最中。普段の口調だけは避けたいので、使い分けが大変だ。
――『その。ど、どうしたんすか?』
「なんでもない」
「明理さん?」
「嘘だろチビ。簡単に止められるとは……」
「そういう王子も普通に飲み込んでたわよね?」
「窒息しかけるからやめろ……メルフィ」
「ちょっと、バレンさんいいかな?」
私はアレンを城から脱出させるために誘導。しかし、唯一知っている抜け道が消えており、頭を悩ませていた。
私がバレンを呼び止めたのも理由の一つ。バレン。本名はバレン・アレストロ。つまり元アレストロの王子ということ。
彼なら抜け道がわかるのでは? そう考えたわけだ。
「その……」
「聞けばわかる。ちょいと代われ。あと場所もな。めんどっちぃけど」
「中庭の東側の建物です」
「東側の建物……。そんなら突き当たりの窓から飛び降りればいい」
――『突き当たりの窓っすね‼ 名前分からないけどあざっす‼』
「死ぬんじゃねぇぞ‼ 調子馬鹿」
◇◇◇アレン側◇◇◇
「突き当たりの窓……。突き当たりの窓……」
『アレンさん何かわかったのですか?』
「ちょっとあっちの方盗み聞きしたんで……。突き当たりの窓……」
だんだん集中力が切れ始めてきた。切れたら長時間動けなくなる。動けなくなったら終わりだ……。
まだルグアみたいに使いこなせてないし。負荷慣れしていないから、処理に時間がかかる。
『アレンさん?』
「こうなったら魔法解けるの早いんで、このまま高速移動で窓ぶっ壊しやす‼」
『急にどうなされ……』
「うォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼」
『また聞く耳持たれてないようですね……』
――ダダダダダダダダダダダダダダダダ‼
聞いてる暇ないんだよぉ‼ 絶対ジルグさんに見つかりたくない。見つかったら冥界行きになっちゃうじゃん。それは嫌なんだァァァァァァ‼
――バシャアアアァン‼
「うわッ‼ 高ッ‼」
〈ただいまアレン落下中……〉
「ってかまず、下敵だらけなんじゃん‼」
『困りましたね……。具合の方は大丈夫ですか?』
「そりゃめっちゃ頭痛いっすよ……。特異点魔法。使えるとしたらあと2回くらいっすかね」
『ルグアさんは無限に使えるそうですね……』
「団長は規格外っすよ。常人にはありえないって。どんだけ負荷かけたがるだよ……。団長は」
――『なんか呼ばれた気がしたんだが……』
「い、いやなんでもないっすよ団長」
――『そうか。出るのが厄介そうだなぁ……。助太刀したいが距離がありすぎる。別に私の方で片付けられなくはねぇけどよ』
団長って直径20キロまで大丈夫なんだったっけ? それで届かないってことは、25キロ以上距離があるってことだよね?
なのに、通信魔法は繋がってるし。やり取りできてるし……。って俺25キロ以上先のルグアに繋げようとしてたってこと⁉
無事接続成功できた俺スゴすぎじゃん‼ 最高‼ 俺最高‼ 成功した俺スーパーラッキーボーイだよ‼ ラッキーボーイだよ‼
――『まーた始まったよ変な妄想が……。言っとくけど、私の場所からアレンの現在地までは19キロだ。範囲だよ』
「マジっすか⁉」
――『マジだ。けど威力は落ちるんだよな……。〝リアゼノン〟内なら問題なく成功するが……』
「ここはゲームじゃなさそうっすからね……」
――『その見解は大正解だ』
「ふぇ⁉」
――『完全なる異世界だよ。それに、〝リアゼ……〟やっぱやめとこう。ゲーム会社の機密情報を流すわけにはいかない』
「……余計気になるんすけど」
――『ま、後で雷夜に聞くといい。アレンまだ戦えるか?』
「戦えるか……」
ふと思ったが、ルグアとやり取りしている間に頭の痛みは消えていた。理由はわからない。前までは丸一日寝込みたくなるくらいなのに。
思い切ってルグアに確認すると、負荷の代行をしてくれたらしい。通常は不可能との事だが、ウェンドラが特別に変更したそうで……。
――『申し訳ないが、私の特異点魔法での手助けは厳しい。負荷代行はその代わりだ。代わりにアレンが使用した際の負荷を引き受けてやる。
私のことは気にするな。好きなだけ特異点魔法を使えばいい。デフォルトの負荷設定も引き上げとくから、処理も間に合うからさ』
「それって……どれくらいっすか?」
――『ん? えーとなぁ……。中間値を300段階にしてるから……。ま、4500段階くらいかな?
入院時の二の舞防止はしておくが……。負荷慣れ時間を40分として、ざっくり5時間は問題ないか……』
「4500段階……となると約5700億倍くらいっすか?」
一人で簡単に計算。それでも負荷が半端ない。俺なら100パーセントぶっ倒れる。死ぬ‼ 死ぬよ‼
――『かもな……』
かもなって。団長……。
「しっかり計算してから考えて欲しいっすよ……」
――『あいにく数字が苦手で計算できないんだ……』
「あ、マジか……。だからざっくりと決めるんすね……」
――『設定完了したし。武器ないんだよな?』
「実はこんなこともあろうかと俺。新しい特異点魔法準備したんすよ」
――『そうか。なら。どんどん使ってくれ』




