第2-68話 その名はレイグス
◇◇◇風雷山 地下道◇◇◇
「フォルテ。本当に解除しなくていいの?」
「ま、ちょっと飲みすぎたからさ。明理に迷惑かかるだろ?」
「そうだけど……。フォルテは大丈夫なの?」
「大丈夫って、オレの顔赤いか?」
「どう見ても平常運転の肌色だよ」
「だろ? 問題ねぇって」
そう言いながら隣を歩くフォルテ。千鳥足にもなってないし、意識隔離で私への影響はまだない。
時々シャドウパンチを繰り出して、戦う気満々。回し蹴りまでして、調子も良さそうだ。
今いるのはアルヴェリア南部の地下道。数年前にリゲルと訪れた、思い出の場所でもある。
そしてこの先が風雷兄弟のリビング。ここを抜ければ、風雷山への隠し通路があって、私も踏み入れたことがないエリアだ。
「何も変わってないね」
「いや、変わっている。本棚が増えただけ。雷夜が本を大量に仕入れてきた。だからp本棚は手作り」
「ふうにいが作ってくれたんだよね」
「ふむ……。出来栄えはそこらの大工には劣っているが……。気に入ってくれただけで達成感はある。作って損はない」
にしては、枠の形もキレイな長方形。棚の数も多く、トパーズ色の塗料で染められている。ビスは風針を代用したそうだ。
専門家ではない私でも、本棚の見た目はいいのに……。風魔は自分に厳しいのかもしれない。完璧主義なのだろうか?
大量の本棚は奥の通路まで続いて、所狭しと本が敷き詰められている。ここにガデルを連れて来ればよかった。
◇◇◇風雷山に来る少し前 宿屋にて◇◇◇
「ガデルさん。これからみんなと一緒に風魔の家に向かうんだけど?」
『ごめんなさい。今ちょっと立て込んでて……。これまでのことを今のうちにまとめないと‼』
「そう言わないで、少しは外出た方がいいよ?」
『わかるけど……』
「雷夜に聞いたら、本もあるみたいだし……。」
『また今度でお願いします』
◇◇◇現在◇◇◇
「インプットには充分なくらい本があるのに、もったいないよね……」
「雷夜ほんとごめんね……」
「いいのいいの。ゆっくりでオーケーだよ」
「ほんと? ありがとう」
雷夜はいつまでも優しい。また今度来ればいいし、今はナンバ・ストーンの浄化をしなければならない。
どのように浄化するかは謎。しかし、ずっとモヤモヤしている暇は存在しなかった。
一刻も早く解決したい非常事態なのだから。並ぶ本に足止めを食らっている場合ではない。前に進む方が優先だ。
「雷夜。ナンバー・ストーンまであとどれくらい?」
「う~ん。もうそろそろかな? この先に分岐点があるんだけど。右がボクの部屋。左がふうにいの部屋だよ」
「そうなんだ。ちゃんと分かれているんだね……。私とお兄ちゃんみたい」
「ルクスだっけ?」
「そうだよ。陸兄大丈夫かな? 全損してなければいいんだけど……」
巣籠陸。二十八歳の現役大学生。4年前に農業大を卒業したが、今度はなぜか健康福祉大を受験して受かり第二の大学生活中。
今はリモートの不定期講習のため、ゲームで遊んでいるんだけど……。次回の講習に間に合うか心配になる。
「きっと大丈夫……。きっと」
『皆さん‼ 待たせてごめんなさい‼ やっと原稿間に合ったよ……』
「ガデル‼」
来ないと言っていたはずの彼女が、つまずきながら駆けてくる。相当頑張っていたのだろう、全身が汗でびしょ濡れだった。
「ガデルお疲れ様。でも良かった来てくれて」
「ちょっと焦ったけどね……」
「お疲れ様なんだりょん‼」
「フィレンさんありがと」
「こちらこしょだりょん‼」
嬉しそうに微笑むガデル。メンバーが揃い、雷夜が言っていた分岐点に到着。二手に分かれて行動することになった。
一つは風魔、バレン、ロム、メルフィナ、ブライダ、フランネル、クリムの七人。
もう一つは雷夜、明理、ガデル、フィレン、レネル、ウェンドラ、フォルテの七人。
編成からわかるように、風魔は風のナンバー・ストーン。雷夜は雷のナンバー・ストーンへ移動する。
「それぞれ浄化作業ってことで」
「その……。バレンが浄化できるのは見たことあるから知ってるけど。そっちに着かなくて大丈夫なんですか?」
「風魔が言うには大丈夫らしいけど……。なにかあったら連絡するから」
「わかりました。レネルのことお願いします」
「ロムさんも気をつけてね」
「はい‼」
そう言ってロムは風魔の後を追い、私は雷夜に着いていく。汚染と聞けば嫌なことが多い。きっと大気汚染と同じ状態なのだろう。
植樹を進めているとはいえ、家を建てるにも伐採しなくてはならない。自然を増やしても、二酸化炭素は増えてしまう。
現実世界とアルヴェリアでは、自然体の仕組みが違う。けれども起こる現象は似ているかもしれない。
「雷夜。ナンバー・ストーンまであとどれくらい?」
「ココからだと25デセリナくらいかな?」
「というと約20メートルだから。アルヴェリアの単位って、微妙にズレるから計算難しい……」
「それはボクも同感だね。普段市民と行動しないからややこしい……。もうすぐそこだから着いてきて‼」
「はい‼」
私は雷夜の部屋へと向かう。ただ、一つ引っかかっていた事があった。それは、宿屋から出る前にフォルテが言っていたこと。
******
『そうじゃねぇって。風雷山が危ないんだろ? バレンお前も来い‼』
『またちっこいのと……。しかもフォルテまでグルかよ……。めんどくせぇが、てめぇらが言うなら従ってやる。早めに寝か……』
『それくらいわかってるって。オレと明理ならちょちょいのちょいってな‼ 忘れてなんかねぇよ……。オレは……』
『ッ⁉』
『フォルテ?』
『ウェンドラの次に。お前のことを鮮明に覚えている……。バレン。お前のことを……。過去の……。オレの時代にいたお前を……』
『フォルテの時代にいた……バレン?』
『ああ。彼の名は。レイグス・リフェリア・ノウン』
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