第2-67話 フォルテの酒は終わらない
「はいよ。10本」
「親父サンキュー‼」
フォルテの目の前に並べられたお酒の瓶。フォルテも嬉しそうに、ヨダレを垂らしながらジロジロ眺めている。
けれども本人は全てを飲むわけではなく、そのうちの5本はバレンに渡していた。一緒に飲みたいからなのだろうか?
小声で話し始めた二人。バレンが2つの木製ジョッキにお酒を注ぎ、別のなにかを注ぎ足している。
フォルテが割って飲むのは予想外のこと。どうしてこうなったのかは、後ほど聞くとして……。
いつの間にか、二人はジョッキを掲げ談笑が始まった。喧嘩するほど仲がいいというよりも、怒鳴り合いからの意気投合。
「明理さん。あの二人楽しそうですね……」
「フォルテが飲みすぎなければね……。私の方が心配だから」
一応私とフォルテの関係性は、ロム達にしっかり伝えてある。そうじゃないと、このような状況を作ることができないから。
――チャリーーン……。カランカラン……。
楽しげな空気を破る入口のチャイム。まるでバーにでも来ているのかと――実際男二人が酒飲んでるし――思ってしまう。
中に入って来たのは風魔と雷夜。どこか暗い表情をしている。恐る恐る確認すると、ナンバー・ストーンの汚染が悪化したとのことだった。
「このままの不況続きになれば、代替発電でも間に合わなくなる。早めの対処が必要」
「急いで解決しないと、大変なことになるんだよね……。ナンバー・ストーンは、ボクの寝床とふうにいの寝床にあるから」
「二人って一緒に寝てないの?」
「寝てないよ。今までも別々だったからね」
「ともかく。一刻も早くナンバー・ストーンの浄化をしなくてはならない。場所はそれぞれが案内する。
忠告として、汚染の影響で道がかなり険しくなっている模様。くれぐれも離れないよう行動してもらいたい」
たしかに発電が止まるのは怖い。どんな敵であれ倒すのが私。この展開でも打開策を練るのが団長の私がやること。
なんだけど……。
「おーーーい親父‼ まだあるかぁーーーー? まだ原液の方飲んでいないんだが……」
「突然だけどフォルテ、続きはまた後でお願いします。1本だけにして。緊急事態が起きているから」
「わかったよ……。ったく、せっかくだっていうのに……」
こうするしかなかった。楽しませるはずだったのに……。
「なら、奢る」
「風魔?」
「フォルテに50瓶追加してもらいたい。原液の方を。それだけ飲めば問題ないだろう。ただし、身体が燃える可能性が高い。
命の保証もない。日光浴は厳禁。それでもいいのなら」
「でなけりゃ飲まないって。あんがとさん」
「はいよ‼」
「親父早いな」
「任せとき‼」
「んじゃ、1本目をっと」
どんだけ飲めば気が済むのだろうか? 飲みすぎ注意とはいえ、こんな量を飲んでも酔わないフォルテが異常すぎる。
程度を知らなすぎて、いつになったら終わるのやら。栓の開いた瓶を軽く回して渦を作ると、ラッパ飲みで流し込む。
それもバケツリレーでもしているかのスピードで……。
勢いよく噴射されているはずだから、喉の痛みとやけどはきっと激しい。なのに……。
「次‼」
「あいよ‼」
――シュポーン‼
当の本人は、ものすごい楽しそうだった。わんこそばならぬわんこ酒は、フォルテの十八番。
しかも、10000パーセントというのもあり、風魔が注文した50本を一瞬で消し去る。からの追加で100本注文。
これにはバレンもびっくり仰天で、口を半開きにしている。私も解除するのが怖くてヒヤヒヤの状態だ。
「それにしてもよく飲めますよね……。あの量」
「そこなんだよね……」
「あたしもあれくらい飲めれば、宴会も盛り上がるのにね……。もちろん、真似できないのは承知しているわよ」
「真似厳禁ですよ、最初から。あれでアル中を否定するんだから」
「キチガイにも程があるわ……」
「そうだね……」
いい加減ストップして欲しい。だんだんとふらつき始める。最長で50時間までなら意識隔離できるけど、これで二日酔いは最悪だ。
二日酔いはしたくない。
なぜなら、現実世界での成人式でお酒が出た時。酔った同級生が私のグラスに注いだせいで、丸々一週間寝込んでいたから。
お酒の思い出は酔ってばかり。酔わないフォルテに嫉妬するくらい、楽しんだことはなかった。
「今日はこれくらいにするか……。親父ごちそうさま‼」
「また余ったら持ってくるよ。楽しめたかい?」
「満足以上だ。っと、明理‼」
(解除するの怖いんですけど……)
「そうじゃねぇって。風雷山が危ないんだろ? バレンお前も来い‼」
「またちっこいのと……。しかもフォルテまでグルかよ……。めんどくせぇが、てめぇらが言うなら従ってやる。早めに寝か……」
「それくらいわかってるって。オレと明理ならちょちょいのちょいってな‼ 忘れてなんかねぇよ……。オレは……」
「ッ⁉」
「フォルテ?」
「ウェンドラの次に。お前のことを鮮明に覚えている……。バレン。お前のことを……。過去の……。オレの時代にいたお前を……」
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