第9話 理解不能
※2022年5月05日 階層の数字表記を漢数字に変更
※ 〃 年5月07日 句読点修正・文章修正
「ルナさん……。ルグアはなんで、マグマの中に……」
心配で仕方がない。普通では考えられない。ルグアのことがわからなくなる。規格外すぎて……。基地外でも当てはまるくらいだ……。
「実は六年前に、〈世界魔法大戦〉っていうゲームで鉱石の精錬用かまどに落っこちて……。以来、こういう場所を選ぶようになったんです」
なるほど……。情報追加。
〈ルグアは激弱の超強の神速で、プレイタイトル数異常のドMで、人脈広くて、超高温の場所が好き〉
なるほどじゃねぇー‼ 異常なのにも程があるって‼ ってか死ぬって‼ 絶対‼ 死ぬ‼
思わず身震いしてしまったが、ルグアは浮いて来なかった……。
「ルナさん。これからどうするんすか?」
「多分、すぐには戻って来ないですからね……」
「そ、そうっすか……」
俺このゲームの詳細よく知らないのに……。それにしても。ギルドのみんなはデスゲーム関係なく、普通に遊んでいるけど……。
「ルナさんは、デスゲーム怖くないんすか?」
「ぼくですか? そういえば、全く気にしてないですね……」
「そ、そう……っすか……」
「もちろん、怖いのは一緒ですよ。ぼくもまだ練習中ですしね。アンゲーマー先生に色々教わってますから」
「なるほどっす‼」
それより、暇なんだけど‼ なにかつぶせることないかな? じっとしてるのも嫌だし。クエストみたいなのが、どこかにあればいいんだけど……。
さすがに、溶岩だらけの火山地帯にあるわけないか……。ただただ熱いだけだし、寒暖差アレルギーになりそう……。ゲームだから関係ないと思うけど……。
「クエスト……ですか?」
「もしかして、あったり……」
「ちょっとついて来てください」
やっぱり見抜かれてたり? なんですぐに悟られるんだろう? そんなつもりはないんだけど。よく分からないからいいや。
そんな俺の前を歩くルナ。ルグアがいうには、彼はアメリカ人でおばあちゃんの現状まで、話題として出していた。
にしては日本語ペラペラなんだけど。聞き取りやすいし。肌の色は白いから白人なのかな? どうやって日本語を……。
「……うーん」
「どうしたんすか?」
「ちゃんと録画できてるかな、と……」
「録画?」
「はい。ぼくが〈WWM〉で遊んで、アレンさん達日本人と出会ってから、今まで見てなかったアニメを見るようになったんです」
「そうなんすね……」
「ただ、アニメとかだけだとネイティブじゃないから。何回か来日して半分は独学です」
リィファンの頑張りスゴすぎる。ナイスハッスル。かっこいい……。俺だって日本語そこまで上手くないのに……。
「もう少しで到着です。アレンさん」
◇◇◇ルグア目線◇◇◇
真っ赤に染まるマグマの中。私は10分の仮眠を終えて、とある場所へ向かっていた。マグマの海を泳ぎ、出口を目指す。
『いたいた‼ ○○ぃ‼』
「フォルテ。おかえり、どう? 楽しかった?」
フォルテというのは、私と身体を共有している異世界人。フォルテとは第一層で別行動をしていた。理由は、〝お酒が飲みたいから〟。
私がこのゲームに入ってすぐ、第一層の坑道で子供の声が聞こえたらしく。フォルテ用のアバターを作成した。それからとは言うものの、かなり量を飲んだようで……。
「存分に楽しませてもらったよ。あのパパさんもめっちゃ盛り上がってた」
「ふーん、女かき集めていた癖に……」
「げっ⁉」
「バレバレなの‼ フォルテは‼」
とにかくお酒を大量に飲むので、アルコールに弱い私は酷い目にあってばかり。そんな彼と話をしながら、辿り着いたのは……。
「ここがボス部屋みたいだね」
「だな。○○」
「フォルテ。一緒に終わらせるよ‼」
「おう‼」
◇◇◇十日後◇◇◇
「ルグア……。帰って来ない……。ゲームオーバーしちゃったのかな?」
「アレンさん。大丈夫ですよ。そろそろクリアして帰ってくる頃だと思います」
クリアして帰ってくる? 何をクリアして帰ってくるの? さっぱりわからん。
『戻ったぜ‼ 心配させて済まなかった。第四層開通したからさ。疲れも取れたし』
後ろから聞こえたのはルグアの声。一体どういうこと? どういう仕組みなの⁈ っていうか、〝サブマッピング〟の意味いつ教えてくれんの⁉
「実はだな、私が入ったマグマ溜りは第三層のボスダンジョンに繋がっているんだ。こっちの方が回り道するより手っ取り早いからさ」
そんな理由でマグマの中に入っていたのかよ‼ 普通に攻略しろよ‼ ってかHPどうなってんの⁉
「消費0だが……。どうした?」
「えっ⁈」
「耐火魔法のラピットファイアで永続バフかけたから、消費0」
いつ魔法使ったんだよ‼ 頭良すぎる。準備が良すぎる。完璧すぎる‼
「んじゃ第四層にいきますかね……。アレン。ルナも着いてくるよな?」
「もちろんです。アンゲーマー先生‼ どこまでも着いていきます‼」
俺はルグアのフレンドリーさに嫉妬した。理由は友達がいなかったからだ。この人となら一緒にいられる気がした。
階層のワープゲートから第四層に移動する。暑さも和らぎ、葉が揺れる音が聞こえる樹海だった。
空が見えなくなるくらいの葉で、日の光が少し見えるだけの樹海。するとルグアが……。
「あぁ~。いつも通りにサブマッピングしようと思ったが、葉が多すぎて道が見えねぇ……」
道が見えない⁉ どういうこと? 異常すぎて理解不能レベルなんですけど‼ 知りたいのに、全く入ってこないんですけどぉ‼