第1-3-5話 サクヤとの別れ
第1-3-5話シリーズ最終回です。
最後までよろしくお願いします!
――『その方の死亡時負荷を、ルグアに変更すればいいのですね』
「ああ。頼むウェンドラ」
「これでアヤメさんの方は解決ですね」
「だな。あとは、ガデルの武器。ポイズン・ダガーのことだろ?」
PK集団はまだその場に残っていたが、私の登場で少し空気が変わっていた。どういう意味かというと、リアルのアヤメの生存が確定したからだ。
アレンには説明してないが、このゲームにはゲームオーバーの条件が二種類ある。一つはHP全損。もう一つはエレメントという通貨をバトルで全て失った時。
つまり、HPが0でもエレメントが残っていれば1で耐えられるけど、両方が
だと生き残れないということだ。
そして、このゲームのPKはエレメントを集めるために上位プレイヤー。主にベータテスターを倒して生存確率」を上げている。
それを少しでも減らすために私が入ったといってもいいくらいだ。まあ、私に脳への負荷は関係ない、ということが頼まれた理由の一つだが……。
「さて、返してもらおうか?」
「このポイズン・ダガーのことだろ? これは俺様のものだ!」
レッド230。レッドというのは基本的にPKが持っているカーソル。こういう系でよくある表記だ。そして、230というのはPK登録番号。この人は230番目のPkプレイヤーとなる。
どうして、ここまでPKが増えたのだろうか? まずは親玉を見つけるしかないのだが、私の仕事はそれじゃないのでミッション枠には入れないでおく。
「一撃で仕留められるか。じわじわと削られるか? どっちか選べ」
「はぁあ? レベル1のお前に何ができ……」
私はレッド230を魔法で拘束する。すると、230が持っていた武器がぽとりと落ちた。
すかさず取りに向かうガデル。230の落とした武器がポイズン・ダガーだからだ。それを大事そうに抱きかかえる姿はとてもかわいい。
私もそんなアバターにすればよかったが、高身長の方が戦いやすいから却下した。
「私の武器を奪った罪で!」
「ガデルその発言ってことは……」
「え? ルグアやってくれるんじゃないの?」
「別に構わないが……」
「じゃあお願い」
◇◇◇アレン目線◇◇◇
「ルグア団長遅いっすね……」
「そうだね……」
ルグア団長に待つように言われて約一時間。俺とサクヤさんの二人でキャンプファイヤーの火に、木の枝をくべていた。
あの後アヤメさんはどうなったのだろうか? いろいろと心配だ。
「アレンさん。もし妹が戻ってこなかったらの話ですけど……」
「なんすか?」
「おれ、一人で第二層に残ろうと思っています」
「そうっすか……」
そう話していると……。
『待たせた!』
そこには、走って帰ってくるルグア団長の姿があった。
「団長! あれ? アヤメさんはどうしたんすか?」
「それがだな。蘇生が間に合わなかった」
「そんな。じゃあ、リアルの妹は……」
「その辺は大丈夫だ。再ログインはできないが、彼女は生きてる。私が身代わりになったからな」
「よかった……」
「っすね」
ルグア団長が身代わり? よくわからないけど、アヤメさんが助かっただけでも安心した。でも、サクヤさんはここの層に残るのか。なんかさみしくなりそうだ。
「そうか。わかった。じゃあ、一旦町に戻ってサクヤを送り届けてから、ボス戦といきますかね……」
「そうっすね」
◇◇◇◇◇◇
そうして、第二層のメインタウンに戻ってきた俺達は、入口付近で立ち話をした。
「ルグアさん。アレンさん。ありがとうございました」
「こちらこそっす!」
「おつかれサクヤ」
「おれは何もしてないですよ」
照れくさそうに頭をかきむしるサクヤ。ここで別れて、俺とルグアは階層ボス戦へ向かう。
「じゃあ。ここまでにするか」
「ですね。改めてありがとうございました」
「あざっす! サクヤさん!」
「お二人とも応援してます!」
そう別れの言葉を告げて、俺達はメインタウンを離れる。だけど、ルグアの戦闘能力はすごかった。また見たいけど、その時は至近距離戦闘が見たい。
「そういえば、この層のボスってなんすか?」
「ウィンディス・ウルフ。緑色の巨大な狼だ」