第0話 友人からの誘い
※2022年5月27日 初期展開に変更
※2022年6月9日 全体的な文章修正
◇◇◇第七層海底神殿◇◇◇
――アレンがハイエストレベルに到達しました。
「えっ⁉ 俺がハイエストレベルに⁈ ハイエストだから……。最高レベルってこと?」
「もう……。規格外にも程度があるわよ‼」
「いや、規格外なの○○○っすよ?」
「違う。あんたのレベル増加スピードが規格外ってこと」
言われてみれば、その通りかもしれない。自分でも違和感を感じていたのだから。だが、システムアナウンス。
――ハイエストレベルでのレベルアップを確認。現在、レベル100,000。全プレイヤーに報告
「「どいうこと?」」
疑問符を浮かべる二人。そして、最後に再生されたのは……。
――アレンが、特殊条件をコンプリートしました。ユニークスキル【レベルダウン】を付与します。
◇◇◇二〇三一年七月二十日◇◇◇
「明日から夏休みっすね……」
高校生活最初の終業式。誰もいない教室から、外を眺めてポツンとひとり。
宮鳥亜蓮16歳。髪型はボサボサの天然パーマ。色は茶色系統で、顔立ちはイケメンばりに整っている。身長は170超えで、体育会系。
にも関わらず、一切モテていない。なぜなら中身の質が悪いからだ。自己中でテンションが高くて。ムードメーカーでありながらも、空気が歪んでしまう。
その為小さい時から友達は少ない。そもそも、正しい作り方がわからない。静かな教室で顔の見えない誰かに話しかけても、返事がくるわけ……。
『あーれーん‼ もう、ふてくされてどうしたの?』
「ま、舞彩⁉ いつの間に? ってかいつから……」
『ずっと後ろにいたけど? ほら、こっち向いてよ』
少し離れた席から聞こえた、不意打ちに近いアプローチ。慌てて視線を移動させると、ロングヘアの女子高生が、机に寄りかかっていた。
彼女はそのロングヘアを後ろで束ね、まるで垂れ下がったうさぎの耳のように、垂らしている。
彼女の名前は樋上舞彩。樋上中央大学病院院長・樋上或斗の娘で、俺とは幼なじみ。
ただし、恋人関係ではなく、俺がモテて近付いてるわけじゃない。
「それで、突然なんすか? てっきり帰ったと……」
「心配だからに決まってるでしょ‼ 今日は、非公式でも有名になってるゲームが、正式サービスを開始するし」
「非公式で有名なタイトル?」
「知らないの? 〝リアゼノン・オンライン〟。自分からゲーム通と言ってるのに……。同時に違法薬物の更生剤研究も、本格的に始動するから……」
違法薬物の更生剤……。聞いただけでめちゃくちゃ怖い。危なっかしくって恐ろしい。それはそうとして、〝リアゼノン〟か……。
俺は席から立ちリュックを背負うと、玄関に向かって廊下を歩く。後ろで手を振る舞彩。
どうやら部活があるようで、一緒に帰りたいが仕方ない。
広い校庭。校門を出て帰路に着く。賑やかな都会の高校には『始業式まで』と一礼。俺は下校ルートを辿って進む。
道中に見えてくる樋上中央大学病院は、いつもと違う雰囲気だった。その理由は、更生剤研究があるのを知ったから。
そこでは、仮想五感型ゲームのテスト会場が併設されており。脳医学専門の私立病院。俺の下校ルートだと一番目立つ建物になっている。
『あのすみません。樋上中央って、ここで合ってますか?』
突然どこかで響いた女性の声。目の前には小柄な少女が立っていた。少女は脇にノートパソコンを挟んで持っており、どう見ても病院に用があるようには見えない。
「そうっすけど……」
『ありがとうございます』
印象的な幼い顔。とても可愛いく、惚れてしまうくらいだ。そんな俺に背を向け、少女は病院の受付へと足を運ぶ。
俺は本屋に寄るためその場を離れると、受付を終えた少女がじっと見つめていた。
◇◇◇三十分後◇◇◇
『お買い上げありがとうございます‼』
ゲームソフトが入った袋を手に、本屋から出る。中にあるのは舞彩に勧められた〝リアゼノン〟のソフト。
どんなゲームなのか気になるけど、まずは家に帰る。大通りを通り過ぎ、穏やかな住宅街へと入っていく。
俺の家は少し大きめなアパート街で、全て二階建て。ここは団地にもなっており、A 棟B棟ではなく、数字で棟が分けられている。
そして、505号室が宮鳥家の自宅になっていた。
505号室となると、階段がキツい。高校よりもキツいかもしれない。ここは屋外エスカレーター――コンベアタイプの――もあるが、階段を使うのは俺なりのこだわりである。
「ただいま……っす……。今は誰もいないっすよね」
俺は誰もいない自宅を歩き回る。まだ日は落ちきっていない、思えば今日はお昼がないんだった。
俺は冷蔵庫やカップラーメン置き場を漁る。そこにはお気に入りの〝富山ブラック〟のカップ麺。今日はこれにしよう。
お湯を注ぎ待つこと5分。付属の特製スープを流し込み、よくかき混ぜる。胡椒のピリッとさが俺の好きなところで、一度食べたら次を食べたくなってしまう。
時間はあっという間に去り、昼食を食べてすぐ二階の自室へ直行。俺はパソコンゲームにログインすると、夕食まで時間つぶしを始めた。