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夕方、仕事が一息ついた頃少し携帯を見てみる。


そういえばスキルというアプリの不具合は修正されたかな…。


やっぱり開けない。もう不具合ばかりだしアンインストールしておこう。

アプリのアイコンを長押しして、アンインストールのボタンが出るはずなのだが…出ない。

おかしいな。アプリの情報というボタンは表示されるんだけどな。


念の為、アプリの情報を見ておくか。

ため息まじりに不具合アプリの情報を開くとそこには


全力=スキルポイントプラス1とだけ表示されていた。

アプリの情報なのに、なんだよこれ。

意味が分からないから、そっと閉じて仕事を再開しよう。




夜も遅くなり、周りの社員達が自分以外帰ってしまい、少し寂しく感じるようになった頃。

自分の仕事もある程度目処が立ったし、帰ろうと思い支度をしている途中にふと午前中の出来事を思い出した。


遅刻が原因とはいえ、全力で走ろうと思えば意外と走れるんだよな。

社会人になってからは全力で走ろうとする事自体が恥ずかしくて、すぐにごまかそうとしてしまうものだ。

何事にもそう。

全力で取り組んでいる姿は周りから見て浮いてないか気になってしまい、全力を出すのを恥ずかしがってしまう。

仕事だけじゃない。友達にも親にも。


「今度から仕事が早く終わったら、マラソンでもしてみるか。」


ボソっと呟きながら帰り支度を済ませ、会社の戸締りをして駅へ向かう。


ん?帰ったらじゃなくて、どうせなら今駅まで少し走ってみようか。

時間も遅いし、人ほとんどいないからな。


どうせなら、今朝よりも速く、全力で。


自分の心の中だけで、ヨーイ、ドン!を唱えて

スタートダッシュをきる。なんなら自分で「中島選手!非常にいいスタートだ!」と心の中で実況を加えてみる。

遅刻でもないのに自分で走ろうという気持ちと、夜暗い雰囲気で何とも言い難い高揚感が生まれる。


まるで少年の頃に虫を取りに行ったような、友達と集まって秘密基地を作るような、そんな高揚感。

社会人になると新鮮な気持ちとこの高揚感を思い出したくて、色々な趣味に手を出すけれど絶対に同じような気持ちにはなれないんだよね。


自分なりにいいスタートダッシュから、気持ちだけはグングン加速していく。

30歳だからそれなりに体力は無くなってきていて、気持ちだけしか加速しない。


駅に着き、ゴール。

再度「中島選手!とてもいい走りをしていました!!!」なんて実況を付け加える。


が、ゼー。ゼー。

とても呼吸が苦しい。

そりゃ全力で走ったからだよな。

なんで全力で走ろうなんて思ったのだろう。


自問自答しながら、自動販売機を探す。

駅中で息切れはさすがに恥ずかしいからな。

少し飲み物を飲んで、落ち着こう。


少し汗ばんだシャツを仰ぎながら、自動販売機で水を買う。

何故、水を買うのか。

それは水が一番体にいい飲み物だからだ。

お茶よりも水。それが現代の社会人の健康法である。


水のペットボトルのキャップを開け、一気に半分程飲み干す。


「う、うめぇー。」


思わず声が漏れてしまう程においしい水。

いや運動した後だからこそ、おいしい水なのか。


ペットボトルのキャップを閉め、フーっと息をつくともう呼吸が整っていた。

あれ…。今朝もそうだったけど、体の調子がいいや。


いい運動もしたし、後はゆっくり帰るか。


駅の改札を抜け、ホームへ降りる。

電車の時間を見ると、電車到着まで後10分。

なんだこれなら走ってもあまり得をしなかったな。

でも、いい運動ができたから良しとしよう。


ホームの椅子に座り、携帯を開く。

特にやる事はないけど、携帯を開く。

それが現代の社会人。いや、現代の人は社会人に限らずそうか。


プイッターやロインを開き、新着情報を確認してみるも特に目ぼしいものは無し。

そういやスキルのアプリ…。


スキルのアプリを開いてみると、また右下のスキルポイントが1になっている。

何故だ…。不定期にポイントがふられているとしか思えない。


面倒だし、体力でいいやと思い体力のスキルを3にする。


OK。


ゲームが進まなくてもなんとなくスキルを振っておくのは、携帯ゲームのアプリ慣れだなと思いながら、携帯を閉じたところに電車が来た。

電車に乗り、バスに乗り、無事自宅へ着いた。


もう時間も遅いし、とりあえず寝よう…。

シャワーをさっと浴びて、布団に横になる。


そういえば明日、会社の中を模様替えするから必ず遅れずに出勤しろよって宮本さんが言ってたな…また明日も目立たずにそれとなくやって…やり過ごそう。

あ、アラームを…かけなきゃ。でも、もう少し起きて…いられそうだから…いっか。


アラームをかけずに就寝してしまう。






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