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6話、キールの深まる困惑

目の前の子どもがケホケホと咳きこむ。

随分長い間、“口封じの法”を(ほどこ)されていたのかもしれない。

キールの胸の奥がキリッと痛む。

何とか話そうとしている子どものために、


「『癒しの息吹を』」


とそっと治癒の術をかけた。

これで、喉の痛みは取れるだろう。


術の効果のおかげか、ケホケホと咳こんでいた子どもが、つっかえつっかえ喉を震わせ、か細い吐息に乗せてしゃべりだした。


「災禍、取り換えっこ、化け物、親殺し、大火の魔女、厄災の悪魔……

 どれがなまえ?

 “精霊”のキール、どれ?」


と相変わらず無表情のまま、キールに問いかけた。



その問いかけに、


――っえ〜〜〜と………この子は何を言っているのかな?


突っ込みどころ満載のセリフに何を言えばいいのか。

キールには、全く持ってわからなかった。

…この子が発した言葉の意味をキールは理解したくなかった。



――まず……は、、、、

  そう、まずは冷静になろう。

  冷静になって考えてみようじゃないか。


―まず、この子はリゼの言う通り、女の子らしい。

 近くで見てもよくわからんが、長い間使ってなかったからかな?

 しゃがれてるけど、声は高いし、きっと治れば鈴のようなきれいな声をしているんだろう。。。

 っって違う!!!!

 言ったことから逃げてどうする。


一人脳内ボケ突っ込みをしながら、キールは思考する。



―冷静になるんだ。冷静に…


まず、

「災禍、取り換えっこ、化け物、親殺し、大火の魔女、厄災の悪魔……どれがなまえ?」ここ!!

この発言、全面的に間違ってるから!

どれも名前じゃないし!

こんなの冗談じゃない!!

唾棄すべき最低最悪な呼び方だ。

この子は……こんな風にずっと呼ばれていたのか?


キールは、やりきれない苦しさに歯噛みする。

少女の空虚な目が、複雑怪奇な白髪が、ボロボロの格好が、汚れきった体が、細過ぎる体躯が。そのすべてが悲しく、辛かった。

だから、気付けばぐっと少女を抱きしめていた。


これまでの少女の人生を労わるように。

これからこの子に多くの幸があるようにと。


そこで、忘れてしまいそうになっていたもう一つのトンチンカンな自分に対する言葉を思い出した。

それ即ち、 「“精霊”のキール」。


―こりゃ〜なんだ??

 明らかに、“精霊”じゃないだろう。この子よりもっと小さい子でもわかるだろ??

 それゃ、精霊は色んな姿形の奴がいるが…

 誓約を破ってまで、人の形態にはならないだろう?


 

“精霊”と“人”との間には、『誓約の調べ』というものがあり、精霊が人の形態を取ることを禁止するというものがある。

これを破ると、精霊は精霊から逸脱した、他の“何か”になるといわれている。

それは、精霊にとっては耐え難い苦痛と、自我の崩壊を招く。

それ故に誓約を破るものはいないのだと。昔から言い伝えられている。



しかし、そんな誓約がなくても、精霊はプライドが高く、人間を見下している。

そんな精霊が、見下している人間の形態をとることはない。

精霊が質量を持って顕現するとしたら、人間以外の形態をとっている。

そして、自分の好みに合わせてカスタマイズしたり、本来の自分の姿を顕現している。

たとえばリゼは、基本は大鷲のフォルムをとっているが、体躯は一回り大きくしているし、羽は空に溶け込むような白と青のコントラストにしたり、夕焼けの茜色にしたりと気分によって変えていたりする。



―なぜに、俺が精霊?

 この子に、何からどう言えばいいやら……



キールは困惑の中、勘違いも甚だしい発言にしばし悩むのだった。

 




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