プロローグ
――3年前
「っまじ、やってらんねー」
夜明け前の薄闇の中、足音を殺して颯爽と駆け抜ける影があった。
「おいおい、いいのか。勝手に出てきちまって。」
走り抜ける影に、呆れたように声をかけたものがいたが。
その姿は見えない……
いや、見えないのではなく、声を発したのは人ではなかった。
影の上を飛翔している鳥から、声が漏れていた。
鳥の羽ばたきは軽やかだが、その翼はあまりに広い。
大鷲よりも一回りも、二回りも大きいのではないだろうか。
「いいんだよ。
どうせ、人形にはなれないんだから。。。」
影の口調は軽いが、鬱とした陰りも見られた。
……が、
「そんな、殊勝なこといって。。。
お前、…ただ遊びたいだけだろう!」
心のうちを精通しているのか、その大鳥はますます呆れた口調だ。
「へへへ。わかってんなら、聞くなよ!
俺が、神殿なんかに行けると思うか? それとも、騎士に?政治家に?」
っんなの無理だろ〜と、影はへらへらと笑った。
「このっっ、ガキンチョが!!」
ぐわっと怒鳴る大鳥にも、影はどこ吹く風と受け流す。
こうして、とある帝都から姿を消した人物がいた。
そして、、、
その日から幾日もせず、とある帝都から秘密裏に動く者達が帝国中に散って行った。
彼らの任務は、とある人物の捜索。
……ではなく。
とある精霊を説き伏せ、御帰還願うことだった。