五話 彼女の圧力
「おはよう、リーダー。」
いつもの挨拶。だがそれは、俺に向けられたものではなかった。昨日の喧嘩で俺に勝った草壁 ゆき、彼女に向けられたものだった。誰も俺には寄ってこない。対して彼女の周りには寄っていく。リーダーが変わるとこんなにも態度が変わるものなのか。
「おはよう……私はリーダーにはならない。」
教室が静まり返った。無視しようとしていたが、離れない彼らが邪魔だったのだろう。拒否した。
「一番強い奴がリーダーなんだよ。」
俺が教えてやる。
「なら、私は違う。あなた達と違うから。リーダーは草野 凌、あなたが続けるべき。」
違うとは何か、理由がわからないから、誰も納得していない。
「違うって何だ。自分は二組に入るような人間だってことか?このクラスには色々事情のある奴が集まっているだけなんだ。見下すな。」
「一組と二組の違いは先生から聞いた。けれど、違う。見下してもいない。その事情というもので括れないからあなた達と違うということ。だから私はリーダーにはなれない。なる気もない。これ以上は関わろうとは思わないで。」
結局、理由はよくわからないままだ。だが、有無を言わせないとでも言うように、彼女は授業の準備を始めた。
先生が来るまで、誰も声を発せないでいた。そして、関わるなとは言われたが、再度リーダーについて彼女と話をしようと思った俺は放課後、不思議な状況を目の当たりにするのだった。