三話 新リーダー
放課後がやってきてしまった。
待ってましたと言わんばかりに、みんなが草壁さんの周りに集まっていく。
誰も話さない………俺待ち? 俺、まだ準備できてないんだけど。当の本人は我関せずといった様子で帰る準備をしている。みんな、彼女を今にも殴りそうなくらい睨んでるんだけどな。
準備を終えて俺が立ち上がると道を開けてくれる。そんな心遣い望んでない。
………腹くくるか。
「一緒に来てもらおうか。」
彼女の目の前で言った。だから自然と俺を見上げる形に……可愛い。だが、さっきと同じ、無関心、無感情。
「………仕方ない。」
え、良いの!? それよりも、反応が……。
苛つく奴らを宥めることになった。
教室を出ると、彼女に似た男子生徒が心配そうにこちらを見ている。身長まで似てる。他の二組の生徒達も心配そうに彼女を見て、小さな声で「可哀想。」と言っているのだろう。聞こえないが、俺もそれに同意したい。俺を先頭に彼女を一組全員で取り囲んで歩いているのだから。
ここはどこだ? と言いたくなる空き地に来た。何で、道の隙間を抜けたら広い空き地があるんだろう。不思議だが、たまに使わせてもらっている。
ところで、何故か俺と彼女は向かい合っている。みんなは隅に座って観客に徹している。俺にどうしろと? 女を殴れと? そんな趣味ないんだが。そんなことを考えていると彼女が話し始めた。
「何故、あなたはずっと闇を抱えたまま、今の場所に留まり続けているの? 」
は?
怒りの沸点は下がったはずなのに、何故かすごくムカついた。
「お前に俺の何がわかるんだ。何も知らないくせに。」
怒りが次第に大きくなっていく。自分でも押さえられない。何故だ。
「知らない。知るつもりもない。」
俺の中で何かが弾けた。
「なら! なんで! 知ったようなことを! 」
言いながら、彼女に殴りかかっていた。
………そのはずだった。気付いた時には、腹部に一発殴り返され、地面に仰向けになっていた。滅茶苦茶痛い。次いでに言うと、不思議と怒りは収まっていた。
彼女は相変わらずな様子で、何故か草笛を吹き始めた。めちゃくちゃ上手くて、心地好い。痛みが和らいでいくようだ。本当に何故???
暫くすると、彼女は何事もなかったかのように二人で帰っていった。そう、二人で。空き地の入口には、さっきの彼女に似た男子生徒が彼女を待っていたんだ。いつから居た? みんなも同じことを思ったのか、驚いていた。
「新リーダーは草壁 ゆき? 」
誰かが呟いた。