二話 転入生
俺、草野 凌はいたって普通の中学二年生だ。中身は。
「おはよう、リーダー」
クラスメイト達の挨拶に俺も挨拶を返す。
よく見ると、いや見なくても良いんだが、このクラス、不良の男女しかいないんだ。金髪に染めた者、化粧の濃い女、ピアスだらけの者、色々な者が居る。そんな彼らからリーダーと呼ばれる俺。つまり不良クラスのリーダー。……色々あったんだよ。
先生が教室に入ってきた。
みんな静かに自分の席に向かう。不良とは思えないこの行動。成長したなぁ。俺が命令する前は、学級崩壊していたからな。俺は普通に勉強したいんだ。
「今日から、一人仲間が増える。お前ら、苛めるんじゃないぞ!!! 」
このクラスに転入生!? 嘘だろ!?
ここの中学校は一学年にクラスが二つしかないんだ。全学年共通で一組が不良クラス、二組が不良じゃないクラス。普通、二組に転入させるだろ!?そんなことを考えていると、転入生が教室に入ってきた。セミロングで気持ちウェーブのある茶髪の女の子。百四十センチないんじゃないかってくらい小さい。そして先生の隣に立つと俺達の方を向いた。
っ!? ……可愛い……
「初めまして。草壁 ゆきです。宜しくお願いします。」
声まで可愛い……
いや、それよりも、本当に何で二組でなく一組なんだ。こんな子を一組に入れたら、苛めの標的にされるじゃないか。絶対に阻止してやる。
「俺はこのクラスのリーダー、草野 凌だ。放課後、時間もらおうか。」
休み時間、次の授業の準備をしている草壁さんに近付いて声をかけた。許してくれ。リーダーだから、こんな声かけしかできなかったんだ。
「そう。ごめんなさい、時間はあげられない。私にも関わらないで。」
そう返された。一瞬目が合ったがすぐに準備に戻った。怯えてる様子はない。だが、無関心、無感情。そんな感じだ。
「なんだ、こいつ! せっかくリーダーが声かけてやってるのによ! しめちまおうぜ! 」
あああ~!!! 何でこうなるんだよ~。
取りあえず、時間を稼ごう。
「今はよせ。放課後だ。」
それにみんな渋々従う。
頼む、放課後にならないでくれ。