一話 いつもの場所~ゆう視点~
ここは自宅の中のある一部屋。窓のない、暗く広い実験室。そこには4人しかいない、いや、4人しか入れない。そういう特殊な部屋。
作業をしながら大きな画面を見ているのは、僕達の両親。高校生でも学ばない、でも僕達にとっては見慣れた難しい式や文字の羅列を見ている。別の画面には僕達の心電図の正常な波形が写し出されている。
僕達は別々の実験用水槽内にいる。暗闇の中で青白く光る円柱状の水槽の中。特別な水の中にいるからか、苦しくない。眠るように目を瞑る僕の片割れ。
どのくらい時間が経っただろうか。片割れの姿が人間以外の姿に変えられていく。犬、猫、兎、鼠、鳥。その他にも様々な姿に変えられる。片割れの心電図が正常な範囲で激しい波形になる。しばらくすると、人間の姿に戻される。その間、片割れと画面を同時に見ていた両親は、実験が成功しているのか、嬉しそうにしている。
生まれたときから、これの繰り返しだ。自宅にいる時は。
でも、これは片割れだけ。僕はただ同じ時間、水槽内にいるだけ。理由はただただ僕が弱くて、片割れが強いから。それだけ。
ごめんね。
代わってあげられなくて。
守ってあげられなくて。
それでも、君の隣にいるよ。君が僕を必要としなくなるその時までは。
僕はあくまで君の片割れだから。