村長
目が覚めると村の中だった。
目が覚めるとそこは、村の中にいた。
しかし体が動かない。
目だけで辺りを見渡す。
村は舗装されてない道。上等とは言えない家。
ニワトリのような鳥等が右往左往していた。
円を描くように家が立っており、真ん中に大きなキャンプファイヤーがあり、俺はその近くに居る。
「グァ…」
体が動かないため小さく声を上げる。
「お、おい、ドラゴンが目を覚ましたぞ」
「いくら体を拘束してるからって、大丈夫なのかよ」
「ドラゴンを村に入れるとか正気じゃない…」
人間が会話しているのが聞こえる。
思いっきり振り解けばこの拘束を取れるだろうが望ましくない。できれば人間と平和を築きたい。
ざわざわと周りに人が集まり、あっという間に囲まれる。
「静かに!!」
その群衆から老婆が出てきた。歳は80くらいか、その老婆の一声で群衆が静かになる。
「黒いドラゴンよ、まずは村の民を助けてくれたことに対し礼を言おう。」
老婆が話してきた。
「グァ」と返しておいた。
「黒いドラゴンよ、人を助けたのは偶然か、それともなんだ、獲物を取られるのが嫌だったのか?狙いはなんだ、まさか人語を解せるとは思わないが、お前は人間の味方なのか」
「グルル…」
(味方だよ、人語話せなくて悪かったな)
「この拘束を解け」
老婆が唐突に村の民に向けて言う。
「村長!そんな事したら食われますよ?!」
複数人から不満の声が漏れる。
そりゃそうだ。食われるかもしれないのだから。
「静かに!!いまのこのドラゴンは弱りきってる。皆で囲めば倒せるだろう。
それに、若い村の戦士が救われたんだ!コングも倒してくれおった!その恩人をいつまでも拘束すると?!
コングで村は崩壊寸前だった!今更何を言う!」
老婆が声を荒らげて群衆に言う。
群衆は黙った。そして拘束を解いていく。
「グァ…」
拘束が解かれ、ゆっくりと体を起こしていく。
「くっ…」「おっかねぇ…」「ひぃっ」
人間達が忌みや怯えた目でこちらを見ている。
「ドラゴンよ、もしお前が敵でないなら着いてきてくれ。」
そう言うと老婆は群衆の中に入って行った。
俺はそれに続いて行った。波のようにサーっと散っていく群衆が、少しうっとおしく思えた。
村から続く1本の道。と言っても舗装はされてなく、地面を押し固めただけの道だ。
その道を老婆の後ろに続きあるいていく。
そして、老婆が口を開く。
「黒いドラゴンよ、あの村は昔竜の崇拝があったのだ。」
ひとつ間を置いて話を続ける
「そのドラゴンは友好的でな、交流とまでは行かんかったが、朝起きると大きな魔物の死体が村に置いてあったんじゃ。
奴にとっては土産だったんだろう。
そいつも黒いドラゴンじゃった、ワシは奴に似たお前に情が湧いたんじゃろう。なに、小さい頃だ、皆は知らん。」
そう言いながら道を歩く。その後ろ姿はどこか寂しげだった。
「そのドラゴン、どうなったか気になるじゃろ」
グァ、と返事をする
「殺したんじゃ」
俺はピタ、と足を止めた。老婆も続いて足を止めてこちらを振り向いた。
「皆恐れた。大きな魔物を倒せるくらいじゃ、ワシら人間等、取って食うには容易すぎる。」
老婆は眉をひそめた。
「村の衆で武器を持ってな、しかしドラゴンは抵抗しなかった。したんだろうが、本気で抵抗しておったらワシら皆死んでおった。」
続けて老婆は話す。
「しかしな、それは間違いだったと直ぐに気付かされる。村の周りには魔物が溢れかえり。大きな魔物さえも村に押し寄せてくるようになった。あのドラゴンがこの森の主だったのかもしれん。」
老婆は進んでいた方向に向き直り、歩き出す。
「この先に洞窟がある。そのドラゴンの供養のために作った祠もある。竜違いだろうが、せめてもの償いをさせてくれんか。」
グゥ、と喉を鳴らした。
「最も、これはワシらの自己満足じゃ。なに、その祠は立ち入ってはならんと村の掟になっておる。お前を脅かす者は居らん。しばらくの間居てくれるだけでいい。」
なにか、美味しすぎる話だが、今の現状この話が本当なのか嘘なのかは分からない。
「ほれ、着いたぞ」
老婆が指した所は、俺が寝泊まりしている所だった。
付近には滝がある。まんまだった。
「明日には食事を持ってこよう。今日の所はここで寝てくれ。」
俺は老婆の横を通り洞窟の中に入っていこうとする。
「今日は、村の民を守ってくれてありがとう、では、また明日。」
老婆は来た道を戻っていく。
俺は洞窟の中に入って行き、倒れるように眠った。
明るい光で目が覚める。朝が来たのだろう。
ゆっくりと目を開けながら体を起こす。
両腕をググ、と伸ばし背伸びをする。
洞窟から出ようとすると、入り口には大きな葉の上に肉の塊が2個置いてあった。
それを有難く食べ外に出る。
(昨日は色々ショッキングだったけど、今日はとりあえず狩場を探すか…)
俺はレベルアップを目指し森の中を駆けて行った。
レベルアップを目指して森を駆け巡る主人公。