風呂敷
最近めっきり寒くなったころソニアは別の理由でガタガタ震えていた。
「風呂敷を広げすぎた」
浦〇直樹に代表される物語の破綻パターンあるある。自らのキャパを見誤り、あとで自分がなんとかしてくれるだろうとの軽い見積もり。積み上げた山はグラグラと揺れ、もはやどこから手を付けていいか分からない。もし、仕事ならば、文句の一つや二つ言われるに違いないそれは、怠慢そのものでありソニアの全てであった。意味の無い話の引継ぎは溺れあがくものとどこか似通り、バトンを渡すも距離感がつかめずグテグテのリレー!
「ソニアいい案がある」
「言ってみろ。。」
「伏線を伏線のまま回収せぬのだ。」
ハッとなったソニア。それはよくある手法。存在自体をぼやけさせ明言を避ける。読者はもう離れているやりたい放題だ。
「ボクのプ、プライドを守るためにそれは避けたいのだ」
「ッチ」
舌打ちした仲間の吸血鬼は目を逸らし、遠くを見ていた。ソニアは気まずくなって彼から目を逸らすようにすると早口に言い訳をした。
「今だってそんな捨てたものじゃない。頭の中にはちゃんとしたぷろっとがあるのさ。大丈夫さ。ちょっと時間がかかっているが必ずまとめあげてみせる」
「はぁ・・」
短いため息にギクリと身を震わせたソニアは、おずおずと彼を見つめた。彼はソニアを見透かすような視線を向けて、心から軽蔑のまなざしを向けている。彼はソニアの小説の感想を何度も求められ、疲れていた。最初のうちは仲間内のことだからと、わりと丁寧でオモシロイと嘘を交えつつも、「こうしたらいいのではないか?」といった改善案まで出してくれるような善人であったのだが、気を良くしたソニアはつぶさに感想を求めるようになった。何時しか彼の感想は一行に収まる程度にまとめられ、ソニアから「もう少し、欲しい」と感想の改善案を出してしまうまでになっていた。
「あの寿司は何かの複線か?必要なのか」
あきれたような物言い。だが、ソニアに動きは無かった。ここで怒ってしまえば、伏線だと言い張らなければならず、回収しなければならないだろう。無言は正解ではないが、最善だと言えた。
「物語が終わったら連絡してくれ」
「あぁ・・わかった」
そうして、二人は無言で別れた。寿司をどうにかすれば良いというわけではない。寿司の話を書いているわけではないのだ。ソニアにとってつらい冬が来ようとしていた。