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歪魔ノ境界  作者: 銀城蘇芳
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第7話 歪ノ群レタ廃村

「そういえば、あの村ってこの近くなのか?」



今度は舗装された道を走りながら、聞いた。

リアは引率されてここまで来たため、昼過ぎの帰る時までに応用生の元まで帰らなければならない。

時間はいくらあっても足りないことはない。



()()()()()()()()()?」

「そう、その村」

「うん、そうだと思う。あの辺りは魔物が好む何かがあるんだと思うけど、特に強力な魔物が多いの。みんなはそこに(ぬし)がいるんじゃないかって」

「主……さっきも応用クラスの奴らが言ってたよな。一体主って何なんだ?」

「分からない。リッグ教育師も見たこと無いって言ってるし、多分宮杜(ここ)にすごく長い間棲んでいるのか、それかすごく強いか……とにかく屋敷生に太刀打ちできる相手ではないと思うよ」



宮杜の主。

小声でもう一度呟く。

8年前に起きたとある村が消えた事件、そして宮杜の主……何か関連があるのだろうか。

以前も考えたが、たった一夜で村を消せるような力を持った魔物など聞いたこともない。

それこそ、()()()()()()()の仕業ではないだろうか。


()いたくないとは思いながらも、会ってみたいと思ってしまう自分がいる。



「なぁリア、行ってみねぇか?」

「えっ? イーゼ話聞いてた? すごく危ないんだよ」

「大丈夫だよ、俺達なら、きっと」



渋々了承したリアに道案内を頼み、俺達はその村に向かった。






・・・・・・

その村は、完全に廃村と化していた。

草はぼうぼうに伸び、家屋全体に苔がはびこっている。

窓から覗いてみたが、埃まみれで人のいる形跡は全くと言っていいほどなかった。



「人がいないのは分かってたけど……」

「ここまでだと、壮絶だな……」



かつては人間が穏やかに暮らしていたのだろう場所が、あまりに寂れてしまった。

想像をあまりに超えた光景に、俺達は押し黙るしかなかった。

しかし、人の姿が見えないからといって、何の気配もしないわけではなかった。



「イーゼ……近づいてきてる」

「あぁ、気づいてる。来るぞ」



二人同時に周囲に目を配り、俺は剣を、リアは二振りの短剣を構える。

自然と背中合わせになり、いつでも迎撃(げいげき)できる体制をとる。



そして、飛びかかってきた魔物を、二人同時に薙ぎ払った。


四匹の山犬型の魔物が派手に吹き飛ぶ。

そのまま同時に散開し、バラバラで魔物の群れと対峙する。

ひとくちに魔物と言っても種類や形状は千差万別で、山犬のような獣型の魔物から環状動物(かんじょうどうぶつ)のような気色悪いものまでいる。

決して弱くはないが、それでも――――



「――――俺の方が上だ!!」



より巨大な魔物を回転斬りで駆逐する。

その返す刀で裏拳を放ち、迫ってきていた山犬の鼻をへし折る。

息が徐々に上がってきたが、それでも、魔物は死骸の方が多くなってきていた。



「これが……今の俺の実力」

「イーゼ!!」



振り向くと、リアがすごい勢いでこちらに逃げてきていた。

彼女の背後を見た俺は愕然とする。



「……なんじゃありゃあ!?」



首はミミズだった。否、胴体は()()()ミミズだった。。

だが、明らかに通常のミミズとは違うものが着いている。


(ひづめ)付の立派な足がミミズの胴体を運んでいる。

心なしか、のっぺらぼうな顔から雄叫びが聞こえてきそうだ。



(嘘だろ、あんなのどうやって倒せばいいんだよ!?)



ミミズは他の魔物を蹴散らしながらこちらに近づいてくる。

どう考えても、正面からぶつかっても勝ち目はない。

咄嗟に俺はリアの手を引き、勢いあまってその場で転がってしまう。

だがミミズは、突然の進路変更に対応できずにそのまま直進していった。

絶対口があったら悔し鳴きしていただろう、首を上空にしならせながら。



「はあっ……はあっ……怪我はないか?」

「はあっ……うん、だいじょう、ぶ」



無事を確認したところで、ずっとリアを抱きしめていたままだったことに気づき、慌てて離す。

なんだか名残惜しそうだったのは何故だろうか。

見渡すと、魔物はほとんど狩りつくしたようだった。リアの方も同様だろう。



「これが、ウォーミングアップなのかな? だとしたら……ちょっとキツイかも」

「大丈夫だよ。イーゼの実力なら十分すぎる。……それにしても、さっきの気色悪い魔物は何だったんだろう。あんなの宮杜で見たことないけど」

「分布が変わったとかじゃねぇのか? 確かにものすごい気色悪かったけど」

「うん、気色悪かった」



さんざん二人で気色悪いと言いながら、それでも余念なく周囲を警戒する。

そして、舗道された道の上を、人影が拍手をしながら歩いてきた。



()()()()()()()



現れた男はふらふらと、どこか気だるげだった。

飄々とする姿からは一切の殺気が感じられないが、何やらただならぬ雰囲気を感じる。



「なんだか()()()を覚えてしまったわ。それほど遠いことでもなかったがのぉ。おい貴様ら、何者じゃ」



その男の()()()()()()()()()()()()()()()


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